黒人ファミリーの一員になった私。夫の密かな習慣で、黒人が置かれている立場に気づいた

近くのコンビニに行くのにも髭を剃り、髪を整える。町中や商店では突発的に走らないようにしている。それは黒人である夫が「自分が危険人物ではない」ことを世間に示すためだった。
ウィリアムズ友美さんが、夫のウィルさんと息子のマリカ君と誕生日を祝う=ウィリアムズさん提供
ウィリアムズ友美さんが、夫のウィルさんと息子のマリカ君と誕生日を祝う=ウィリアムズさん提供
ウィリアムズさん提供

近くのコンビニに行くのにも髭を剃り、髪を整える。
町中や商店では突発的に走らないようにしている。
それは黒人である夫が「自分が危険人物ではない」ことを世間に示すための密やかな「処世術」だった。

新型コロナウイルスのため推奨されているマスクさえ、「恐怖心を与える。誤解されたくない」と着けるのをためらった。その全てが、警察から目をつけられやすいことを避ける「自衛策」だという。

アメリカ・バージニア州で、黒人の夫ウィルさんと生活するウィリアムズ友美さん(34)は、結婚した後、夫がわざわざこうしたことを気にしていることを知った。

夫ウィルはどこに行くにも必ず身なりを整えて出かけます。どんなに遅い時間でも、近くのコンビニに行くにも服一式全部着替えて、髭を剃り、髪を整え、誰から見てもクリーンな状態じゃないと絶対にでかけません。「なんでこんなに見た目気にするのかな?自意識過剰なのかな?」と思っていましたが、本人に聞くと、
「どの人が見ても、僕は危険人物ではありません!と服装で主張するのが大事だから。特に警察から目をつけられやすい、黒人以外から見たらthug(チンピラ)的な格好は避けるべき」との返答でビックリしました。ちなみにコロナが流行り始めた時もマスク着用を嫌がるので、理由を聞くと「黒人がマスクすると恐怖心しか与えない。誤解されたくない。」とのことでした。

住まいは、首都ワシントンDCに隣接する町で、様々な人種がおり治安も良い。ウィリアムズ友美さんは、そんな町で3年過ごす中、アメリカ社会での黒人の立ち位置を肌身に感じてきた。

息子のマイカくんが生まれると、義母から「黒人としての振る舞い方」を孫に伝えてと言われた。

マイカくん(4)がちよち歩きをする2歳の頃だ。「マイカにはちゃんと警察の前では、抵抗しない、手は見えるところに置く、突発的な動作をしないってことをちゃんと教えてあげてね」。その義母の言葉の意味は最初わからなかったが、アメリカの生活を重ねる中でわかってきたという。

ウィリアムズ友美さんは、沖縄出身。日本にいるときは、ロサンゼルスであったロドニー・キング事件など差別をめぐる運動をみても「大変そう、でも頑張ってという『対岸の火事』とも言えるものだった」。だが、結婚して、「黒人ファミリー」の一員となり子供が生まれると、黒人が受ける視線が肌身に感じられた。

それでも、日本人である自分は当初「Black Lives Matter ってどういうことだろう?全人種みんなの命が大事」なのではと思っていたという。しかし、ウィルさんや義両親、友人と対話の中で、初めて心の底からBlack Lives Matterの意図を理解できたという。

だがそんな時、「アメリカでの黒人への差別は、他の人種にわかってもらえないという諦めも感じられた」。
熱い世間の運動の傍で、彼らの言葉の底流に「『諦め』が漂うことに耐えられなかった」という。だからこそ、日本人である自分が動く意義があると思ったと語る。

「私は黒人にもなれないし、苦しみは分からないと思うけれど、黒人ファミリーの一員になった日本人の目線でBlack Lives Matterについて伝えたいと思いました」。

友美さんは、今回のBlack Lives Matter運動をみて考え抜き、今回facebookで発信することにした。「ニュースや話題は本来の抗議の意味よりも、暴動ばかりに注目が集まっているように感じます。決して暴力を肯定してるわけではないのですが、暴動の背景にも思いを巡らせてほしい」と話している。
(ハフポスト日本版・井上未雪)

オンラインインタビューに答えるウィリアムズ友美さん(右)
オンラインインタビューに答えるウィリアムズ友美さん(右)
HuffPost Japan

注目記事