今でも夢に見る、痴漢にあった“あの日”のこと。どうするのが正解だったんだろう

大げさなんだけど、その状況を何度も夢に見てしまう。だから私は、書き留めておくことにしました。
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Dutch Doscher / EyeEm via Getty Images

(文:田中伶)

※この記事はフラッシュバックを起こす可能性がありますので、ご注意ください。

大げさなんだけど、どうするのが正解だったのか未だに分からないことがあって、その状況を何度も夢に見てしまうので書き留めておくことにしました。

数年前に後輩の女の子と二人で夕方の山手線に乗ったときのこと。その後輩はそれはもう純粋で、男性経験も(私が知る限り)なく、好きな人の話をしようとしただけでキャーと顔を赤らめてしまうような可愛い女の子だった。

そんな彼女と二人並んで座った電車で、痴漢に出くわした。

私たちの目の前に立った中年のスーツ姿の男性は仕事帰りのリラックスした様子で、脱いだジャケットをお腹の前あたりに手で持って、という雰囲気を装って、明らかにこちらを意識しながら下半身を露出していた。

私は直感的に、あ、後輩に気づかれたくないな、と思った。

ちらちらと卑怯なやり方で犯罪行為を犯す男性を大声で叫んで捕まえてやりたい気持ちを抑えて、彼女の気をそらそうと必死に喋りまくった。いつもに増してテンション高めに質問したり、後輩の視線を目の前に向けるまいとなんらか努力して、死ぬほど長く感じたひと駅分の時間をやり過ごした。

電車がホームに到着するやいなや、その駅で乗り換える後輩が挨拶をして立ち上がる。その笑顔から見て、目の前の男性が痴漢をはたらいていたことには気付いていなさそうで、ほっと胸をなでおろした。

男性は私が顔を見上げるよりも前にそそくさと電車から降りて人混みの中に消えていった。向かいのホームの電車待ちの列に消えていったように見えたけれど、また別の場所で、別の人をターゲットにするのだろうか?

この出来事は、自分が犯罪行為を目の前でスルーした事案として記憶に強く残った。ごまかそうと必死な私の反応を見てこの犯罪者は楽しんでいたのかもしれないけど、そんなことよりも可愛い後輩を守らねばという咄嗟の気持ち。

なんとか切り抜けて安心したような気持ちと、悔しさと腹立たしさ、そしてどうするのが正解だったんだろうという疑問。

いまだにあの状況を夢に見る。

もっと良い方法があったんじゃないかと思う。

(2020年05月14日田中伶さんのnote掲載記事「どうするのが正解だったのか、未だに分からないこと」より転載。)

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