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2019年10月16日 07時49分 JST

「女性アナは結婚したら引退じゃ悔しい」テレビ出演本数No.1フリーアナ・新井恵理那インタビュー

学生時代に「ミス青山コンテスト」でグランプリを獲得し、フリーアナの道へ。順調なキャリアを歩んできたかのような彼女だが、そのスタートには、ある挫折があった。

KOOMI KIM/金 玖美
セント・フォース所属 フリーアナウンサー・新井恵理那さん

フリーアナウンサー・新井恵理那、29歳。 

朝の情報番組『グッド!モーニング』(テレ朝系)では爽やかにニュースを伝える一方、ラジオでは柔らかい語り口が印象的な彼女。自身のレギュラー番組を多数持ついま、メディアでその姿を見ない日はないほどだ。それもそのはず、2019年7月に発表された「テレビ番組出演本数ランキング」の女性部門で見事1位を獲得した。

8月に自身初のフォトエッセイ『八方美人』(宝島社)を出版。好感度の高い女性タレントの著書としては、少々刺激的なタイトルではないかと思った。

よく考えてみれば、女性アナウンサーへの登竜門とも称されるミス青山コンテストでグランプリを獲得したことをきっかけにアナウンサーの仕事に就くという、いわばその道の“王道”を進んできた彼女に、コンプレックスなどあるのだろうか。学生時代に彼女と共演経験のある筆者は、正直そう感じていた。

だが、アナウンサーとしての活動を始めたばかりの頃のことを「まるで迷子みたいだった」と本人は振り返る。今に至る道は決して平坦なものではなかったと語る彼女に、話を聞いた──。

大学4年で急に社会に放り出され、「まるで迷子みたいだった」

今でこそ、大学卒業と同時に放送局に就職せず、事務所に所属する形でフリーアナウンサーとしてキャリアを歩む女性タレントは少なくない。しかし、彼女が活動を始めた2011年頃は、まだその数は少なかった。その時のことを、彼女はこう話し始めた。

「大学4年生の頭からお仕事を始めたのですが、ぜんぜん仕事が増えない。というのも、自分が世の中にも業界の人にも、圧倒的に知られていないということが大きくて。

そして、何より自分の力が何も備わっていない。

にもかかわらず、何から始めていいかも分からず、まるで迷子みたいな状況の中で日々過ごしていくのに必死でした」

「ゼロベースから何かを始めることが苦手なんです。何か型があると、徐々にその型を基本として頑張っていけるんです──。」(『八方美人』より)

彼女は著書の中で、自身についてこう表現している。フリーと違って、すでに型がある“局アナ”を「羨ましい」と感じたことさえあったという。

「もし自分が局アナだったら、例えば研修があったり、先輩が原稿の読み方を教えてくれたり…環境が整っていて、しっかりと修業を積んでからデビューできるという『コース』が用意されている。もちろんフリーとはまた違った大変さがあると思いますが、羨ましいと思いました。

私、高校時代は弓道部だったんです。弓道には、所作をはじめ、弓の扱いに関しても、すべて決まりごとがあって。そうした決まりごと=型に合わせていくというやり方が、性格的に合っている。

フリーとしての仕事は、それとは対極で、「どうしたらよくなるか」を自分自身で考えながら研究して、自分を信じてやっていくものなので…」

彼女が弓道から学んだのは「めげないこと」だという。弓道人生では、野球でいう“イップス”のような“早気”という状態に悩まされたが、弓道は、「自分の信念を貫くことの大切さを教えてくれた」と語る。

KOOMI KIM/金 玖美

「ミス青山」は嬉しいけれど、「勝ち負け」で考えるのは嫌

そもそも、彼女がフリーアナウンサーとして活動したきっかけは、「偶然出ることになった」という、青山学院大学の学園祭の名物企画「ミス青山コンテスト」でグランプリに輝いたこと。

コンテストで特技として披露するためバルーンアートに取り組み、1週間で習得。本番で風船が割れてしまうというハプニングを乗り越えて見事にやりきり、グランプリに選ばれた。その経験から“新たに見えたもの”があったと、彼女は語る。

「“エア弓道”を披露することも考えたのですが、あまりにも地味なので(笑)、本番までの1週間、バルーンアートを本気でひたすら練習しました。

舞台に立つ以上は、中途半端なものはお見せできないなと思って。でも、誰かに負けたくないというよりは、この経験を充実したものにしたいという気持ちのほうが大きかったかもしれないですね。

コンテストの結果についても、まったく気にしないわけではないですが、「勝ち負け」で考えることが嫌だったんです。特技もそうですが、人柄にしても、本来は勝ち負けじゃないですよね。「みんな違って、みんないい」ものだから。

直前にやっぱり出たくないと思ってしまったり…当時はしんどい部分もあったけれど、やるからにはがんばろう! と。結果的にはコンテストを通じて、舞台の前にいる大勢の人たちが「自分を認めてくれたんだ」と思えたことが嬉しかったですね。そうした気持ちを持てたことが、今の仕事にもつながっているかもしれません」

お台場のトイレで号泣。「挫折」を味わった局アナ試験

幼い頃から、実は「ものづくり」が好きだった彼女。元々はメディアといっても、広告や映画製作など、どちらかと言えば裏方の仕事に興味があったが、「ミス青山」に選ばれたことをきっかけに、民放キー局のアナウンサー試験に挑んだ。 

しかし、人に認められることの喜びを感じた彼女を待っていたのは、大きな「挫折」だった。

「フジテレビの最終選考に残ったんです。最後の4人だったかな。だけど、ダメでした。

連絡を待ち続けた末に試験に落ちたと知った時は、お台場の商業施設のトイレで号泣しました。『一体、何がダメだったんだろう?』って。

『アナウンサーになるのが小さい頃からの夢』というわけではなかったけれど、最終選考に進む過程でチャンスが見えてきて、そこ(フジテレビ)で働くイメージも少しずつ湧いてきていました。それもあって、徐々に悔しさがこみ上げてきて…。

ただ一方で、当時の自分には「絶対にアナウンサーになりたい!」という熱量や、根本にあるべき強い気持ちが他の人に比べると欠けていたので、仕方ないとも感じていました。

でも、がんばりが報われなかったことはやっぱりすごく悔しかったですし、『またゼロからスタートしなきゃいけないのか』『自分らしさって、何なんだろう』と、絶望感みたいなものを抱きました。

そこからは、テレビ局以外の一般企業の説明会にリクルートスーツを着て参加しましたが、それでもやりたいことが見つからず、悩みました」

その後、現事務所のセント・フォースから声がかかり、所属が決まるわけだが、彼女が初めて担当するのがフジテレビの番組と決まった時、「人生って不思議だな」と思ったという。

就職活動で一時は挫折を経験したが、今となっては、大学時代からフリーアナウンサーとしてキャリアを歩めて良かったと語る彼女。 

「フリーアナは、ジャンルに縛られずに様々な仕事に挑戦できます。飽きっぽい性格で、同じことをずっとやるより、新しいことに挑戦する方が楽しいと感じるので、そうした点でも自分に合っていたなって。

何より、局アナと違ってフリーアナは、一人のタレントとしての側面があります。局アナであれば、役割上一歩引かなくてはならない場面でも、フリーであれば、引くよりも前に出る方がその場の空気にフィットする時がある。 

普段は周りから『何も考えてないような感じ』と言われたりしますが(笑)、仕事においては、発言したいのに引かなきゃいけない場面より、どんどん発言することが良しとされるほうが楽しいし、刺激的だなと感じるタイプなので。攻めの発言ができたり、「これはきわどい」ということにも挑戦できるのは、フリーという立場だからこそじゃないかと思っています」

会社員としてではなく、フリーランスとして試行錯誤を重ねたからこそ、自分と深く向き合う過程で「らしさ」を見つけられたと、彼女は語る。

「『自分らしさって、なんだろう』と自己分析も色々しましたが、今感じているのは、自分の気持ちに素直でいることの大切さ。

自分が思うことや考えをはっきりと発信することで、それが自分らしさになってくる。これからの時代、とくにそれが大事になってくると思っています」

KOOMI KIM/金 玖美

“出演本数ナンバーワン”は「うれしくて、でも、不思議」

様々な葛藤の末にたどり着いた、“出演本数ナンバーワン”という現在のポジション。彼女はどう受け止めているのか。

「うれしくて、でも、不思議な感じです。

 ランキングという形で評価してもらったり、多くの人に認知してもらえるようになったことはすごくうれしいです。ただ、最近、「忙しいでしょ」「大変でしょ」と言われることが多いのですが、私自身は今の状況を大変だとは全く思っていなくて。

フリーアナとして活動し始めた頃は、仕事がない不安や何もできない自分への苛立ちなどネガティブな気持ちをたくさん抱えていたので、当時の方がよっぽど大変でした。今はむしろすごく楽しいし、忙しいですが、心は健康的で、あっという間に毎日が過ぎていく感じです。

自分のどこが、これだけたくさんの方に受け入れていただけているのか、本当に分からない。

でも1つだけ胸を張って言えるのは、自分の中では「あれをやり直したい」と思う仕事は、これまでにない。至らぬ点は山ほどあったけれど、その時々で手を抜かずに、真剣に取り組んできたという自負はあります。評価してもらえているとしたら、そこが、今に結び付いているのかもしれないですね」 

12月には30歳を迎える彼女。女性アナウンサーの世界では、“30歳定年説”などと根拠なく一括りにされるのも実情だ。30代、そしてこれからについてはどんな風に考えているのだろう。

「今は、30代になるのがすごく楽しみです。30代になったら、自分の家庭を持てたらいいなと思っています。そうした新しい環境の中で、どんな風にお仕事をしていけるんだろう、きっとまたそこが1つのステップになるんだろうなと、漠然とではありますが、考えています。 

『女性アナウンサーは結婚したら、終わり』などと言われるのは、なんだか悔しいですよね。それ以上に、夢がないですよね。

結婚、出産を経て、活躍されている方も、さらに輝いていらっしゃる方は多いですし、私もそうした先輩たちの背中を追いかけていけたらいいなと思っています。

これまでは、「もっとみんなに知ってもらわなきゃ」とか「たくさんの番組に出演できるようにならなきゃ」と、自分のことに必死でした。だからこそ、これからは世の中の役に立てるようなことを何か始めたいと思っています。どんな方法があるか、考える日々です。 

女性アナウンサーには、いわゆるアイドル的な受け止められ方がありますが、そこにはちょっと抵抗感があります。「キレイで、そつがなくて、そこにいるだけでいい」みたいな感じはつまらないなぁと。

それこそ、将来的にAIに取って代わられてしまいます。人間だからこそ、ちょっとスパイスを効かせたい。…なんて、そんな大それたことはできませんが(笑)、枠にとらわれたり、イメージや型にはまらなくていいのかなと思います」

“型”を大切にする弓道に打ち込んだ彼女が、フリーアナとして社会に出て8年。30代を前に、試行錯誤のなか見つけた自分の型を、今度は自ら解き放つ時がやってきそうだ。 

KOOMI KIM/金 玖美

新井恵理那(あらい・えりな)

フリーアナウンサー。青山学院大学2年生の時に「ミス青山コンテスト」グランプリに選ばれる。大学在学中より、セント・フォースに所属。『グッド!モーニング』(テレ朝系)をはじめ、報道・情報番組のほか、幅広く活躍中。