アートとカルチャー
2019年11月16日 15時06分 JST | 更新 2019年11月21日 17時23分 JST

30周年のTHE YELLOW MONKEYに聞いた、夢を叶える「盟友」の作り方。

最新アルバム『9999』は、2019年の「第61回輝く!日本レコード大賞」最優秀アルバム賞を受賞。新曲『DANDAN』は「どんな夢も叶えるバンドができたよ」と歌う。そんなに素晴らしいバンドとは?「盟友」との出会いとは?4人に聞いた。

Junichi Shibuya / HuffPost Japan
THE YELLOW MONKEY:ギター・菊地英昭EMMA、ヴォーカル/ギター・吉井和哉LOVIN、ベース・廣瀬洋一HEESEY、ドラム・菊地英二ANNIE(写真左から、文中敬称略)

今年結成30周年となるロックバンドTHE YELLOW MONKEY。10月末にリリースされた新曲『DANDAN』の大サビの一節はこうだ。

「どんな夢も叶えるバンドができたよ」。 

30年を共に歩んできたメンバーやファンのための曲。人生の「出会い」を祝福する、清々しいまでにストレートな歌詞に驚かされた。

解散と再集結も経て、50代になった4人。そんなに素晴らしい「バンド」とは、一体どんなものなのか。私達も、そんな「盟友」との出会いをするために、どうすればいいのか。年末から始まるドームツアーを控えた4人に聞いた。 

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結成30周年の記念日、12月28日からドームツアーが始まる。

 THE YELLOW MONKEYのメンバーは、実の兄弟の2人を除いては、それぞれ前のバンド時代に知り合った4人だ。1980年代後半、元々音楽性で共通する部分があった4人は、それぞれの前のバンドが解散したことで結成に向かう。30年前の1989年12月28日、バンドに最後に加入したのがギターの菊地英昭(EMMA)だった。しかし、実は加入直後に吉井和哉に電話をかけて「やっぱり抜ける」と言っていたという。吉井はそんなEMMAを説得し、脱退を思いとどまらせていた。 

加入後すぐ「抜ける」と言っていた。

菊地英昭(EMMA):自分が入る前のイエローモンキーも好きだったから、一緒にやれることは光栄だったんですよ。でも、当時やりたかった、ちょっとダークなUKな感じの曲と、実際入ってみたら少し違ったんだよね。だから、LOVINに電話をかけて「自分は抜ける」って。そしたらLOVINが「ライブも決まってるし、ちょっと待ってくれ、EMMAの好きなこともやらしてやるから」って。

吉井和哉(LOVIN):そんな言い方はしてない!(笑)「これからはEMMAの好きな感じの曲も増えていくんじゃない?」って言ったの。その頃はバブルガム・ポップみたいな曲が多かったんだけど、ポジティヴ・パンクやニューウェーブの要素も取り入れようと思ってたから。それが結局イエローモンキーの最初のスタイルになって、初期の代表曲の『WELCOME TO MY DOGHOUSE』なんかも生まれた。だから、最初EMMAとは「間違った出会い」(DANDAN歌詞より)だったかもしれないね?でも、それが「正しかった出会い」(同)になることもあるんですよ。

廣瀬洋一(HEESEY):運命的な出会いをして、「火花が散った」みたいな表現があるじゃないですか。でも、ああいう感じはなかったなあ。ないけど、「あー、なんか波長が合うなぁー」みたいなのは最初からあった。多分、好きな音楽が似ていたり、同じアーティストをリスペクトしていたりする共通点があって、で、集まってから特別な関係性にどんどんなっていったんです。

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「年齢のせいか、最近皆と出会ったサーカスタウン(静岡にあったライブハウス)のことを鮮明に思い出すのよね」(吉井)

 運命的でなくても特別になった「出会い」

決して「運命的と感じたわけではなかった」という、4人の偶然の「出会い」。それが30年のうちに、どんどん特別なものへと変化していったのだという。それにはどんな努力や歴史があったのか

吉井和哉(LOVIN):どうなんだろう。不思議なんだよね、我々4人は。言葉にできない。他の人間関係と、ちょっと違うんだよ。

菊地英昭(EMMA):一つ言えるのは、根掘り葉掘り聞かないってこと。過剰に踏み込まず、相手の心のスペースを大切にしているメンバーだから。誰かに何か辛いこと、大変なことがあったら、助けたいからつい「どうした?どうした?」って聞きたくなるでしょう。でもそれを、あえてしない。ちゃんと、その人の行動を見て、それからこちらの行動を起こす。

吉井和哉(LOVIN):なのに俺とEMMAはライブでキスするの!よくわかんねえ関係だなぁ(笑)

菊地英昭(EMMA):それはね(笑)

菊地英二(ANNIE):それぞれ、前のバンドでも「俺が、俺が」っていうタイプじゃなかったんですよ。バンドのバランスを保つメンバーが4人集まったんです。そういうこともあるのかなあ。

廣瀬洋一(HEESEY):10代〜20代でバンドやってると、どうしてもエゴが出る。でも、前のバンドで「あの時は良かった、その後こうしたらダメになっちゃった」っていうことも、知ってるから。酸いも甘いも経験して、ミュージシャンとしての思春期を超えてから集まったから、ということもあるかもしれませんね。 

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「当時は多かったけど、ライブハウスシーンで出会うバンド、今は少なくなったかもしれないですね」(HEESEY)

 「別れの話じゃなくなっちゃったね?」

しかし、このバンドには一度解散した「別れ」の経験もある。「別れ」について、今、どんな考えを持っているのだろうか?尋ねてみた。

吉井和哉(LOVIN):今は”ヨリが戻った”んで、笑って話せるけど、バンドが無くなったときは不安になったよね。「自分一人でできることはなんだろう?」って、探しに行ったことは確かなんだけど、実家を出た寂しさみたいな気持ちになった。だから、結局すぐ兄貴(EMMA)に頼って。

当時、活動休止や解散を切り出したのは吉井だった。 

しかし、ソロアーティストとして新たな音楽性を探求する日々は、苦悩に満ちていたことを後に明かしている。そんな頃、吉井の活動に、サポートギタリストとして、EMMAが加わっていた。EMMAもその後、自分がメインとなる音楽活動を再開したが、活動休止〜解散の時期は抜け殻になったようで、何も手につかなかったという。

菊地英昭(EMMA):当時は、自分もやりたいことがそんなに明確になってなかったし、ギターも辞めていたかもしれない。その時は感謝というか、嬉しかったですしね。ただ単純に、ギター弾けるだけで良かったですから。「手伝ってよ、助けてよ」みたいな感じで言われてね。

吉井和哉(LOVIN):電話したよね。

菊地英昭(EMMA):うん。「こっちも、そうだし」みたいなねえ。なんか、別れの話じゃなくなっちゃったね?

吉井和哉(LOVIN):「別れられなかった」っていう話(笑)

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「個人的に、死に別れ以外は人と別れるっていうのはないと思う」(EMMA)

菊地英二(ANNIE):うん。仮に、どんなに「合わねえな」と思って別れた相手でも、少しは好きなところもあるじゃないですか。だから永遠の別れじゃないかもしれないし。イエローモンキーの場合も、解散して、別々に活動してたけど、俺は「別れてる」っていう感覚はなかった。

廣瀬洋一(HEESEY):不思議なことに「今度またやる時こうしたい」「今度やるときまでにこうしとかなきゃな」って、漠然と思ってましたからね。解散は、別れっちゃ別れだけど、一時的なっていうか。どっかで繋がってて、「どうしてっかな今頃」とか思ったり、ライブがあったら見に行ってたし、お酒を飲んで時々「再集結」してたし(笑)。

吉井和哉(LOVIN):この4人に関しては、さらにね、たとえ誰かが死んでもそれは本当の「別れ」じゃないと思うよ。一時的にいなくなっちゃってるだけで。このバンドは、実家だからね。だから、また一緒にやるっていうのは、あったんだろうね、確信がね。本当に長い目で見ていたから。今だからこそ言えるんだけど。だから、このバンドがどうしてこうなったのかは、よくわかんないんですよ。言葉では言い表せない関係。もう、好きに尽きる。単純に、大好きなんじゃないですか?このメンバーのことが、本当に。

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「『DANDAN』は80年代終わりぐらいの、懐かしい感じもするんじゃないかな?」(吉井)

 「今あなたの周りにいる人が最高な人なんじゃないの?」

離れていても繋がっている。実家のような関係。単純に大好きーー。そう言い切れるような「出会い」を、一体どうしたら手に入れられるのだろうか?

菊地英二(ANNIE):自分の置き場所っていうのは、すごい大事だと思う。「出会い」って、向こうから来るだけのものではない。嫌だなって思うところにいると嫌な出会いしかないし、やりたいな、って思うところにいると自ずとそういう素敵な出会いが増えてくる。まだやりたい、もっとキラキラしたい、っていう上昇志向でいれば、そういう人たちと出会って、そしてやっていけるっていうことが往々にしてあると思いますね。

菊地英昭(EMMA):いい具合に、自分に正直に生きてれば、それに合った人がちゃんと周りに来るような気がします。偽って自分を生きていると、誰かに合わせちゃったり、「間違った出会い」ばっかりになっちゃうと思う。イエローモンキーに加入したばっかりで「自分はこういう曲がやりたいんだ」って言ったこともそれかな。自分をちゃんと正直に表現して、適度な自分らしさを持って生きてたら、その自分に見合った人たちがちゃんと集まってくる、そうなる気がします。

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「『正しい出会い』だけでは見失うこともあるし、違ったものも見てきたのが大事なファクターじゃないかと思う」(ANNIE)

 廣瀬洋一(HEESEY):将来的に良い出会いをするためには「間違った出会い」も絶対に勉強になる。経験上、そうなんですよ。だからやっぱり、どんどん出会った方が良いんだと思います。恋愛だけじゃなくて友達でもね。出かけなかったら出会わないから。宝くじじゃないけど。

菊地英二(ANNIE):ああー、HEESEYっぽいね。

吉井和哉(LOVIN):そうは言いながらも、みんな、そんなにそこまで友達多くないんですよ(笑)親友も多くないし、あんまり軽い友達もいない。だから、このメンバーだけで、ある意味親友関係が成り立っているし。あと…やっぱねえ、自分の誕生日パーティを自分で主催するような人にはならないように!(笑)。それって凄い恥ずかしい行為じゃない?(笑)そういうことしていると、正しい出会いは訪れない。いざという時助けてくれる友達って、そういう所に集まるような人じゃないんじゃない?って思いますね。

廣瀬洋一(HEESEY):確かに(笑)インスタで「いいね」をもらうみたいな行為、何かそんな自分が人気者でスターだっていう気になっちゃうけど、虚しいですから。

吉井和哉(LOVIN):お誕生日会を自分で開く人と「いいね」を求める人、似てるかもね。お気をつけください(笑)。それよりも、今あなたの周りにいる人が最高な人なんじゃないの?特別な存在には見えていないかもしれないけどね。

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「子供の頃ね、家族は浜にいて、一人で泳いでて離岸流に入っちゃったんですよ」(HEESEY)

 「僕らを介して人々が出会う」

新曲の『DANDAN』には、ライブ会場を思い起こさせる歌詞も出てくる。2019年に行われた全国アリーナツアー「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-」の福島や熊本の会場では、チャリティーマーケットも開かれていた。吉井は、熊本で見たマーケットに朝から詰めかけるファンの様子を思い出し「愛おしいな」と感じ歌詞に盛り込んだという。被災地や全国のファンとの「出会い」を、大切にしているTHE YELLOW MONKEYらしいエピソードだ。 

吉井和哉(LOVIN):2011年の東日本大震災が、自分のロック観が180度変わった出来事だったんです。やっぱり、世の中が平和じゃないと、「自分は孤独だ」って歌うこととか、誰かに悪態をつく曲だとか、そんなこともできないんだなって。だからそれに対して自分にできるのは、地元に行くことぐらい。そこで地元のオーディエンスが来てくれて、音楽を聞いて盛り上がってくれること、そのほうが幸せだなって思えちゃったんで。

菊地英昭(EMMA):そこに行くことが気持ちで寄り添える気がする。だから実際にそこに行ってライブをするって大切だなって思ったりしますね。

廣瀬洋一(HEESEY):ツアーで募金(「バラ色募金」)してくれたり、チャリティーマーケットに集まってくれたり、僕らを介して人々が出会う。お互いに助けられたり、助けたりする場に僕らがなれる、それも大事な役目だと思っています。

菊地英二(ANNIE):僕たちにできることって、アルバムを出してライブやってお客さんに見てもらって何かが生まれて、そして経済も回転させること。自分の仕事をコンプリートすることがみんなのためになるっていう風に考えるようになった。そこに行ってライブすることも、東京できちんと自分の仕事をすることも復興のためになるし、それも出会いみたいなもので、ここでちゃんと活動すること自体が、みんなと接点を持つものという風に考えるようになりましたね。 

「必ず、納得させますから」

なお、30周年記念ドームツアーの終わる2020年春から無期限の「充電期間に入る」との報道も一部にあった。今後の活動はどうなるのだろうか?気になる報道についても確認したが、吉井は「心配しないでください」という。

吉井和哉(LOVIN):報道がちょっと派手めになっちゃったんですけど(笑)。全然もう、会社員が「ちょっとお休みしよう」っていうぐらいのお休みですから。心配しないでください。次のアルバムの準備です。必ず、納得させますから。

Junichi Shibuya / HuffPost Japan
THE YELLOW MONKEY

 

ドームツアー「THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR」

2019年12月28日(土)ナゴヤドーム
2020年2月11日(火・祝)京セラドーム大阪
2020年4月4日(土)東京ドーム
2020年4月5日(日)東京ドーム


配信限定シングル『DANDAN』(10月30日リリース)

 主人公はHEESEYです。っぽいでしょ?子供の頃、海水浴で「離岸流」で溺れそうになって、その時に初めて作曲をしたっていう話を聞いて。「毒がない、棘がない」って言われるかもしれないけど、単語は変わっても洗練されただけで、心の中はずっと変わってないんですよ。インディーズの頃にはよくあった曲調だしね。「変わってないな」って思えた。そこはこの曲ができて嬉しかったところ。(吉井和哉)

バンドも「離岸流」みたいに抗えない流れに飲み込まれそうになったこともあったし。この比喩にはゾクッとした。(菊地英二)

 

CD+DVD+ブックレット「30th Anniversary『9999+1』–GRATEFUL SPOONFUL EDITION–」(12月4日リリース)