アメリカ、銃を買い求める長蛇の列 新型コロナめぐる「恐怖」から

アメリカで銃の売上げが急増 入店までに数時間並ぶことも
アメリカ・カリフォルニア州の銃器販売店にできた長蛇の列 2020年3月15日撮影
アメリカ・カリフォルニア州の銃器販売店にできた長蛇の列 2020年3月15日撮影
ASSOCIATED PRESS

新型コロナウイルスへの不安が高まる中、アメリカで売上げが上がっているのはトイレットペーパーや除菌剤だけではない。一部の銃や銃弾の販売店では、この数週間で多くの需要がみられ、店の在庫確保が難しいほどだという。

ハフポストUS版が国内の複数の銃販売店に電話したところ、多くの店舗では、客が多くて電話での質問に対応できない、との答えが返ってきた。

バーモント州の銃器販売店で働くミシェル・ブルノーさんは、この数週間で、特に銃弾の売上げが急増したと話す。そして製造会社が需要に見合う量を製造できない為、店の在庫確保が困難になっていると話した。

「多くの人は、スーパーで起こっている買い溜めを見て、自分が苦境で必要なものを確保しようとしているのだと思います。人々がどんな行動に出るかわかりませんから」と、このパンデミックに対しての法外な行動を懸念する。

また、需要が高まり価格が高騰する前に購入しよう、と買いだめする人もいるだろう、と加えた。

ニュージャージー州の銃器販売店では、今まで銃を保持していなかった人々からの関心の高まりが見られると言う。同州は、国内でも厳しい銃規制法がある州の1つで、初めて銃を入手するには州警察に申請し、許可の可否に数週間かかる。

「そのプロセスのことを何も知らず、みんな電話してくるんです。彼らは今すぐ入手したいので、その過程を知って苛立っています」

同店でも銃器の売上げは上がっており、銃弾は去年の同時期に比べ3〜4倍だという。

銃器の売上げは、銃乱射事件後に急増することが多い。特に、2012年のサンディ・フック・エレメンタリー・スクールでの事件後には、政府が銃規制を強めるのではという懸念から増加が見られた。

しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる銃器の売上げ急増は、社会不安によるものが大きいだろう、と銃規制のエキスパートでUCLA法学部教授のアダム・ウィンクラー氏は話す。彼は、銃販売店に列ができていることは驚くことではない事象だと話し、銃器販売店が営業している限り売上げは伸びるだろうと予測する。

「これは以前も見られた光景です。1990年代初期にロサンゼルス暴動が起こった際も、人々は銃を買い求めました。危機が迫り、社会秩序が失われると恐れるとき、武器を持ち身を守るという考えは昔からあるのです」

銃乱射事件後に銃器の購入を求めるのは、既存の銃保持者が備蓄を増やす目的が多いが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大においては、初めて購入する人が多くを占めるだろう、とウィンクラー氏は話す。

「人々は、社会崩壊の可能性に直面している時、銃を購入することがあります」と話し、2005年のハリケーン・カトリーナ後に起こった略奪や犯罪について言及した。

「これは、根本的な保身への需要があるということです。政府に社会の安定を頼っていたのが、突然政府がそれをできないとなると、人々は恐怖を感じるのです」

しかし、銃購入者の目的は保身であるのに反し、調査によると、銃がある家に住むことは死亡リスクが上昇する、という調査が出ている。また、2014年に発表された「内科学年報」によると、家庭内に銃がある場合、犯罪や自殺の発生確率が大幅に増加するという。

2月の銃器売上げの増加は興味深い事例だ。FBIの銃器購入のために行われたNICSシステムによるバックグラウンド・チェックは、銃の売上げ増加の信頼できる判断材料だが、この記事の掲載時に3月の数字は発表されていない

FBIのデータによると、2020年1月に行われたバックグラウンド・チェックの数は216万5094件以上で、昨年から25%の増加を記録した。そして2020年2月は280万2467件以上となり、同月前年比は36%増だという。

銃弾のオンラインショップAmmo.comは、新型コロナウイルスの増加に合わせ、売上げの増加が見られると話す。2月1日〜22日までの22日間と比べ、2月23日〜3月15日までの同期間には収益が309%も増加したという。

カリフォルニア州でも銃器販売店に行列ができており、客は入店までに数時間も並んでいる、とロサンゼルス・タイムズ紙は報じた。

また、ある男性は「ハンドガンを買いに来ました。家があり、家族がある。もし状況が悪化したら、保護するものが必要です」と同紙に話した。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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