イランのソレイマニ司令官とは何者か? 米軍による殺害が一大事である理由

ソレイマニ司令官の暗殺は、アメリカがイランに対して大胆なアクションを取ることを厭わないことを示唆する。
イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官(真ん中)2016年9月18日
イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官(真ん中)2016年9月18日
ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES

アメリカの国防総省は1月2日夜(現地時間)、イランそして中東において最も強力な軍人の1人を殺害したことを公表した。

標的となったイランのカセム・ソレイマニ司令官の死は、アメリカとイラン国間の敵意を急激に高め、イランからの報復をほぼ保証することになる。

イランの最高司令官であったソレイマニ司令官とは何者なのか?そして彼の死がなぜ、中東にとって大きな変革をもたらすのか?以下に解説していく。

殺害されたカセム・ソレイマニ司令官とは?

ソレイマニ司令官は、イラン革命防衛隊のエリート部隊「コッズ部隊」の司令官であった。イラン革命防衛隊は中東で高度な対外工作を行い、シーア派民兵のイラクでの訓練などを行なっている。2019年4月にアメリカのトランプ政府は、イラン革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定した。

ソレイマニ司令官はアメリカではテロリストとして見られているが、イランの保守派やアメリカやその同盟国に批判的な人々から支持されてる人物であった。また、彼の殺害に対し「報復」を誓ったイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師とは、強い繋がりを持っていた。

なぜ彼が重要なのか?

ソレイマニ司令官は15年前に「コッズ部隊」の司令官となり、中東でイランの影響力を広げ、新たな民兵を訓練し武装させるなど、悪名を轟かせた。

元アメリカ軍司令官であり元CIA長官でありデビット・ペトラウス氏はForeign Policyのインタビューでソレイマニ司令官について、イランが中東の「シーア派三日月地帯」と呼ばれるエリア(イランからイラク、シリア、レバノン南部までを含む)を制覇する計画においての「建築家」だと話した。

「彼はイラクだけでも600人以上のアメリカ兵士、そして多くの連合軍やイラクの仲間や、シリアなどの他の国でも人々の命を奪った武器、爆発物、発射物、軍需物資の提供をした重要人物だ」と話した。

なぜトランプ政府は彼を狙ったのか?

アメリカ軍は、イランによるアメリカへの攻撃を防ぐためにソレイマニ司令官を標的にした、と国防総省は声明で発表した。

トランプ大統領はソレイマニ司令官がアメリカの外交官や軍を狙った攻撃を計画していたと非難しており、暗殺により阻止された、と話した。
「ソレイマニはアメリカの外交官や軍関係者に邪悪な攻撃を間も無く実行しようと計画していたが、その途中で彼を捕まえ、殺害した」と話した。

イランの要人を標的にし、アメリカがイランとの戦争を始めようとしているとの批判に対し、大統領はソレイマニ司令官の暗殺を擁護し、アメリカが地域でのイランの影響を覆そうとしているという主張をかわした。

「昨夜アクションをとったのは、戦争を止めるためだ。始めるためではない」トランプ大統領はフロリダの別荘「マー・ア・ラゴ」から1月3日に話した。
「イランの人々を深く尊敬している」と加え、「彼らはとても優れた人々で素晴らしい伝統があり、限りない可能性を秘めている。政権の変化を求めているわけではない」と話した。

彼の死がなぜ一大事なのか?

アメリカが政府高官、特にイランの影響力のある軍人を直接標的にするということは、過去に前例がない。この暗殺は、アメリカがイランに対し、大胆かつ暴力的なアクションを取ることを厭わないことを示唆する。

この新たな攻撃的な行動は中東を揺るがし、確実にワシントンD.C.とテヘランやイラク国家との関係に劇的に影響を与えると予測される。

アメリカとイランは、両国ともイラクで存在感があり、バグダッドのイラク政府とISISとの戦いに協力している。専門家たちは、緊張の高まりがアメリカの国家安全を脅かし、これまでのアメリカの反テロ対策への成果を危機にさらしていると懸念する。

一部の専門家は、ソレイマニ司令官の暗殺は、イランへの戦争行為だと話す。
「主権国家に対する戦争行為という以外に、説明しようがない」Brookings Institutionで国際政策の副ディレクターをしているスザンヌ・マロニー氏は話した。

これから何が起こるのか?

イランの最高指導者ハメネイ師が示したように、イランのアメリカの攻撃への何らかの反応が予測されている。どう行動に出るかはまだ明らかでなく、専門家たちは現在議論している。

イランの外交政策などを統括する最高安全保障委員会は1月3日にハメネイ師と緊急会議を開き、アメリカの攻撃にどう返答するか決定を下したというが、同日に出された声明にアクションの詳細は述べられていなかった。「ソレイマニ司令官への犯罪的攻撃は、中東での最悪な戦略ミスであるとアメリカは自覚すべきであり、これによる責任を簡単には逃れられない」と委員会は声明を発表した。

イラクやその他の中東地域や同盟国などにいるアメリカの軍関係者が、イランからの反撃の標的になりやすいが、専門家たちはイランは全面的に戦争になるような行動には出ないと見ている。

しかし、ハフポストの国際シニア・ニュースリポーターのニック・ロビンス-アーリーによると、イランは反乱的な攻撃や親イラン派兵士や民間兵に頼る可能性がある。

APによると、シリアやイラクには何万人ものイラン政府の代理武装勢力がいる一方、アメリカは同地域には比較的小規模な軍事的存在しかない。

シンクタンクCentury Foundationのイラン専門家のディーナ・エスファンディアリー氏はこの戦略について、「非対称戦争(両交戦者間の軍事力、あるいは戦略または戦術が大幅に異なる戦争)」だとMic.comとのインタビューで話した。

「イランは、全面的な従来の戦争だと勝てないとわかっており、それを始め、負けるようなことはしないでしょう。なぜならそれは、ソレイマニ司令官の死へ対する報復をしないよりもはるかに悲惨だからです」とエスファンディアリー氏は話した。「逆に何をするかというと、地域の代理武装勢力にイラク、レバノンやシリアで問題を起こさせるなどして、断固として非対称戦争を使い応戦してくるでしょう」

イランの反撃が予想される中、APによると、アメリカは約3000人の陸軍兵を中東に送ると発表。それは、先日700人の兵士をクウェートに配備したのに追加する形となった。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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