多様性、ジェンダー…現代社会を映すアニメ10作品、NetflixとAmazon Primeで選んでみた

アニメ!アニメ!などでも執筆する、映画ライター杉本穂高さんが選ぶ、外出自粛の今こそ見たいアニメ作品10選です。

新型コロナウイルスの感染拡大がいよいよ日本国内でも本格化してきました。東京や大阪など大都市では不要不急の外出自粛が呼びかけられていますが、家にこもってばかりで退屈している方も多いかもしれません。

そこで、自宅で気軽に楽しめる動画配信、その代表的プラットフォームであるNetflixとAmazon Primeから今見てほしいオススメの国内アニメ作品をセレクトしてみました。

多様性をテーマにしたもの、既存のジェンダーロールや価値観に挑む作品、個性派監督によるものなど、映画やドラマ同様、アニメもまた、いろんな価値観を描いているのだということが伝わると嬉しいです。

Netflixのおすすめ

板垣巴留さんの同名漫画が原作。動物の擬人化によって、人種差別や異なる人々との共存の難しさを描いた日本版『ズートピア』とも言える作品。

肉食獣と草食獣が共同で生活する街の全寮制学校を舞台に、種としての本能に対する葛藤、異なる種族との友情と愛だけでなく、どうあってもわかりあえない部分をも描き、多様性を認め合うことの大切さと難しさに真正面から向き合った作品です。

日本のアニメ界随一の個性派監督、幾原邦彦監督によるオリジナルアニメ。

3人の中学生が突如現れたカッパ型生命体にカッパに変身させられてしまい、もとに戻るためにゾンビと戦うというあらすじ。

独特の映像センスで知られる幾原監督ですが、真骨頂は固定的なジェンダーロールからの解放や、セクシャルマイノリティを特別視しない眼差しにあります。突飛なアイデア満載の中にも現代社会を鋭く見つめる視線を感じさせる作品です。

京都アニメーションの代表作の1本。

戦争で両腕を失い義手となった少女、ヴァイオレットが手紙の代筆屋として働くことで、人間の感情を取り戻していく物語。

主人公が様々な想いを抱えた依頼者とふれあい、人々の心を言葉を通じてつないでゆきます。言葉が氾濫する現代に、想いを伝えるシンプルな言葉の美しさと大切さを描き、現代人が忘れがちな大切な何かを思い出させてくれる感動的な作品です。

4月24日から劇場版の公開も予定されています。

男子フィギュアスケートを題材にしたオリジナルアニメ。

大のフィギュア好きとして知られる漫画家の久保ミツロウさんと監督の山本沙代さんの原案で、メンタルの弱さから実力を発揮しきれないでいた主人公が、ロシアのトップ選手をコーチに得たことによって才能を開花させてゆく過程を描いています。

アニメーションで描かれたスケーティングのシーンの美しさに圧倒されます。愛についてエロスとアガペーの観点から解釈し、スケートで表現するというアイデアも素晴らしく、スポーツものでありながら、愛の物語としても秀逸です。

『映像研には手を出すな!』も話題になった湯浅政明監督の2017年のアニメ映画。世界最大のアニメーション映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門で最高賞にあたるクリスタル賞を受賞した作品。

寂れた漁港を舞台に、音楽好きな中学生男子と天真爛漫な人魚の交流を通じて、好きなものを好きと言える素直な気持ちの大切さを描いた作品です。

湯浅監督は今後も小松左京さん原作の『日本沈没2020』や、『獣になれない私たち』の脚本家、野木亜紀子さんと組む『犬王』など期待の作品が目白押しで、今最も注目されるアニメ監督の一人です。

Amazon Primeのおすすめ

週刊少年マガジンで連載中の猪ノ谷言葉さんの同名漫画を原作にしたTVアニメ。

低い身長ながらモデルを目指す少女と、貧しい家庭に生まれたファッションデザイナー志望の少年が、ともにハンデを乗り越えながら夢を追いかける物語です。

物作りの情熱を描くだけでなく、業界の過酷な労働への疑問を呈したり、モデルというルックスが重視される世界の価値観を変えていこうという視座を持った意欲的な作品です。

宇宙よりも遠い場所とは南極のこと。いしづかあつこ監督による、女子高生4人が南極を目指すオリジナル作品。

ニューヨーク・タイムズが2018年の最も優れたテレビ番組海外番組部門の10本に選んだことでも話題になりました。

4人が様々な想いを抱え、南極に向かう民間観測隊に参加し、成長してゆく姿を描いており、近年とりわけ優れた青春アニメの一本です。

コロナウイルスの感染拡大で書店の売上が増加しているというニュースもありましたが、外出自粛を機にたくさん本を読もうとされている方も多いのかもしれません。

この作品は、本が大好きな女性が、本のない異世界に転生してしまい、本がないなら自分で作ってみせると奮闘する姿を楽しく描いた作品です。

本が読めることのありがたみを強く感じるとともに、人間の歴史の中で本が果たしてきた役割についても考えさせてくれる作品です。2020年4月より第二期の放送が予定されています。

日本の子どもたちに勇気を与え続けてきたプリキュアシリーズの15周年を記念し、『HUGっと!プリキュア』とシリーズ1作目の『ふたりはプリキュア』が共演した作品です。

従来のジェンダーロールに縛られない価値観を広めてきたシリーズの素晴らしさが詰まっている一本です。

現在、Amazonプライムでは『プリキュア』映画シリーズが多数配信中です。大人にも身につまされる内容の多いシリーズです。

3月に公開予定だった『映画 ドラえもん のび太の新恐竜』が、8月7日に公開延期となりましたが、春はドラえもん映画を観ないと始まらないという人も多いのではないでしょうか。

本作は記念すべき「映画ドラえもん」第一作、のび太と恐竜のピー助との交流を描いています。8月に公開予定の『のび太の新恐竜』の予習も兼ねて原点の本作を見直してみるのもいいかもしれません。

また、本作以外にも「映画ドラえもん」シリーズが多数Amazonプライムで配信されています。

(文:杉本穂高/編集:毛谷村真木

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