【あいちトリエンナーレ】東京藝大、教員有志が文化庁に抗議声明。「断固として反対し、撤回を求める」

文化庁の決定について東京藝大は、「日本における芸術文化創造への評価を著しく貶めることに強い危惧を抱いている」と強く批判した。

国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題で、文化庁が9月26日、「あいちトリエンナーレ」に対して採択を決めていた補助金約7800万円について全額不交付にすると発表した

これに対し、東京藝術大学の美術学部・音楽学部・大学院の教員有志が「表現の萎縮につながりかねない今回の決定に断固として反対し、撤回を求める」などとした抗議声明を出した。

10月3日の時点で、計42人の名前が掲載されている。

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文化庁は補助金を不交付とする理由について、補助金を申請した愛知県が「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告しなかった」などと説明している。

これに対し、東京藝大側は声明で「非難されるべきは『安全や円滑な運営』の実現を不可能にした脅迫等の行為であり、主催者側を罰するかのような今回の決定は『文化芸術の“多様な価値”を生かして、未来をつくる』ことを『文化芸術推進基本計画』の柱として掲げている文化庁の理念に大きく反するもの」とし、文化庁の対応を批判。

また、正式に文化庁により採択された「あいちトリエンナーレ2019」への補助金交付を取り消すことは、「国内のみならず『あいちトリエンナーレ2019』の行く末を注視していた海外のアーティストや芸術関係者、諸機関にとって、政府機関が特定の芸術表現の排除を意図したように映る」と懸念を示し、さらに「今回の決定が、日本における芸術文化創造への評価を著しく貶めることに強い危惧を抱いている」と危機感を表明した。

同声明は、文部科学大臣の萩生田光一氏と文化庁長官の宮田亮平氏に送付されたという。

■声明文(全文)

文化庁による「あいちトリエンナーレ2019」補助金交付取り消しに対する抗議声明

文部科学大臣 萩生田光一殿

文化庁長官 宮田亮平殿

東京藝術大学美術学部・音楽学部・大学院教員有志は、今回の文化庁による「あいちトリエンナーレ2019」への補助金交付の取り消しを深く憂慮し、その決定に強く抗議する。補助金交付取り消しの理由として「展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した」ことが挙げられているが、非難されるべきは「安全や円滑な運営」の実現を不可能にした脅迫等の行為であり、主催者側を罰するかのような今回の決定は「文化芸術の『多様な価値』を生かして、未来をつくる」ことを「文化芸術推進基本計画」の柱として掲げている文化庁の理念に大きく反するものである。

そもそも「あいちトリエンナーレ2019」への補助金交付は、有識者・専門家の審査を経て正式に文化庁により採択された。その取り消しは、国内のみならず「あいちトリエンナーレ2019」の行く末を注視していた海外のアーティストや芸術関係者、諸機関にとって、政府機関が特定の芸術表現の排除を意図したように映るだろう。開かれた芸術創造・実践・研究を目指し、グローバルに活躍する芸術家・研究者の育成を志す私たち教員一同は、今回の決定が、日本における芸術文化創造への評価を著しく貶めることに強い危惧を抱いている。

芸術文化における多様な価値を尊重し、自由な表現を希求する東京藝術大学の教員として、表現の萎縮につながりかねない今回の決定に断固として反対し、撤回を求める。

2019年10月3日

東京藝術大学教員有志一同

荒木夏実(美術学部先端芸術表現科)

磯見俊裕(大学院映像研究科映画専攻)

大竹利絵子(美術学部彫刻科)

大巻伸嗣(美術学部彫刻科)

大森晋輔(音楽学部言語芸術講座)

岡本美津子(大学院映像研究科アニメーション専攻)

小沢剛(美術学部先端芸術表現科)

小畑善昭(音楽学部器楽科)

片山まび(美術学部芸術学科)

桂英史(大学院映像研究科メディア映像専攻)

亀川徹(音楽学部音楽環境創造科)

楠田健太(音楽学部・演奏芸術センター)

熊倉純子(大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻)

櫻田亮(音楽学部声楽科)

佐藤時啓(美術学部先端芸術表現科)

佐藤直樹(美術学部芸術学科)

スプツニ子!(美術学部デザイン科)

住友文彦(大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻)

諏訪敦彦(大学院映像研究科映画専攻)

薗部秀徳(美術学部工芸科)

高山明(大学院映像研究科メディア映像専攻)

田中一成(大学院映像研究科映画専攻)

玉井菜採(音楽学部器楽科)

土田英三郎(音楽学部楽理科)

筒井武文(大学院映像研究科映画専攻)

長嶌寛幸(大学院映像研究科映画専攻)

長島確(音楽学部音楽環境創造科)

中山英之(美術学部建築科)

橋本和幸(美術学部デザイン科)

畠山直哉(大学院映像研究科メディア映像専攻)

八谷和彦(美術学部先端芸術表現科)

針貝真理子 (音楽学部言語芸術講座)

廣江理枝(音楽学部器楽科)

福中冬子(音楽学部楽理科)

藤崎圭一郎(美術学部デザイン科)

藤原信幸(美術学部工芸科)

古川聖(美術学部先端芸術表現科)

布山タルト(大学院映像研究科アニメーション専攻)

毛利悠子(大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻)

毛利嘉孝(大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻)

山城知佳子(美術学部先端芸術表現科)

李美那(大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻)

(五十音順)

◇「 #表現のこれから 」を考えます◇

「伝える」が、バズるに負けている。ネットが広まって20年。丁寧な意見より、大量に拡散される「バズ」が力を持ちすぎている。

あいちトリエンナーレ2019の「電凸」も、文化庁の補助金のとりやめも、気軽なリツイートのように、あっけなく行われた。

「伝える」は誰かを傷つけ、「ヘイト」にもなり得る。どうすれば表現はより自由になるのか。

ハフポスト日本版では、「#表現のこれから」で読者の方と考えていきたいです。

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