世界中に広がる「学びの危機」に孤立無援で立ち向かう多くの教師たち

世界の子どもの半数が、基礎的な読み書きと計算さえできない「学びの危機」に置かれている。
南スーダン共和国の首都ジュバで英語を教える教師。
南スーダン共和国の首都ジュバで英語を教える教師。
世界経済フォーラム・REUTERS/Andreea Campeanu

教育は、世界中どこでも、国や地域の成長と発展を左右する重要な仕事。どの国でも、教え子の将来性は、彼らを教える教育者の質を上回ることはありえません。にもかかわらず、すべての教師が優れた教育を行えるよう環境を整えることは、これまで軽んじられてきました。

教育は大きな問題となっています。広く認識されているように、世界中の子どもの半数が基礎的な読み書きと計算さえできないという「学びの危機」に対処する必要があるからです。世界の教育問題に取り組むエデュケーション・コミッションは、6億人ほどの子どもがこうした危機の渦中にあると見ており、持続可能な開発目標(SDGs)の第4目標にも掲げられている教育は、他の多くの開発目標の根底をなしています。優秀な教師こそが、教育の成果を左右する最大の要因ですが、多くの国では教師は不足し、孤立し、十分な支援を受けられずにいます。

一方、幸いにも「学びの危機」は多くの政府、投資家、資金提供者、国際機関の注目を集め始めています。「学びの危機」問題に迅速かつ広範に対応できる、低予算で斬新な手法を提案するリーダーも現れていますが、このような先進的なプログラムはわずかに過ぎません。

世界経済フォーラム

孤立無援になる教師

多くの中低所得国では、教師の仕事は困難を極めます。近くの町から移動に何日も要する地で授業をする、他者からの支援や指導が少ないか皆無である、授業をする子どもの年齢や題材に教科書が合っていない、教室が過密で床に座っている子どもがいるなど、研修を終えていよいよ教師になると、実に多様で難しい職場環境に置かれます。

さらに、多くの教師が、自身が教える内容についていけないことさえあるという、悲しい現実があります。教師の読み書きや計算の能力が、障害となりうるのです。サブサハラ・アフリカ地域のいくつかの国では、平均的な教師の読解力は、6年生(12歳)の一番優秀な生徒とさして差がありません。世界銀行は、中低所得国の教師は、効率的な教育をする能力や、動機が不足しがちであると報告しています。エデュケーション・コミッションの指摘では、現在、教師が教室で授業に割く時間は、在校時間のわずか45%。質の高い授業の不足は、子どもの成績悪化、退学率の増大、長期不登校の増加という結果を招きます。

結局、子どもが受ける教育の質は、教師がきちんとした授業を教室で行う環境がどれだけ整備されているかに左右されるのです。しかし、世界の現状では、教師は、良い授業を行うために必要な支援や指導を必ずしも受けられないまま、教育成果に責任を取らされる傾向があります。

さまざまなベストプラクティス

教師のための継続的な支援体制を確立、実施することは非常に重要です。そのためには、教師が子どもの良いところを見つけ、良好な関係を培える、子ども主体の授業ができるよう教師を援助すること。また、しっかりと計画された、学齢にふさわしい教材が手に入るようにすることも大切です。

教師への支援をすでに実践している好例が、ナイジェリアのエド州です。州全体で、新人、経験者問わず、公立校の数千の教師を訓練し鍛え直した結果、児童の学習改善に大きな効果がありました。初期分析では、「EdoBEST」と呼ばれるこの教育改革を採用した小学校の児童は、州の標準的な小学校の児童に比べて、算数ではほぼ9か月分、読み書きではほぼ8か月分の授業に相当する、学習効果があったとしています。教材、支援、養成の3本柱の教育プログラムを通じて、公立校教師の授業効率が変革されたのです。

これは、何万人もの子どもが就学しておらず、人口の60%が貧困ラインぎりぎりか、それ以下で生活していたナイジェリアの州の話です。世界銀行と世界教育フォーラムは、エド州の教育改革のスピードとその大きな効果を、イノベーションのケーススタディーとして注目しました。

EdoBESTを指揮したゴッドウィン・オバセキ州知事には、ビジョンと見識がありました。民間の教育企業であるブリッジと技術提携することで、無償の州立校のすべての子どもの教育の質を、速やかに、そして効果的に向上できると理解していたのです。

このような教育改革が行われたのは、エド州だけではありません。リベリアでも、公立校で教師を研修、支援するという同様のアプローチがあり、「ランダム化比較試験(RTC)」という、プログラムの参加者と非参加者をランダムに分けて実験し、成果を比較する効果測定手法により、このアプローチは学習成果に急激な向上をもたらしたとが確認されました。ほんの1年ほどで学習効率は60%向上。包括的な研修プログラムであることを理由に、教師の研修と支援を中心とする、リベリア政府の斬新な教育政策LEAP(リベリア教育支援計画)の一環として、支援と資源を得ることができました。

新しいキャンペーン

このような、教育プログラムによって起こる変化をさらに拡大するために、すべての教師に優れた研修の機会と支援を与え、授業を成功に導くことを目的とした、「#TeachersTransformLives」という新しいキャンペーンが立ち上がりました。一例として、ナイジェリアの教師セシリアさんの話を紹介します。一人の女性教師が、その教え子に及ぼす影響の大きさについて語っています。

基本的には、どれほどその学校や地域が遠隔地にあり、孤立し、貧困であろうと、すべての教師が効果的な授業をできるようにする必要があります。世界のどんな低所得地域でも、適切な支援があれば、教師は優れた授業を行えます。その授業が、教え子たちを成功に導く足がかりとなるのです

(この記事は2019年11月14日世界経済フォーラム「世界中に広がる「学びの危機」に孤立無援で立ち向かう多くの教師たち」より転載しました。)

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