プリキュアの“フワ”を好きな僕は、恥ずかしい? 親の僕だって、息子の「好き」を縛ってはいけないんだ

5歳にして息子に刷り込まれた“男らしさ”。でも、「かっこいい」も「かわいい」も好きな息子が「ほんとうのぼく」なんだ。
映画『スター☆トゥインクルプリキュア』のパネルの前でパチリ
映画『スター☆トゥインクルプリキュア』のパネルの前でパチリ
筆者提供

唐突だが、僕は日本ハムファイターズが好きだ。ダルビッシュや大谷翔平といったスター選手の活躍した〝北海道日本ハム〟は「好き」を公言できるが、80年代の後楽園球場をホームとした〝日ハム〟は「好き」を公言できなかった。「日ハムが好き」と言うと、大体「なんで?」と返される。「好きだから」に決まっているのに、「なんで?」って。
こんなの、「俺の彼女なんだ」と紹介しているのに、彼女の顔をマジマジと見たあと「なんで?」って返されるぐらい失礼な話である。

何が言いたいかというと、つまり「好き」が「恥ずかしい」場合があるということだ。ウチの5歳児くんも、1年くらい前からその問題にぶち当たっている。

「好き」と「恥ずかしい」のはざまで葛藤する息子

息子のお気に入りのぬいぐるみたち
息子のお気に入りのぬいぐるみたち
筆者提供

ウチの5歳児くんは他の男児同様、仮面ライダーが大好き。「ぱぱは、どのかめんらいだーがすき?」と1日30回くらい聞かれるし、「おまえをとめられるのはただひとり、おれだ……」とお気に入りのセリフを吐き、「えい! やー!」と1日中、何かと戦っている。そのため、ショッピングモールや住宅展示場で行われるヒーローショーをネットで探し出しては、彼を連れて行っているのだ。

そんななか去年の夏、仮面ライダー・ゼロワンショーに行ったときのこと。5歳児くんはまさに“ヒーロー”であるゼロワンのアクションに酔いしれること、30分。ショーが終わると、次はお待ちかねの握手会タイムだ。

行列に並び、緊張の面持ちのなか、そろそろ自分の番……というとき、息子が「ぱぱ、これはずしてっ! はずしてっ!!」と騒ぎ始めたのだ。

声は明らかに怒っている。「どうしたの、急に!? 具合悪い?」とこちらが慌てると、「ちがう! これ、はずしてっ! はやくっ!」。

彼が指す手首のほうをパッと見ると、そこにはNHKのテレビ番組『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃんのキャラクターの腕時計があった。これはショーの前に「ほしい、ほしい」とせがむので、買ってあげたガチャガチャの景品。

欲しいって言うから……と思うも彼の勢いに押され、その腕時計を外したところでちょうど握手の順番に。彼は笑顔を取り戻し、ゼロワンと握手をしたのでした。

さて、彼はなにゆえにゼロワンとの握手を直前にし、チコちゃんを取るよう言ってきたのか? 推測するに、こういうことだろう。そのチコちゃんの腕時計は、ベルト部分がピンク色。つまり彼からすれば「もうすぐ、だいすきなぜろわんとあくしゅだ!」と自身の手を見つめたところ、さっき買ってもらったチコちゃんの腕時計がある。すると「こんなおんなのこいろしたとけいしてたら、ぜろわんにばかにされる」と急に恥ずかしくなり、「ぱぱ、とって!」と騒ぎ出したのだと思う。

彼はその瞬間、「好き」と「恥ずかしい」のはざまで葛藤していたのだ。

そう、彼は仮面ライダーやスーパー戦隊といった「強い」ものが好きな一方で、「かわいい」ものも大好きなのだ。1歳や2歳くらいのまだ赤ちゃんのころなら、女の子、男の子関係なくぬいぐるみが好きだったりするだろうが、不思議なものでだんだんと好みが分かれていくようだ。でも、ウチの子は5歳になってもぬいぐるみのようなかわいいものが大好き。男の子でも女の子でもない、今だ〝天使〟である我が子が親として愛おしい。

生まれたときからの相棒、〝くまちゃん〟
生まれたときからの相棒、〝くまちゃん〟
筆者提供

男らしさ、女らしさの刷り込みは何歳から?

この間、昼ご飯を食べに、マクドナルドに行ったときのことだ。いつものように「ぼく、はっぴーせっと!」と言う彼に、「おもちゃ、どれにする?」と僕。

いつもなら「○○!」と即答するのだが、返事がない。ハッピーセットのおもちゃは“男の子が好きそうなもの”、“女の子が好きそうなもの”、そして“本”に分かれているのだが、どうやら彼はそのとき、〝リカちゃん〟に惹かれ、でも迷っているようだった。

俺がリカちゃんを指差し、「あれ、気になる?」と尋ねると、コクンとうなずき、「でもやっぱ、はずかしい」。「恥ずかしくなんか、ないよ! 仮面ライダーのおもちゃが好きな女の子だっているよ」「でも、はずかしい……」とちゅうちょする息子を横目に、リカちゃんをオーダー。すると、彼は何ともいえない笑顔を浮かべていた。

いざ席に着くと、いつもはハンバーガーにかぶりつく前におもちゃの袋を破るのに、その日にかぎって破ろうとしない。それどころか、トレイの下に隠そうとしているのだ。その日初めて気づいたのだが、男の子が好きそうなおもちゃの袋は青、女の子の好きそうなおもちゃの袋は赤なのだ。

息子が赤い袋のおもちゃを隠しているのに気づいたらしい、隣りのテーブルに座る7,8歳ぐらいの女の子が、冷ややかにこちらを見ていた。「うわ~、まだ小さいのに、もう男らしさ、女らしさがこんなに意識にすりこまれているのか」と少し驚いていると、ウチの子は恥ずかしそうに赤い袋をまだ隠している。

「恥ずかしくないよ!」と大声で何度も言っても、彼にはあまり届かない。彼の「恥ずかしい」という気持ちに寄り添いたい。そう思った僕は、周りに見えないよう息子と袋を開け、こそっとリカちゃん人形を組み立てたのだ。すると息子は安心したのか、嬉々としてリカちゃんで遊び始めた。

そんなウチの5歳児くんの最近のお気に入りが、〝フワ〟。『スター☆トゥインクルプリキュア』に出てくる宇宙妖精が、フワなのだ。ニチアサ(『プリキュア』『仮面ライダー』『スーパー戦隊』と続く、日曜朝の番組編成のこと)を毎週録画しているため、必然的に『スター☆トゥインクルプリキュア』も観ている彼は、そこでフワにハマった。
ある日、玩具店で「大好き、ふわ!」などとランダムに喋る“おしゃべりフワ”なるおもちゃを見つけた息子は、「きゃわいい~~」と悶絶。そんな5歳児くんの姿を見て僕は、少々値段は高かったものの買ってあげることにした。以来、彼は枕元に“おしゃべりフワ”を置いて寝るようになった。

博品館で遊ぶ息子
博品館で遊ぶ息子
筆者提供

ある日、こんなことを息子に聞いてみた。

「フワ好きじゃん」

「すきだよ」

「プリキュアも好きじゃん」

「すきだよ」

「保育園のお友達に『ボク、プリキュア見てる』って言わないの?」

「いわないよ」

「なんで?」

「だってはずかしいし、それに……」

「それに何?」

「おんなのこからきらわれちゃうし」

恥ずかしいし、女の子にモテたいと。5歳にして、その胸中は複雑なようだ。

今はただただ「好き」に囲まれていて

また別の日のこと、週末に子どもとどこに遊びに行こうとスマホで調べていると、【○○住宅公園でプリキュアショー!】なる文字が。ヒーローショーには何度も行ったが、それは戦隊モノや仮面ライダーばかり。

これはと思い、息子を誘うと「いきたい! いきたい!」と大興奮。それで行ってみたのだが、来ているお友達は、多くが女の子。しかしそんなことを意にかいす様子もない息子は、食い入るようにショーに見ていた。そして途中、プリキュアたちが歌い踊り出すと、息子も振りを合わせて楽しくダンシング。

「えっ!? 振り覚えてたの?」。

そして、

「そらにかがやく きらきらぼし きゅあすたー!」

「てんにあまねく みるきーうぇい きゅあみるきー!」

えっ!? 変身のときの口上まで覚えてたの?

マクドナルドでリカちゃん人形をもらい、フワを買い与え、プリキュアショーに連れて行ったことで、息子はきっと「ほんとうのぼく」を見せてくれたのだ。

赤ちゃんのころから「これは男の子のだよ、女の子のだよ」と一切言わずに育ててきて、本当によかった。息子の「好き」や「興味がある」を縛ることは、当たり前だが親の僕だってしてはいけない。

「好き」を貫くには、なかなかの気合いと根性が要る。

でもそれは大人になってからの話で、今はただただ「好き」に囲まれていればいい。僕は、そのお手伝いをちょこっとするだけ。レインボーですら7色しかないんだ。キミの好きな色がそこにないなら、8色目を追い求めればいい。周りの目なんか、気にするな。「すき」と言うものがあるなら、パパと一緒にそれで遊ぼう。

大好きな“フワ”と。
大好きな“フワ”と。
筆者提供

■村橋ゴローの育児連載

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親も、子どもも、ひとりの人間。

100人いたら100通りの子育てがあり、正解はありません。

初めての子育てで不安。子どもの教育はどうしよう。

つい眉間にしわを寄せながら、慌ただしく世話してしまう。

そんな声もよく聞こえてきます。

親が安心して子育てできて、子どもの時間を大切にする地域や社会にーー。

ハッシュタグ #子どものじかん で、みなさんの声を聞かせてください。

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