スマホ依存を抜け出す13の方法

恐れることなかれ。生活習慣に少しずつ取り入れることのできる手段もある。

スマートフォンは何処までも私たちの暮らしを便利なものにしていく。知りたい情報はインターネットで難なく手に入り、世界中の人と簡単に連絡を取り合える。「アプリがなんでも解決する」なんて言われるほどだ。

しかし、同時に私たちはスマホを肌身離さず持ち歩き、依存している。頭を使わずにInstagramやTwitterのタイムラインを眺めて時間を浪費しており、多くの人がスマホをチェックしていないと不安を感じているという。スマホの使用は脳内の化学成分に影響を及ぼすという研究結果もある。精神的な健康を悪化させ、生産性を低下させ、他者との関係をこじらせ、繋がりを作る上で足かせになるなど、その影響は様々だ。

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スマホの使用を控えることでメリットが得られることは明白だが、その道のりは決して楽なものではなさそうだ。

「文字通り、生活の『全て』について回るものですから、いっきに使用を絶つことはあまり賢いやり方ではありません」臨床心理学者でアラバマ大学の補助准教授、ジョシュア・クラポー氏はハフポストに語った。

「数日、もしくは長い間スマホから離れるのが良い方法と考える人もいますが、それは行動する上で日々、毎時間、毎分の習慣に大きな困難を及ぼします」

しかし恐れることなかれ。生活習慣に少しずつ取り入れることのできる手段もある。今回、ハフポストはクラポー氏やその他の専門家に、スマホの使用量を軽減させる手段について聞いた。

スクリーンタイムを確認する

iPhoneのスクリーンタイム機能を使えば、スマホ使用時間の記録を、その内訳と合わせて確認するできる。この機能を使う事で、実際に自分が「何にどれだけの時間を割いているのか」を可視化することができ、効率的に変化を起こすことができる。

調査によれば、私たちは平均して1日に少なくとも3時間、スマホを使用している。「『自分はそんなに使ってないよ』と思うかもしれませんが、ぜひ確認してみて下さい」。そう語るリザ・キンドレッド氏は、著者で講演者、且つ瞑想やマインドフルネスについてワークショップ等を行う「マインドフル・テクノロジー」の創立者でもある。「きっと自分の数値に驚きますよ」と彼女は続けた。

もしiPhoneを使っているなら、「設定」からスクリーンタイムを確認し、通話やメール、SNS、音楽、映画など、自分が何にどれだけの時間を割いているのかを確認することができる。更にこの機能は、カテゴリーやアプリごとに、使用内容の内訳を細かく表示することもできる。週ごとの通知数や、スマホを開いた時にまず、どのアプリを開いているかを確認することもできる。他の機種にもデジタル・ウェルビーイングという似た機能がある。

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通知を完全オフにする

「何かと通知が多すぎるんです」と語るのは、生産性の向上に関する専門家、マーク・ストラクゼウスキー氏。彼は、通知の大部分をオフにすることを提唱している。取り分けSNSの通知をオフにした方が良いそうだ。

メッセージやカレンダーのリマインダー機能、クレジットカード詐欺に関する警告通知などは問題ない。しかしその他の通知は一般的に、生産性を低下させ、実際の生活における他者との繋がりを阻害するという。

更に「通知機能が、スマホ依存を悪化させるドーパミンを増加させる」という学説もある。「通知が来る度に反応し、大真面目に確認する必要はないんです」名誉教授でカリフォルニア州立大学、ドミンゲスヒルズの元心理学科長でもあるラリー・ローゼン氏はそう語った。通知を最小限に抑えることでこのサイクルを断つことが期待できそうだ。

スマホ画面をグレイスケールモードにする

根本的に、スマホは持ち主の使用を促すための仕組みで成り立っており、その中には色味も含まれる。そこで、画面を全て白黒にする「グレイスケール・モード」に切り替えることで、多くの人がスマホの誘惑が緩和されたという。

「スマホから色を消せば、即座にスマホの誘惑は弱体化します」 インターネットとテクノロジー依存センターの創立者でメディカル・ディレクター、且つコネチカット大学医学部で精神医学の臨床学准教授を勤めるディビット・グリーンフィールド氏はハフポストにそう語り、「白黒の画面なら、やたらと興味をそそられて、スクロールすることは無くなりますよ」と続けた。

アプリを整理する

視覚的な誘惑を乗り越える術として有効なのは、やはり整理することだろう。

「ホーム画面にあるものを制限して、つい開いてしまうようなアプリはフォルダーに隠すんです」とキンドレッド氏は言う。この方法で誘惑するものをある程度は抑止できるそうだ。

キャリア・コンサルティング会社、PurposeRedeemed.comの創立者、クリストファー・K・リー氏の友人は、アプリを2ページ目のフォルダーに隠すこのコツを取り入れているそうだ。

「確かにまだアプリは開けますが、その前に一手間を挟むことで、精神的な距離が生じるんです」とリー氏は語った。「特に目的もなくアプリを開く場合、それを開くまでに面倒な手間が入ることで、無駄なアプリ利用の頻度を下げることが出来ます。彼は今、スマホに無駄な時間を割くことが減りました。視界からアプリが消えることで、頭からもその存在が消えるのです」

また、パソコン上のSNSなど、頻繁に開いては引っ切り無しに使ってしまうアプリを、思い切って完全に消去してしまうのも手だ。

バイブレーションをオフにする

「バイブレーション機能は生産性を阻害します」とストラクゼウスキー氏は言う。「スマホを伏せてマナーモードにしておけば大丈夫だと思っている人もいますが、もしバイブが鳴ったら、すぐにスマホを開くことは明白です」

特定の通知のみをバイブにし、他の通知を全て完全にミュートに設定することで、スマホの誘惑を最小限に抑えることができそうだ。

見えない場所にスマホを置く

「人々は敬意を表すために、テーブルにあえてスマホを伏せて置きます」とジャーナリストで”How To Break Up with Your Phone”(スマホと別れる方法)の著者のキャサリン・プライス氏は語る。「私に言わせれば、そんな風にスマホを常に置いておくのは、話している相手を挑発してるようなものです。会話をしている相手がそこにいるのに、わざわざその間にスマホを挟んでいる訳ですから」

調査によれば、たとえ画面を伏せていたとしても、常にスマホを目の前においておくことで、精神的に根気のいる作業のパフォーマンスを低下させ、会話の理解度や、相手との繋がりを阻害するという。

「もし他者との関係に重きを置いたり、片付けたいタスクがあるのなら、スマホはまず目に入らない場所に置き、音も聞こえないようにしなくてはいけません」とプライス氏は言う。 「誰かといる時や仕事がある時は、ミュートやマナーモードに設定してカバンの中にしまっておくんです。『どうしても』って時はお手洗いやタバコを一服する感覚で、相手に許可を得てから席を離れて使うのです」

目覚まし時計を買う

寝室にスマホを持ち込むのは依存に拍車を掛けてしまう。特に夜、寝る前の使用は要注意なので、スマホをアラームとして使うのは止めるのが賢明だろう。

「就寝前1〜2時間はスマホの使用は避けてください。研究によると、就寝前のスマホの使用が就寝時間を遅くしているという結果が出ています。体内時計を狂わせて、翌朝の睡魔を促進し、睡眠を促すホルモンのメラトニンを抑制してしまうんです」とNPO「Children and Screens(子供と画面)」の創立者、パメラ・ハースト-デラ・ピエトラ氏は語る。

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「朝目覚めたら、メールやメッセージ、SNSをみる前に、スマホを見ない一定の時間を定めてください。例えば、オフィスに着くまで、子どもが学校に行くまで、返信や電話は待ってみて下さい」と彼女は続けた。

無理をせず、小さな目標を設定する

クラポー氏は、スマホの使用時間を減らすのに最も効果的な方法は、少しずつ、徐々に時間を削っていくことだと言う。幸運なことに、iPhoneにはアプリの使用時間にリミットを定め、使用アクティビティを追跡してくれる「App使用時間の制限」機能もあり、これはとても役立ちそうだ。

「目標は達成できるものの方が良いです」と彼は語る。1日にSNSに使う時間が3時間なら2時間半に、1日でメッセージする時間が4時間なら3時間半にと、無理のない目標設定が大切だそうだ。「通話、メッセージ、SNSなどがある中から優先順位をつけて、それぞれに達成できそうな使用時間の制限を設けるんです」

一方、自らによって自分のスマホが”没収”されていると感じないようにすることも大切なようだ。「無理に厳しくし、それがストレスになるほど、継続するのが難しくなってしまいます」とクラポー氏は言う。彼によれば、苦に成り過ぎないくらいのさじ加減で徐々に使用時間を減らすことにより、「ちょうど良い削減レベル」を見つけることができるそうだ。「目標はスマホの使い方を進化させることであって、使用を完全にやめることではありません」

心強い仲間を見つける

スマホの使用を抑えるために、必ずしも1人で奮闘する必要はない。

「他の人を巻き込んでしまえばいいんです」とリー氏は言う。「親しい友達に頼んで、自分がしっかりと目標を達成できているか毎週確認してもらうんです。また、友達やパートナーと一緒にいる時は、スマホを触らないよう約束するのも良いでしょう」

マルチタスクを辞める

スマホを見ながら、同時に友達と会話したり、Podcastを聞くことが出来ると考えている人もいるが、グリーンフィールド氏によれば、実際はそうではないようだ。

「マルチタスクなんてものは存在しません」と彼は言う。「一度に集中して得られる情報は1つです。多くを一斉に得ようとすればするほど、やるべきタスクを成し遂げるまでにより長い時間がかかってしまいます」

この現実を受け入れられれば、自然とスマホを置いて、目の前の人やタスクに集中できるようになりそうだ。

スマホを一切使わない時間を設ける

スマホの使用時間を減らすに当たって、週や1日単位でスマホを一切使わない時間を設けるのも得策かもしれない。例えば週に1度、敢えてスマホを家に置いて散歩に出てみるのも良いだろう。

「30分『スマホに邪魔されない』状況をつくり、1分間『スマホ休憩』(スマホを使って良い時間)を設ける」ことをローゼン氏は勧める。「友人にはこれを実践することを一言断っておけば、すぐに返信が来なくても相手が気を悪くすることはありません。または、60分〜90分電子機器を使ったら、10分〜15分の休憩を取って、脳のリフレッシュになる事、例えば外の空気を吸ったり、メッセージや電話ではなく直接誰かとお喋りしたりしてみて下さい」

デスクや食事をするテーブルなど、電子機器を持ち込まないスペースを決めるのも手だ。一方、スマホを使うためだけの時間を設けるのも効果がありそうだ。

「1日のどこかに、メッセージやSNSを見る特定の時間を設けてあげて、スマホ内の要点を押さえておくことがコツです」と語るのは、企業の生産性を上げるためのプラットフォームHiveのCEOで共同創設者のジョン・ファーノックス氏。「毎時間メッセージやSNSを確認していたら、多くの代償を払っているでしょう。確認時間を設定して、仕事に関係のない通知にできるだけ時間を持って行かれないようにしましょう」

他のアクティビティや趣味に集中する

「特に意識的にやることがない時に人はスマホをいじります」とリー氏は語る。「趣味や何かしらのアクティビティをすることで、より有意義でバランスの良いリズムが生まれます」

スマホ画面を眺める代わりに、外で時間を過ごしてみたり、新しい本を読んでみたり、ボランティア活動に参加したり、友達や家族と時間を過ごすのも良い。スポーツや楽器など、何か新しい趣味を開拓してみるのも良さそうだ。

「大切なのは、自分がどんな目的でスマホを使っているかを洗い出すことです。リラックスや社交など、その用途は様々です。そこで同じ用途を満たしてくれるアクティビティを探して、スマホを操作している時間をそれらに置き換えるのです」友人からそのアイデアを得たと言うとリー氏は話した。

「多くの人が5分、10分というちょっとした手持ち無沙汰にスマホを開きますよね。友達やバス、授業が始まるのを待っている前などです。何もしなでいることに落ち着かない人が多いのです」と彼は続けた。「こうした空き時間に他の使い道を見出すことも、選択肢ではないでしょうか。読書をしたり、周囲の人とお喋りをしてみて下さい」

「スマホは気を引くために作られている」と理解する

マインドセットを変えれば、こうした小さな変化を達成しやすくしてくれるだろう。

「第一に知って欲しいのは、スマホやアプリは意図的に中毒性のある作りになっているということです」とキンドレッド氏は語る。「このテクノロジーは中立的なものではありません。消費者がスクリーンを見るのに少しでも多くの時間を費やし、作り手の利益となるよう研究している人たちがいるのです」

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この現実を理解することによって、変化が促され、スマホを手放せないのは個人の欠落や汚点などではないことも分かる。それは結果として「自分の時間を取り戻そう」というモチベーションにも成り得ることだ。

「時間は有限です。スマホはその貴重な時間をできる限り長く奪うために作られています。アプリ制作側はそうすることで利益を出しているのですから」とプライス氏は語る。「それをどう防ぐかが勝負どころです。スマホに費やしている時間には本来、他の使い道があることを念頭に入れておいてくことが大切です。友達や家族、子どもと過ごしたり、仕事を片したりと、他に意味ある時間の過ごし方が沢山あります。それらをせずに、スマホに依存する代償は非常に大きいです」

多くの人が情報や経験を逃して取り残されることへの恐れ(FOMO: Fear Of Missing Out)を抱き、スマホを手放せずにいる。しかし、取り残されることへの「恐れ」ではなく、それによる「喜び」に目を向けることを奨励する。

「スマホを手放して得られる素晴らしい対価を考えてみてくだい。会話、感情的な繋がり、密接な関係と、全ての体験... 沢山あります」と彼女は語った。「ランチの時に机にスマホを置いて行ってみたり、散歩にスマホなしで行ってみたりして、あえて『取り残されることへの喜び』(JOMO: Joy Of Missing Out)を感じてみてください。自ら受け入れてしまった束縛から自由になりましょう」

ハフポストUS版の記事を翻訳、編集しました。