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2019年12月26日 09時48分 JST | 更新 2019年12月26日 09時48分 JST

コンビニの24時間365日営業を考える ~消費者視点か、勤労者視点か、日欧の違い~

「お客様は神様」という神話が残る限り、勤労者はより一層過酷に働くことになる。

ついに、ローソンに続き、セブン―イレブン・ジャパン(以下、セブン)が元旦休業の実証実験を50店舗程度で行うそうである。

逆に、ファミリーマートは、元日の休業実験は行わないとして判断は分かれている。

いずれにせよ、24時間365日どこでも「開いててよかった」が「売り」であった日本のコンビニチェーンに転機が訪れてきているようである。

その一方で、筆者の住むフランスでは、これまで法律で禁止されていた日曜営業や24時間営業が一部で始まりつつある。24時間365日から、日欧の違いを考えてみたい。

 

なぜ、これまで24時間365日にこだわったのか

セブンは1号店を開業した翌年の1975年に福島県の虎丸店で24時間営業を開始した。これに他社も追従し、1980年代前半にはコンビニの大半が24時間営業365日営業となった。この24時間365日営業は、夜間の地域の防犯にも役に立つと言われたばかりか、ATMの設置や公共料金のほか様々な振込みなどマルチ機能を持つことで、今では生活のインフラとなっている。

しかし、時代は変わり、止まらない急速な少子化と高齢化のなかで起こった、特に小売りや飲食などのサービス業での深刻な人手不足と賃金の上昇を受けて、働き方の見直しの議論は24時間営業のコンビニ業界でも議論されていた。実際、24時間営業の見直しの実証実験が2017年にファミリーマートで行われている。ローソンも同様の実験を行っているが、24時間営業の見直しにはつながらなかった

ところが、今年(2019年)2月、東大阪にあるセブンのフランチャイズ店のオーナーが、本部に無断で営業時間を5時間に短縮するという実力行使にでたことで、本部からフランチャイズ契約違反を理由に1700万円の請求とFC契約解約(本部は、現在、店へのクレームを理由に今月末までに合意契約解約を求めている。)を求められたことを契機に、人手不足に悩む店舗のオーナーが長時間労働を強いられていることがマスコミで大きく取り上げられた。そして世論からは同情の声が上がり、24時間営業の見直しの社会的気運が一気に高まった。
 その後、セブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ3社は、24時間営業の見直しなどを柱とする行動計画をまとめ始めた。腰の重かった最大手のセブンも11月から8店舗で時短営業に移行すると発表した。午後11時から翌日午前7時まで閉める店もある。セブン-イレブンの名の通りである。ファミリーマートはすでに10月からFC加盟店約600店で時短実験を実施、ローソンは約100店が加盟店の都合で時短営業を実施する計画を発表している

 

問題は、大手3社はこれまで何ゆえに24時間365日にこだわったのかである。

その背後には、日本の80年代までの高度成長を支えた神話である「品質の安定化」と「お客様は神様」が一番大事という神話(当たり前で誰も疑いを持たない)があろう。

この「品質の安定化」は、そもそもは日本の製造業製品を世界に認めさせた日本の強みの根幹と思われている。コンビニにおける「品質の安定化≒均質化」は国中どこの店舗に行ってもサービス品質は同じであることを保障したアメリカのマクドナルドのモデルを一層徹底したものといえよう。

次の「お客様は神様」が日本企業の経営、いや日本社会において、如何に重要かは言うまでもなかろう。多くの個人は、消費者であるとともに勤労者であるが、日本社会においては、いや、個人においても、無意識に、お客様(消費者)が勤労者に優先することになってはいないだろうか。そうであれば、お客様は、「the faster」「the better」「the cheaper」を際限なく追求するので、これについていく勤労者は、「the quicker」「the smarter」「the harder」で対応することとなり、多くの勤労者は一層過酷に働くことになる。なんでもありの「お客様は神様」が優越する意識がある限りは、日本の抱えた過酷な労働と言う状況はなかなか変わらないのではないだろうか。

 

「24時間営業?働く人が大変でしょう」と言うフランス

筆者は現在、2年ほどフランスに暮らしているが、フランス人にこの24時間営業の話をすると、「なんで一年中24時間営業が必要なの?働く人が大変でしょう」となる。つまり、視点が、顧客ではなく、勤労者なのである。この観点は、日本と欧州では正反対である。

歴史的には、キリスト教の安息日としての日曜日の休業(現在は週に一日)と組合運動が強かったことによる24時間営業の事実上の禁止が背景にあろう。フランスの労働法には、特例はあるが、「従業員は週に6日を超えて働くことはできない。毎週少なくとも1日の休憩(原則として日曜日)と勤務日の24時間の間に最低11時間の休憩を与えなければならない」とある。

写真提供:小笠原泰

食料品店の夜間営業に関しては、欧州大陸では、昔から夜間専門食料品店(フランスではépicerie de nuit、オランダではAvondwinkelなど)があった。しかし、時代の変化もあり、まず日曜営業(短縮時間営業が多い)が見られるようになり、24時間営業も少しずつ見かけるようになってきた。しかし依然、空港・ターミナル駅内店舗、大都市の飲食店などに限られたものだ。欧州大陸で、もっとも自由化していると感じるオランダでも日曜(週7日)開店はあるが、24時間営業のスーパーは見かけない(かつて24時間であったが今は24時間営業ではない)。より労働者保護の法令が厳しいフランスでは、日曜営業や24時間営業はもってのほかという印象である。
 しかし、マクロン政権ができて以来、規制緩和の方向に向かっている。そのため、法律的に原則禁止でも、地域や営業場所など例外や特例を設けて、日曜営業や24時間営業が始まりつつある。まずは、日曜営業であるが、ここトゥールーズでは、マルシェなど食品店は日曜に開店し、その代わりに月曜日を休みとして、週一日は休日にあてるという法律の規制を満たしている。

また、2年前には、ナショナルチェーンの小規模スーパーであるPetit CasinoやCarrefour Cityは、日曜日は休みであったが、その後、日曜日の午前営業、それが2時間程度の昼休みをはさんでの終日営業へ、そして、今は日曜日も終日営業となってきている。法律的には日曜日の午後の開店は依然規制されていて、違反すると罰金対象で裁判に至るのだが、従業員の契約形態を短時間や請負などに変えることで法律の網を逃れていると法律家は指摘している(個人経営の小規模食料品スーパーは法律適用外とされている)。

しかし、詳細はケース・バイ・ケースで複雑で、労働法の専門家も総体はなかなか把握できないそうだ。大規模のスーパーに関しては、依然原則的に日曜日は閉店である。
 24時間営業(含む開店時間延長)は、推し進めようとする企業とそれを阻止する法律と組合と言った感がある。

 

24時間週7日営業の要望は欧州でもある

写真提供:小笠原泰

食品小売り大手のCasinoは、傘下のスーパーマーケットチェーンMonoprixの289店舗中、パリ首都圏を中心に129店舗で通常の21時から一時間延長し22時までの夜間営業を行っていた。しかしこの11月末に地裁が、この夜間営業延長に関する2018年末に締結された労使協定は不当であるとしていたCGT(フランス労働総同盟)の提訴を認め、「国際観光地区(ZTI)」内の店舗も含めて、21時以降の就労を全面的に禁止した。CGTの主張は、本来例外的であるべき夜間就労が定常化されるようになっているというものであった。

このように、開店時間延長も難しい状況の中で、基本的に禁止の24時間営業を行うための各企業の取り組みは、なかなか興味深い。例えば前述のPetit Casinoでは、月曜日から土曜日の21時から翌朝8時まで、日曜日は20時から翌朝8時まで、完全セルフレジ(クレジットカード支払いのみ。酒類販売は禁止)となっている。警備のためのスタッフが1名入り口近くに座っていて、質問には答えてくれる。しかし、店舗数から見れば、24時間週7日営業の店舗は少数で実験の域をでないと言えよう。

この無人化の流れに労働組合はかなり強い警戒感を示している。上記のMonoprixのケースでも、勝訴したCGTは、無人セルフレジの導入により、従業員なしで夜間営業が行われることを警戒しているといった具体だ。

生活スタイルの変化で、24時間週7日営業という消費者の要望の流れは欧州でもあるのであろう。ここトゥールーズでは、金曜日と土曜日は午前3時までメトロが運行され、深夜遅くまで街の中心部は賑わっている。しかし、多くのフランス人は、消費者である前に勤労者という強い意識がある。だから、24時間週7日営業の流れはフランスで粛々と進むではあろうが、急速に加速することはないのではないかと筆者は思っている。

個人的には、フランスは勤労者の意識が強すぎるのでは?と感じることもなくはないが、逆に日本は「お客様は神様」という消費者の意識が強すぎる。もう少し、勤労者であるという軸足を個人、そして、社会として持つことが必要なのではないか。24時間週7日営業に対する日欧の変化を見るに、これも、社会は極端から平準化するというグローバル化の流れの一つかもしれない。

(編集:榊原すずみ @_suzumi_s