強制性交等罪とは? 新井浩文被告が問われた罪。性犯罪の刑法改正で変わったこと

俳優の新井浩文被告の判決が12月2日、東京地裁で言い渡される。

俳優の新井浩文被告の判決が12月2日、東京地裁で言い渡される。

問われているのは、強制性交等罪。派遣型マッサージ店の女性従業員に性的暴行を加えたとして、起訴された。

今回の裁判は、被告が著名人だからというだけではなく、性犯罪を司法がどう捉えるのかという点でも注目されている。

そんな強制性交等罪は、2017年の性犯罪に関する刑法改正で、強姦罪から名称変更された。刑法制定以来110年ぶりの大幅改正で、性犯罪の厳罰化や被害者の告訴がなくても起訴できるようにすることなどが盛りこまれた。

具体的な改正内容などを振り返る。

条文の新旧比較表
条文の新旧比較表
新旧対照条文

(1)「強姦罪」⇒「強制性交等罪」に名称変更

暴力や脅迫によって無理やり性行為をする「強姦罪」の名称を「強制性交等罪」に変更。名称の変更に伴い、以下のように内容が変わった。

・被害対象が広がる「女性のみ」⇒「男性も含める」

従来の強姦罪は、被害者は女性のみとされていた。このため、男性が無理やり性行為をされる「強姦」のような被害にあっても、強姦罪は成立せず、適用するとしても刑の軽い強制わいせつ罪止まりだった。今後は強制性交等罪として、女性だけでなく男性に対する性行為のほか、オーラルセックスも処罰の対象となる。

(2)罰則をより厳しく「3年以上」⇒「5年以上」

罰則を厳しくし、最も短い刑の期間を3年から5年に引き上げた。強制性交等罪で有罪となった場合、最低5年以上の懲役となり、強姦罪と比べてより厳しい刑罰を受けることになる。

今回の裁判で検察側は、新井被告に対して、刑の下限である懲役5年を求刑している。有罪となれば、減軽理由がない限り、執行猶予はつかず実刑の可能性が高くなる。

(3)「親告罪」の廃止

従来の強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪は、被害者本人が加害者への処罰を求める告訴という手続きをとらなければ、起訴できなかった。この「親告罪」と呼ばれる規定が削除され、全ての性犯罪で告訴がなくても起訴できるようになった。この変更は、改正刑法が施行される前に起きた事件にも、原則適用されるという。

罪に問うかどうかを被害者が決める親告罪の仕組みは、精神的負担が大きく、性犯罪が潜在化する一因とも指摘されていました。廃止により、告訴されずに埋もれていた被害が、刑事裁判で裁かれるようになることが期待される。

その一方で、事件を公にしたくないという被害者の感情やプライバシーの保護、裁判をする負担などの課題も挙げられる。

法務省は改正の理由について、「近年における性犯罪の実情を考慮し、事案の実態に即した対処をする必要がある」と説明している。

改正で変わらなかったこと

一方で、この刑法改正で変更されず据え置きとなり、議論となっているのが「暴行・脅迫」要件だ。強制性交等罪が成立するためには、加害者側が暴行・脅迫を用いたことを立証する必要がある。

市民団体などは、この「暴行・脅迫」要件が有罪のハードルを上げていると指摘しており、見直し・撤廃を求める動きが起きている。

今回の新井被告の裁判でも、この「暴行・脅迫」があったかどうかが、争点の一つとなっている

注目記事