「ハーフタイムショーを、いつか絶対...」。スーパーボウルで国歌独唱したデミ・ロヴァートさん、薬物依存と闘っていた。

スーパーボウルのキックオフ前、デミ・ロヴァートさんは10年前のある投稿をシェアした。夢を叶えたロヴァートさんの10年間は、決して平坦なものではなかった。
圧巻の歌声で国歌を独唱するデミ・ロヴァートさん
圧巻の歌声で国歌を独唱するデミ・ロヴァートさん
Miami Herald via Getty Images

カンザスシティ・チーフスが50年ぶりの勝利を果たしたスーパーボウル。試合前の国歌独唱では、薬物依存に苦しんだ過去を持つデミ・ロヴァートさんが圧巻の歌声を披露した。

10年越しの“夢”を実現させたロヴァートさんだが、その道のりは決して楽なものではなかった。

薬物とアルコールを断って6年。「またやってしまった」

デミ・ロヴァートさんは子供向けTVシリーズ「Barney & Friends」でデビュー。2008年にディズニー・チャンネルで放送された映画「Camp Rock」で人気となり、2013年には「Heart Attack」が世界中でヒットを記録した。

一方、人気の影で、薬物やアルコールへの依存、過食症や双極性障害に苦しんだ過去もあった。

2018年3月には、Twitterで薬物を断ってから6年の節目を迎えたことを報告し、「この1年も喜び、健康、幸福に過ごせますように。やり遂げてみせます」と決意を新たにする投稿も行なっている。

ところが、この3カ月後の6月に発表されたシングル『Sober』では、「なぜなのか分からない。でも、さみしくなると、いつもやってしまう」と、 再び薬物やアルコールに手を出してしまったことを示唆。

「ママごめんなさい。私はまたやってしまった」、「パパ、私を許して。床にお酒をこぼすほどに飲んでしまった」、「信じてついてきてくれたみんな、ごめんなさい」、「こんなつもりじゃなかったの。私自身にもごめんなさい」ーー。

両親やファン、自分自身に対して謝罪し、再スタートを誓う内容の歌詞が、克服したと思っていた依存から抜け出すことの難しさと苦しみを伝えていた。

そして、その翌月2018年7月24日。

ロヴァートさんは、自宅で意識不明の状態で発見され、救急搬送された。原因は薬物の過剰摂取。一命はとりとめたものの、退院後はリハビリのため、活動を休止することになった。

復帰舞台で歌ったのは、オーバードース4日前に収録した「Anyone」

スーパーボウルの1週間前に行われたグラミー賞の表彰式。

デミ・ロヴァートさんは約1年半ぶりに表舞台に立っていた。

真っ白なドレスで、涙を流しながら披露した新曲「Anyone」は、オーバードースで意識不明となるわずか4日前にレコーディングした曲。

ピアノの伴奏とともに歌い出したロヴァートさんは、数秒後にパフォーマンスを一時中断すると涙を流し、冒頭から歌い直す場面もあった

薬物の過剰摂取前に助けを求めて叫ぶような歌詞には、音楽もアルコールも救いにはならず、歌も祈りも届かない苦しさが綴られている。

誰でもいいから どうか私のもとへ連れてきて

神様 誰かいないの?

誰かにいて欲しいの

UNIVERSAL MUSIC JAPAN 公式サイト『Anyone』より

ロヴァートさんはInstagramでオーバードース4日前に収録した音源を公開。「私はレコーディングは完璧主義者だけど、これはそのままで残しておく方がいいと思いました」とコメントをつけている。

10年前に投稿「いつか国歌を歌うんだ」

スーパーボウルのキックオフ前、ロヴァートさんは公式Instagramにある画像を投稿し、「みんな、夢は本当に叶うんだよ」とメッセージをつけた。

その画像は、2010年に投稿したロヴァートさんのツイート。

「いつか、私はスーパーボウルで国歌を歌うんだ。いつか、絶対…」とある。

投稿時間は「2010年2月7日午後6時7分」とあり、10年前のスーパーボウルのキックオフ直前に投稿したことが分かる。

真っ白なスーツを身につけたロヴァートさんは、スタジアムに広がったアメリカ国旗を背に、情感たっぷりに国歌を歌い上げた。満員の観客からは割れんばかりの歓声が上がった。

公式Twitterにも、「あなたは成し遂げた。素晴らしかった」「今日がその日だ」などのコメントが相次いでいる。

グラミー賞に続き、大舞台で完全復活を見せたデミ・ロヴァートさん。

だが、闘いは今後も続くのだろう。

それでも、今のロヴァートさんには、新しい夢があるようだ。

スーパーボウルのキックオフの5時間前、ロヴァートさんはTwitterを更新。「いつかスーパーボウルで国歌を歌うんだ」という10年前の投稿をリツイートしたうえで、もう一つ新しい投稿をしてみせた。

「いつか、私はスーパーボウルでハーフタイムショーをやるんだ。いつか、絶対…」

この記事には違法薬物についての記載があります。
違法薬物の使用は犯罪である反面、薬物依存症という病気の可能性もあります。
医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気です。
現在依存症で悩む方には、警察以外での相談窓口も多く存在しています。

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