『12人の優しい日本人』リモート読み合わせに反響。「小劇場」守るための基金も始まる

Zoomを使ったリモートでの読み合わせ。「小劇場」出身の作家や俳優は、日本の演劇文化を支える存在でもある。
YouTube『12人の優しい日本人 を読む会(前編)』より
YouTube『12人の優しい日本人 を読む会(前編)』より
HuffPost Japan

『12人の優しい日本人』をZoomで読み合わせ

5月6日、三谷幸喜さんのコメディ作品『12人の優しい日本人』を役者たちがリモートで演じる『12人の優しい日本人を読む会』がYouTubeにて生配信され、5月末日までアーカイブ視聴が可能だ。新型コロナウイルスによる外出自粛が続く今、本作は、「演劇」という表現において、デジタル上で可能な創作方法を模索している。

本作は、三谷幸喜さんが1990年、劇団「東京サンシャインボーイズ」で活動していた頃に書き下ろした戯曲作品。今回、演出家・冨坂友さん(アガリスクエンターテイメント)が演出を担当し、Zoomを通してリモートで読み合わせが行われた。

陪審制度を題材にしたハリウッド映画『十二人の怒れる男』をオマージュした本作は、ある裁判の陪審員として、職業も性格も、裁判へのやる気も異なる12人の一般市民が様々な議論を繰り広げる法定劇・密室劇。三谷さんの初期の代表作で、その後映画化、再上演もされている。

発起人の近藤芳正さんはじめ、本作初出演の吉田羊さんなどの演者が、陪審員の1号〜12号として登場し、YouTubeの画面は12分割で進行する。常に12人の顔が映し出された状態で、Zoomだからこそできる演出も取り入れている。

前半1時間28分、後半58分と計2時間半におよぶ長尺の配信時間ながら、前後編あわせてリアルタイムで2万8000人が視聴していたという。吉田羊さんは、配信後自身のInstagramにて、その裏側を公開した。

小劇場エイド基金が始動。演劇文化を支える作家・役者

三谷さんの「東京サンシャインボーイズ」、冨坂さんの「アガリスクエンターテイメント」は、「小劇場」と呼ばれる劇場で作品を上演してきた。

そして『12人の優しい日本人』に出演している俳優の多くも、「小劇場」出身の俳優だ。今では、舞台以外にも、ドラマ・映画と幅広く活躍しており、その名は広く知られている。

新型コロナウイルスの影響で、小劇場は2月末から公演の中止・延期が続き、閉館の危機にさらされている劇場もある。そんな小劇場を守るために始動したのが「小劇場エイド基金」だ。

「小劇場エイド基金」が始動。支援金4,000万円を目指す。
「小劇場エイド基金」が始動。支援金4,000万円を目指す。
小劇場エイド基金

冨坂さんも賛同人の一人である「小劇場エイド基金」は、クラウドファンディングプラットフォーム・MOTION GALLERYで立ち上げられた。目標金額を4,000万円に設定し、300席以下の小劇場を対象に、1劇場100万円の分配を目指している。支援金額に応じたリターンには、小劇場を使って公演を行う権利や、ステージチャンネルの有料会員資格などが用意されている。

声明文では「独特の文化である小劇場で鍛えられたたくさんの才能が、大劇場での演劇をはじめ、いろいろな分野で活躍しています。(中略)そんな才能を育む場である小劇場が、人が集まれないことで存続の危機に瀕しています」と小劇場の重要性を説明し、「3月、4月、5月の間本来あるべきだった収入が絶たれた状態に対して、まず緊急での支援が必要です」と訴えている。

支援金は、5月7日16時時点で590万円を達成。6月5日まで支援を募集している。

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