新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年04月03日 12時19分 JST | 更新 2020年04月03日 12時41分 JST

「#ムラをあけて!」オリンピック選手村の活用を求める署名開始。新型コロナで住まいを失った人々のために

感染拡大による経済への影響で、住まいや仕事を失う人がすでに出ている。「リーマンショックの時のような支援はできない」中で、選手村の活用を求めた署名が始まった。

もやい提供
もやいの協同団体による弁当配食

新型コロナウイルスの感染拡大、それに伴う経済への影響は深刻さを増している。帝国データバンクは、4月1日時点で新型コロナウイルスに関連する倒産が全国で31件あったと発表。厚労省のまとめでは、1月末からの2ヶ月の間に、観光業や宿泊業を中心に1000人以上が雇い止めや解雇にあったという

「派遣社員として提供された寮に住み働いていたが、契約終了後に次の仕事が見つからず、住まいがない。貯金も尽きて、ネットカフェにも行けなくなった」

「自営業だったが、仕事がなくなり収入がゼロ」

こうした相談が、貧困問題に取り組む支援団体に増えている。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」は4月、週2回の緊急相談会を開くことを決め、「#ともに生きぬく」として、クラウドファンディングも始めた

理事長の大西連さんは訴える。

「感染拡大が続く中、リーマンショックの時と同じような支援はできない。今後困窮者が増えることが予想され、感染症対策をした上での支援が待ったなしだ」

仕事がなくなり、生活保護へ

経済状況の悪化は、より弱い立場の人の生活から脅かす。

ある男性は、感染拡大で多くのイベントが中止になったことで、会場設営や撤去の仕事がなくなった。

イベント関連の仕事を得ていた企業や労働者は他の現場に流れ、一般の建築現場への労働力が供給過多に。押し出されるように、年齢が高い、技術が低いなど、末端にいる人から仕事を得られなくなっているのだ。もやいに訪れた一人親方として建築現場で働いていた男性も、生活保護につながった。

派遣社員として提供された寮に住みながら働いていた人は、仕事と同時に住まいも失うことになる。契約が切れて住まいも失い、次の仕事が見つからず、仕事を探しながらネットカフェで寝泊りをする人も。やがて貯金も底をつき、「こんなことになるとは…」ともやいに相談に訪れた人もいるという。

日本で初めて新型コロナウイルス感染症の患者が報告されてから2ヶ月半余。

「すごい速さでここまで影響が出ていますが、3月まではなんとかもった、雇用を維持した、という企業も少なくない。3月末から雇い止めや派遣切りが増え、工場の操業停止なども広がり、生活に困窮する人がどんどん出てくるでしょう」

大西さんはそう分析する。

NHKによると、すでに自動車メーカー8社すべてが、国内生産の一部、またはすべてを一時的に止めることを決めている。

経験したことのない「感染拡大下」での支援

もやいが行っているクラウドファンディングのウェブサイトより

大西さんがもっとも懸念しているのは、リーマンショックの時と違う、感染症による「支援のしづらさ」があることだ。

リーマンショック当時、雇い止めや派遣切りなどで多くの人が仕事や住まいを失ったことを受け、支援団体が「年越し派遣村」を東京・日比谷公園に開設。食事や住まいを求める人であふれ、厚生労働省は省内の講堂を緊急解放した。しかし感染拡大の中では、多くの人を集めるような方法で支援をすることも、講堂のような場所で寝泊りすることも難しい。

もやいでは4月4日から緊急相談会を開き、宿泊費や生活費の支援、公的支援利用のためのサポートなどを行うが、感染拡大が続けば開催が危ぶまれる。一方で経済状況がより悪化し、居場所を失う人は増える可能性が高い。

東京都の2018年の調査では、都内のいわゆる「ネットカフェ難民」は約4000人いるが、感染拡大が止まらなければネットカフェや飲食店などが営業を停止する可能性もある。さらに地方で仕事や住まいを失った人が仕事を求めて東京に移動する可能性もあり、「居場所を失う人が一気に数千人出ることになる」と大西さんは危機感を募らせる。

「#ムラをあけて!」

こうした状況からもやいは、東京都中央区にあるオリンピック選手村の一部を住まいを失った人たちのために開放するよう求める署名活動「#ムラをあけて!」を始めた。

東京都の小池百合子知事はテレビ番組で、選手村を軽症患者の滞在施設にすることに言及。こうしたことも踏まえ、大西さんは「棟で分ければ感染症対策も可能ではないか。柔軟に対応すべく、検討してほしい」と求めている。

合わせて必要だと感じるのは、国が積極的かつ具体的なメッセージを出すことだ。

「『経営者や労働者に対して公的支援を行う』『困窮者は、生活保護や貸付などの制度を使ってほしい』こういうことを国がはっきりと言わなければ経営者は雇用をなんとか維持しようとは思えないし、生活保護を受ける人に批判が集まりかねません。『国民を支えるのだ』というはっきりしたメッセージを出してほしいと思います」

もやいの緊急相談は、4月中の火曜と土曜に開催。火曜は午前11時~午後5時にもやい事務所(新宿区山吹町362番地)、土曜日は午後2時~4時に新宿都庁下で行われる。