「心身に傷を受けた事実は消せません」。大津園児死亡事故から1年、保育園側が未来へ示した決意

「私たちにできることは、亡くなった命や事故のことを決して忘れず風化させないことだと思っています」

滋賀県大津市で保育園児の列に車が突っ込み園児2人が死亡した事故から、2020年5月8日で1年となるのを前に、亡くなった園児が通っていた保育園を運営する社会福祉法人「檸檬会」が5月7日、声明文を発表した。

声明では、「多くの子どもたちや保護者・職員・関係者が心身に傷を受けた事実は消せません」などと綴られている。

保育園児らの列に車が突っ込んだ事故現場で手を合わせる女性=5月9日午前、大津市
保育園児らの列に車が突っ込んだ事故現場で手を合わせる女性=5月9日午前、大津市
時事通信社

事故が起きたのは、2019年5月8日。大津市の交差点で信号待ちをしていたレイモンド淡海保育園の園児の列に車が突っ込み、園児2人が死亡し保育士を含む16人が重軽傷を負った。

この事故をめぐっては2020年4月、交差点に車を進入させた大津市の女性が「安全確認を怠り事故を引き起こした」などと指摘され、裁判で禁錮4年6か月の実刑が確定したばかりだ

事故後すぐに開かれた保育園側の記者会見では、泣き崩れる園長に対してメディアが質問を続けるなどしたことで批判も出ていた

記者会見で涙する「レイモンド淡海保育園」の若松ひろみ園長(左)。右は社会福祉法人檸檬会の前田効多郎理事長=5月8日、滋賀県大津市
記者会見で涙する「レイモンド淡海保育園」の若松ひろみ園長(左)。右は社会福祉法人檸檬会の前田効多郎理事長=5月8日、滋賀県大津市
時事通信社

保育園側 「 心身に傷を受けた事実は消せません」

5月8日で事故から1年となるのを前に、保育園を運営する社会福祉法人「檸檬会」は、コメントを発表。

「事故以来、たくさんの方々に支えられ、きょうも子どもたちの笑顔があふれています」としたものの、「しかし、事故により2つの尊い命が失われ、多くの子どもたちや保護者・職員・関係者が心身に傷を受けた事実は消せません。(中略)私たちにできることは、亡くなった命や事故のことを決して忘れず風化させないことだと思っています」と綴られていた。

その上で、「また、全てのドライバーにおかれましては、あのような悲しい事故を二度と起こさないためにも、細心の注意を払って安全運転に努めていただきますことを心よりお願い申し上げます」と改めて訴えた。

「檸檬会」では、事故が起きた5月8日を「いのち・安全の日」と定め、運営するすべての保育園で散歩コースの安全点検を一斉に行う日にしたという。

社会福祉法人「檸檬会」の声明全文は、以下の通り。

2019年5月8日、当法人が運営するレイモンド淡海保育園(大津市)の園児の散歩中に発生した交通事故から今月で一年が経とうとしております。

ご遺族の皆様に心より哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われたすべての方々にお見舞い申し上げます。

事故以来、レイモンド淡海保育園はたくさんの方々に支えていただき、今日もたくさんの子どもたちの笑顔が溢れています。しかしながら、あの事故により二つの尊い命が失われたことや、多くの子どもたちや保護者・職員・関係者の方々が心身の傷を受けた事実を消すことはできません。


こうした中、私たちにできることは、亡くなった命や事故のことを決して忘れず風化させないことだと思っています。そのため檸檬会では5月8日を「いのち・安全の日」と定め、運営するすべての保育園等において、毎年散歩コースの安全点検を一斉に行う事と致しました。

また、5月を救急訓練月間とし、全園において園外での怪我等を想定した初動訓練を実施致します(※)。

また、すべてのドライバーの皆様におかれましては、あのような悲しい事故を二度と起こさないためにも、細心の注意を払って安全運転に努めていただきますことを心よりお願い申し上げます。


なお、お亡くなりになったお子様のご家族からの切なるご要望を尊重し、子どもたちや保護者の皆様、関係者の皆様にご参加いただく行事は執り行いません。報道関係者各位におかれましては、ご遺族や保護者、保育園への取材、撮影等は自粛下さいますよう強くお願い申し上げます。

社会福祉法人 檸檬会 理事長 前田 効多郎

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