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2019年12月02日 11時09分 JST | 更新 2019年12月02日 11時09分 JST

「右利きはビザが必要で、左利きは不要というくらいおかしい」日米同性カップルが在留資格をめぐる訴訟で語ったこと

「裁判官の皆さまに、我々が”普通”の人生を送るチャンスを与えてくれるようにお願いいたします」

mizoula via Getty Images
裁判所のイメージ写真

15年間ともに連れ添い、アメリカで結婚した日米同性カップルが、日本でもともに暮らせるよう「定住者」の在留資格を求めて起こした訴訟で29日、東京地裁で第1回口頭弁論があった。

ただ、静かに安定した生活を送りたいだけ

意見陳述で、日本人男性の康平さんは「今月半ばに(パートナーの)ビザ申請却下の通知を受けに入国管理局に行った際、担当者に『二人の関係は日本においては存在しない』と言われました」と話した。

「どんなに愛し合って、どんなに長い間人生をともにしていても、私たちの関係、しいては存在自体を国に否定されてしまいました」

「この10年間、私たちは常に不安と闘ってきました。半年後、来年、(パートナーの)アンドリューは日本にいることができるだろうか。

もしアンドリューが日本に居れないのであれば、2人で国を出ていくしかありませんが、どこに行けばいいのか?仕事はどうしたらいいのか。そもそも今の人生とは何なのか?と不安ばかりです」

「10年前は、アメリカでもまだ同性婚が認められておらず、我々はアメリカから強制的に追い出されてしまいました。

その時、アンドリューは日本に来るために彼のキャリアのすべてを捨てました。今度は、我々は日本から追い出されようとしており、それはわたしがこれまで築いてきたキャリアのすべてを捨てることになります」

「私が望むことは、ただ通常の家族のように、日本で静かに安定した生活をおくることだけです」

「そんな中でも、我々は数年前に自宅アパートを購入しました。初めての新居で、2人でどんな家にしようかとワクワクしながらイケアでソファーなどの家具を買いました。

とても幸せでした。しかしその数日後、この家にもあとどれくらい住むことができるのだろうか?という現実に直面し、悲しさが込み上げてきたことを覚えています」

「日本を出てけばいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、自分が生まれ育った国を出ていくのはそんなに簡単なことでしょうか?

家族や友人、キャリアもすべてを捨てて、自分の国から追い出されるとは最悪な事としか考えれません」

「裁判官の皆さまには、今の国の考えがいかに日本人の人権を侵害し、国民を傷つけているのかを認識し、この状況を正す手助けになってほしいです。

我々だけでなく、今同じ悩みを抱えている家族、また将来同じような状況で苦難に直面する家族がなくなるように、今、助けになって欲しいです」

康平と出会ってすぐ「生涯をともにする人」だと思った

続いて、パートナーのアンドリューさんは裁判官に対して「私たちがふつうの人生を歩めるようなチャンスを与えてほしい」と訴えた。

「ゲイは全ての文化と歴史を通じて、あらゆる時代に存在します。康平と私は、右利きであることを選択したわけではないように、ゲイであることを選択したわけではありません」

「私の両親は、出会ってすぐに結婚しました。父は母を見てすぐ『生涯をともにする人』だと思ったそうです。私が康平に出会った時も同じ思いになりました。

アメリカの法律が変わり、康平と結婚できるようになったとき、出会ってからすでに11年が経っていました。

また、その数ヶ月後に私の姪が日本人男性と結婚しました。もし(日本で在留資格を)申請していれば、彼女は確実に日本のビザをすぐに得ることができていたでしょう」

アンドリューさんは、約70年前に弁護士を目指して米ヴァージニア州立大学に入学願書を出すも、黒人であることを理由に拒否されたグレゴリー・スワンソン氏の話を取り上げ、こう続けた。

「アメリカの裁判所は、この長い間で黒人と白人は異なるという考えがどれだけ間違っているかに気づきました。その時に、この差別問題を解決した言葉は『平等な機会』と『法のもとでは皆が平等に守られる』というものでした」

「歴史を振り返ると、いかにマジョリティの人たちがマイノリティの人々の生活を支配してきたか。多数派は、どんな人生が少数派の人間にふさわしいかを勝手に決めつけてきました」

「今回のビザのルール(配偶者としての在留資格が得られないこと)は、右利きの人はビザが必要で、左利きには必要ないと言っているのと同じくらいおかしなことだと思います。

我々の関係は、私の姪と甥の関係に劣るものではなく、同性間の関係と異性間の関係が異なるということは、異性愛者の勝手な妄想でしかありません」

「裁判官の皆さまに、我々が”普通”の人生を送るチャンスを与えてくれるようにお願いいたします」

「定住者」の在留資格、5回にわたり不許可

2人は2004年にアメリカで出会い、交際を開始。2015年にアメリカで結婚をした。

アンドリューさんは、その後日本で就職した康平さんとともに暮らすため、「留学」や「経営・管理」等の在留資格を得てきたが、更新が難しくなり2019年9月には期限が切れてしまった。

人道上の理由や社会経済情勢の変化などを考慮して出る「定住者」の在留資格を5回に渡り求めたが、いずれも不許可となり、2019年9月13日、アンドリューさんと康平さんは東京出入国管理局を相手取り東京地裁に提訴。

同時に、在留資格が許可されないことにより、家族形成の維持の自由を奪われ精神的苦痛を被ったとして、国に対して損害賠償を求める訴訟を提起した。

原告代理人の鈴木弁護士によると、被告である国は、原告側の主張に対して認否をするのみで、具体的な中身に入った答弁はしない態度だという。

次回の裁判期日は2月7日となったことについて、鈴木弁護士は「9月に提訴して、5ヶ月も経ってしまいます。アンドリューさんの在留資格はとても不安定です。裁判所に何とかならないかと伝え、裁判所も(この間の在留資格について)ここは柔軟に、とお答えいただきました。一刻でも早く裁判を前に進めていただきたい」と語った。