暴力、監視…自宅が危険な場所になっている。DV被害女性たちにとっての外出自粛【新型コロナ】

支援団体が国に要望書を提出。自粛が広まる中でも相談窓口を閉じないことや、DV被害者らを想定した上での対策を求めている。
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外出自粛や在宅勤務が推奨されるようになり、虐待やDVの被害者にとって、自宅がより危険な場所になっている。

「夫がストレスから暴力を振るうようになった」

「暴力を振るう夫が在宅するようになった。避難もできず絶望している」

DVの被害者を支援する団体には、こうした声が複数寄せられている。

NPO法人「全国女性シェルターネット」は3月30日、国に対し、DVや虐待の相談窓口を閉じないことなどを求める要望書を提出した。

今、何が起きているのか。

在宅ワークや休校のストレスが家庭内の弱者に

要望書では、数々の悲惨な実態が「すでに起きている状況」として、当事者や支援者からの悲痛な声を綴っている。

「夫が在宅ワークになり、子どもも休校となったため、ストレスがたまり、夫が家族に身体的な暴力を振るうようになった

「DV夫と家庭内での別居中。発達障害の子どもがいて、離婚できない状況。学校が休みになり、学童や子ども食堂も休みになり子どもが家にいることで、夫とから妻、夫から子どもへ暴力が増え、妻も子どもへの暴力をしてしまう状況が起きている

これまで被害者にとって、学校に行って家庭から離れたり、加害者が仕事で家を空けたりしている時間は、自分を守ることができた。しかしその「逃げ場」がなくなってストレスも高まる中、家庭内での暴力、虐待が悪化し、暴力の連鎖も起きていることが分かる。児童相談所への相談も増加しているという。

さらに、これまで行っていた相談や計画していた避難が難しくなっている状況もある。

「かねてからDVで母子で家を出ようと準備していたが、自営業の夫が仕事がなくずっと在宅し、家族を監視したりするようになったので、避難が難しくなり、絶望している

「相談センターの面談が休止になって電話相談のみになっているが、自営業の夫からのDVを相談中の被害者が夫と子どもが在宅しているので電話での相談は困難と思われ、連絡が途絶えている

全国女性シェルターネット共同代表の北仲千里さんは「経済的な不安によるストレスが暴力を引き起こしている面もある」と、感染拡大がもたらした景気悪化の影響も指摘。「こうした事例はこれからも増えるだろう」と危機感を募らせる。

北仲さんによると、すでに面談での相談を取りやめたり、男女共同参画センターなどが閉鎖される自治体も出ている。今後も感染拡大が続けば相談場所が限られていき、緊急の場合であっても対応ができなくなることも懸念されるという。

相談窓口を閉じないで

要望書では、国に以下のことを訴えている。

・緊急の状況下でも、DVや虐待の相談窓口を閉じない

被害者が市町村や民間シェルターに逃げ込んだら自動的に一時保護を開始するなど、柔軟な対応を

低所得者への一時給付金などを今後国が行う場合、住民票を移さないままDVを理由に家を出ている人が受け取れない危険がある。世帯単位で行わざるを得ないとしても、相談証明があるなどDV被害者だと分かる場合には給付するなどの措置を

・生活保護の適用拡大

さらに、DV被害から逃れるために入るシェルターなどで感染者が出た場合の情報開示についても注意を促した。

これまで感染者が出た施設については場所が詳しく報道されていることに触れ、「メディアで詳しく報道されると秘匿しているシェルターの場所が知られてしまう危険がある」とし、配慮を求めている。

この記事にはDV(ドメスティックバイオレンス)についての記載があります。

子どもの虐待事件には、配偶者へのDVが潜んでいるケースが多数報告されています。DVは殴る蹴るの暴力のことだけではなく、生活費を与えない経済的DVや、相手を支配しようとする精神的DVなど様々です。

もしこうした苦しみや違和感を覚えている場合は、すぐに医療機関や相談機関へアクセスしてください。

必ずあなたと子どもを助けてくれるところがあります。

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