ブラック企業大賞2019、「吉本興業」「長崎市」などがノミネート企業に

労働環境の悪さで注目を集めた企業を選ぶ「ブラック企業大賞」のノミネート企業が発表された。

長時間労働やパワハラ、セクハラなど、労働環境の「悪さ」で注目を集めた企業を選ぶ「ブラック企業大賞」。2019年のノミネート9社が12月13日、発表された。

所属タレントの闇営業問題に関連して、幹部のパワハラ的言動も話題になった「吉本興業」や、女性記者が部長による性暴力を訴えている「長崎市」などがノミネート。ウェブ投票を経て、12月23日に都内で大賞の発表と授賞式が行われる。

佐々木亮弁護士は「非常に有名な大企業が多く、過去に大賞の受賞歴がある企業が多かった。過労での自死が多いことは通年通りだが、選定作業をしていく中でかつての企業がまた出てくるのは虚しいというか、悲しいものを感じました」と話した。

ブラック企業大賞2019ノミネート企業について発表する主催者
ブラック企業大賞2019ノミネート企業について発表する主催者
Nodoka Konishi / HuffPost Japan

ブラック企業大賞は、弁護士やジャーナリストらでつくる実行委員会が2012年から始め、8回目。

個別の企業の事例が取り上げられることはあっても、「ブラック企業」を生み出す社会背景や構造への注目が集まりづらい現状を変えようというのが狙い。主催者は、広く話題にされることで、誰もが安心して働ける社会を目指したいとしている。

2018年は、社員2人が過労自殺していたことなどが発覚した三菱電機が受賞している。

ノミネートされた企業9社は以下の通り。報道や裁判時の情報などを参照してノミネート企業が選出されている。

KDDI株式会社
2015年に、入社2年目の20代社員が、過労死ライン以上の残業をした末に自死。労働基準監督署からは2018年5月に労災と認定された。また、従業員4613人に対し未払い残業代計約6億7000万円があり精算していた。一連の事実は2019年になって公表された。「日本を代表する企業が自らの不祥事を長年にわたり隠蔽してきた」としてノミネート。


株式会社セブン-イレブン・ジャパン
全国のフランチャイズ加盟店従業員の残業代が少なくとも7年間に渡って未払いで、額は少なくとも4億9000万円に上ることが明らかになった。40年以上続いていた可能性もあるという。同社は2015年にブラック企業大賞を受賞。「依然多くの問題を抱え」ているとして再びノミネートしたという。


株式会社電通
2018年度の社員の違法残業や36協定の違法な延長が指摘され、労基署から是正勧告を受けた。2015年に新入社員の自死が労災認定されるなど、過去にも過労死の被害者を出し、労基法違反で2017年に有罪判決を受けて社会的にも大きな批判にさらされたにもかかわらず、再び勧告を受けたという「悪質性に鑑み」ノミネートしたという。同社もブラック企業大賞2016を受賞している。


株式会社ロピア
2018年に従業員の男性が過失で商品を持ち帰ったことで懲戒解雇とし名指しで「窃盗を理由に懲戒解雇した」と全店舗で掲示。2019年に横浜地裁が解雇の無効などを認める判決を出した。裁判ではさらに、男性が「名ばかり管理職」として残業代の未払いがあったことなども認められた。「わずか1つの事件のうちにブラック企業でありがちな事象がいくつも見られる」としてノミネート。


長崎市
2007年7月、取材する女性記者に対して当時の原爆被爆対策部長が性暴力をふるう事件が発生したと女性側が訴えているが、内部調査中に部長が自死。女性は損害賠償などを求めて市側を提訴し係争中だが、市議会で女性をやゆするヤジが飛ぶなど「二次被害ともいえるような状況がつづいている」として、ノミネートされた。


トヨタ自動車株式会社
2015年に入社した社員が2016年に自死。労基署は上司のパワハラが原因で適応障害を発症したためだと労災認定をした。「日本を代表する大企業が新入社員を短期間に自死まで追い込んだ事案であり重大」としてノミネートされた。


三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)
メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社は、三菱電機の子会社。2017年末に40代の技術者が自死し、労基署が長時間労働による労災と認定した。三菱電機では、14~17年に社員5人が労災認定されて、うち2人が自死。また、2019年に新入社員が自死した事件でも教育担当の上司が「死ね」などと言っていたとして自殺教唆の疑いで書類送検された。ブラック企業大賞2018を受賞している。

吉本興業株式会社
従業員に過労死ラインを超える残業をさせていたとして労基署から是正勧告を受けた。また、所属タレントが振り込め詐欺グループの宴会に金銭を受け取って参加していた「闇営業」問題が報じられる過程で、所属タレントとのギャラ配分の不公平さや正式な所属契約書を交わしていないことなどが指摘された。また、社長のパワハラ的言動も話題になった。「芸能界における労働問題」などの象徴事例としてノミネートされた。

楽天株式会社
2016年6月、社員だった男性が会議中に上司から暴行を受け障害が残ったとして労基署から労災認定された。「会社内での暴行事件は、零細企業では相当数存在するが、プロ野球球団を運営するような大手企業において発生する事案は極めてまれで看過できない」としてノミネートされた。

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