安倍首相「総理答弁が改ざんのきっかけとは赤木さんの手記に書かれていない」 森友再調査を否定

森友学園問題。自殺した職員の手記が公表されたことを受けて質疑が続いた。安倍首相と麻生財務相は再調査を改めて否定した。
答弁する安倍晋三首相、麻生太郎財務大臣
答弁する安倍晋三首相、麻生太郎財務大臣
時事通信社

森友学園への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、自殺した同省近畿財務局の男性職員の手記と遺書が公表されたことを受け、安倍晋三首相は3月23日の参議院予算委員会で、「(自身の)国会答弁が決済文書の改ざんのターニングポイントになったとは手記に書かれていない」と述べ、再調査の必要性を改めて否定した。

「改ざんは佐川宣寿元局長の指示」 手記を受け野党が追及

手記は、3月18日発売の「週刊文春」に全文が掲載された。財務省近畿財務局で勤務し、その後自殺した赤木俊夫さん(当時54)が記したもので、決済文書の改ざんは「佐川宣寿元財務省理財局長の指示」で行われたと書き残していた。

同日、赤木さんの妻が国と佐川氏に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こし、マスコミ各社にも手記が公表された。

近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書=3月18日、大阪市北区
近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの遺書=3月18日、大阪市北区
時事通信社

手記の公表を受け、立憲民主党など野党4党は再検証チームを発足。真相解明のため改めて追及を行うことを表明し、23日の参院予算委で、立憲民主党の福山哲郎氏と社民党の福島みずほ氏が手記について質問した。

「再調査を行うことは考えていません」

手記への見解を問われた安倍首相は、「真面目に職務に精励していた方が自らの命を絶たれるという大変痛ましい出来事であり、胸が痛む思いです。改めてご冥福をお祈りしたいと思います」と述べた上で、「財務省においては、麻生大臣の元で事実を徹底的に調査をし、明らかにした」と発言。

「捜査当局により捜査も行われたものと承知している。もとより改ざんはあってはならず、今後二度とこうしたことがないよう再発防止を徹底していく」と述べた。

福山氏は麻生太郎財務大臣にも、手記を読んだか尋ね、再調査の必要性について質問した。

麻生氏は、「この手記に基づいて、私どもが見た段階では新しい事実が判明したとは理解していない」と回答。「手記と調査報告書に大きな齟齬はないと思っております。実質的な違いがあるとは思っておりませんので、再調査を行うことは考えていません」と、再調査の必要性を否定した。

「総理答弁が改ざんのターニングポイントとなったとは赤木さんの手記に書かれていない」

安倍首相は2017年2月、「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁し、財務省での文書改ざんはその直後に始まった。

再調査は必要ないとする麻生氏、安倍首相の答弁を聞いた立憲民主の福山氏は、「本当に冷たい」と批判。

「安倍首相は、2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。<中略> この2人(編集部注釈※麻生太郎氏、安倍晋三首相)は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」とする赤木さんの妻のコメントを読み上げ、「真相究明に改めて乗り出すと決意をいただけませんか」と安倍首相に質問した。

安倍首相は、「総理答弁が決済文書改ざんのターニングポイントとなったとは、赤木さんの手記に書かれているのではないと改めて申し上げておきたい。これは週刊誌の記事において記載されているものと承知している」と主張。

「奥様がそういう発言をされたというのは今初めて承知をしたところでございますが、改めて申し上げますが、これは赤木さんが手記で書かれたことではない」と強調した。

その上で、「財務省の調査報告書において、平成29年2月以降の国会審議で森友学園案件が大きく取り上げられる中で、さらなる質問に繋がる材料を極力少なくすることが下の目的だったとする報告がなされた」と言及。「政府として調査するかしないかは、先ほど財務大臣が答弁した通り」だとして、再調査を改めて否定した。

参院予算委員会で質問する立憲民主党の福山哲郎幹事長=3月23日、国会内
参院予算委員会で質問する立憲民主党の福山哲郎幹事長=3月23日、国会内
時事通信社

安倍夫人の「いい土地ですから」発言「事実として確定はしていない」

福山氏はさらに、「未だに安倍昭恵夫人が森友学園を視察した直後の、4月28日の近畿財務局と森友学園の打ち合わせの交渉記録、相談メモが出てこない」と指摘。

財務省の報告書によると、打ち合わせの際、森友学園側は「安倍昭恵夫人から『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と発言したという。この点について安倍首相は、「『いい土地ですね』と妻が言っている、と(森友学園側が)言っているわけですよね。それは事実として確定しているわけではないと改めて申し上げておきたいと思います」と主張した。

「いわば籠池さんがそう言っている。事実として確定はしていないですよね。福山さんは確定している事実として仰っていたけど、そうではなくて、籠池さんがそう言っているということを紹介しているだけに過ぎない。それはそうなんじゃないですか」

政治的責任は?

社民党の福島みずほ氏も質疑応答で、改めて「安倍首相の答弁が改ざんのきっかけになったのではないか」と追及。

安倍首相は、「きっかけということは赤木さんの手記には書かれていない。それについて、福島さんは何か混同しているのではないか」と繰り返し否定した。

さらに福島氏は、「総理を守るために佐川局長が改ざんの指示をしました。その結果、赤木さんは死に追いやられました。そのことの政治的責任をどう考えますか」と質問。

安倍首相は、「総理を守るために佐川さんが指示をした。そういう事実は全く認められていない」とし、「事実に基づく質問ではないので、お答えのしようがない。福島さんの思っていることを述べられたのだろうと思っております」と回答を避けた。

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