新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年03月11日 08時35分 JST | 更新 2020年03月11日 20時20分 JST

「新型コロナの影響があっても、なくても」3.11追悼式を自粛せずに開くと決めた、石巻の委員長の思い

被災した人や大切な家族を失った人の心には、目処が付くわけがないですから。けじめなんて付けられないと思います、あくまでも「通過点」ですから。

がんばろう石巻の会
宮城県石巻市

2020年3月11日。東日本大震災から9年の月日が経った。

毎年各地で特別な思いを抱きながらこの日を迎える人がいるが、なんだか今年は少し様子が違う。

新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、被災地で主催される予定だった追悼式は続々と中止が決まり、その多くが献花台に自由に花を手向ける方式に変更を余儀なくされた。また、国も追悼式の開催を取りやめた。

規模を縮小してでも継続することを決断した人もいる。

宮城県石巻市に住む黒澤健一さん。石巻市で今日開催される『東日本大震災追悼3.11のつどい』の実行委員会で委員長を務めている。追悼式開催までの経緯と、震災から9年の今改めて思うことを聞いた。

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『がんばろう石巻』と書かれた看板

“完全中止はしない方向で行こう”、そう決めた理由

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍首相がイベントの開催の中止や規模縮小を要請したのは2月26日だった。

しかしそれ以前から、追悼式の実施については「中止」の判断を含め、すでに実行委員会で話し合っていたと黒澤さんは話す。

もちろん、中止の検討はしてきました。

 

石巻市も追悼式を中止にして献花方式に変えると発表がありましたから。

 

ただ、いろんな想定をした上で、“完全中止はしない方向で行こう”と決まったんです。

 

たとえ無観客でも、実施する想定で有志で準備をしてきました。

実際、イベントの規模は縮小した。

市民を巻き込んだワークショップの実施は取りやめ、恒例の灯篭も例年は来場者に直接メッセージを書き込んでもらうが、ウイルスの感染防止のため、事前に寄せられたメッセージをスタッフが代筆する。

全国的には今、イベントなどの行事の開催に対しては“自粛ムード”にある。実施という判断に、批判的な声や意見はなかったのだろうか。

心配の声はありましたけれど、「なんでこんな時にまでやるんだ」みたいな批判の声は無かったですね。

 

全国的な自粛のムードとは、少し違うのかもしれません。

 

というのも、やっぱり3月11日って、ご遺族の方にとっては震災で失った大切な家族の命日なんですよね...。

 

政府は国主催の追悼式を中止しましたけど、そこにあえて、コメントはないですね。そもそも、想いを込める形は人それぞれですから。

 

でも、各地で追悼の催しが中止になっているからこそ、小さくても想いを込められる場所が「1箇所くらいあってもいいよね」と思います。

実行委員会のメンバーは地域の人々で構成された約30人。決して大人数とは言えない人数で、その「想いを込められる場所」を絶やすことなく9年も作ってきた。

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追悼式の開催に向けた打ち合わせ

年々減ってゆくように感じる報道。「新型コロナの影響があっても、なくても」

3月10日、『3.11』の前日になってもコロナウイルス関連のニュースがラインナップの大半を占めていた。

もちろん現状を考えれば、コロナ関連のニュースを正しく報じることが今のメディアの果たすべき大きな役割と言えることは確かだ。

一方、東日本大震災に関する報道を目にする機会は、確実に年々減っているように感じる。

影響力の大きな東京キー局の報道番組の中には、以前は大々的にメーンキャスター総出で被災地に乗り込み取材内容を伝えていたのに、年々次第に地元放送局の中継に任せ、スタジオから伝えるような編成になったものもある。

メディアは「節目」を強く意識する。

震災から5年はメディアの多くで特別番組が組まれた。おそらく震災から10年2021年は、今年よりも多くの報道を目にすることになるだろう。

そんなメディアに対しては、今何を思うのだろうか。

新型コロナの影響があっても、たとえなくても、東日本大震災について伝える報道は少なくなってきていると感じます。

 

震災から9年が経って、追悼の気持ちや様々な想いを持った人は全国にいますし、遠方に住む人々が震災を忘れないためには、テレビなどのメディアに現状を伝えてもらうということの意味合いは大きい。

 

ただ一部には、あらかじめ自分たちが作った“ストーリー”を持ち込んで、報じようとするメディアもある。

 

メディアには影響力がありますから、報じてもらえることはありがたいことです。ただ一方で、気持ちを踏みにじるような報道だけはやめてもらいたいと思っています。

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「気持ちを踏みにじるような報道だけはやめてもらいたい」と黒澤さんは話す

“一定の目処が立つ”って、誰が、何をもって決めるのか。

政府は、震災から10年の節目となる2021年の開催をもって、国主催の追悼式を取りやめる予定だ。菅官房長官が、2月21日の記者会見で明らかにしている。

「震災を風化させてはいけない」と言いながらも、“一定のメド”が経ったという判断なのだろうか。

この政府の判断を、追悼式の運営を続ける黒澤さんはどう感じたのだろうか。

国がいう“一定の目処”と言うのは、道路などの基盤の整備といったインフラのことを指しているんですよね。そして、その視点できっと喋っている。

 

被災した人や大切な家族を失った人の心には、目処が付くわけがないですから。けじめなんて付けられないと思います、あくまでも「通過点」ですから。

 

だから、行政の言うことはある程度ドライに受け止めるしかないと思ってしまう部分があります。

 

自分たちにできることは、出来る範囲の活動をこれからも地道にやっていくということに尽きると思うし、その形の一つが、どんなに小さくても追悼式を続けていくことだと思っています。

 

それは、今年もそして震災から10年となる来年も変わることはないと思います。

今年の灯篭の点灯時間は、午後4時30分。追悼の思いが、一つ一つの灯りになる。

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2019年の『東日本大震災追悼3.11のつどい』での夜の灯篭