「飼育員へのオンライン餌やり」桂浜水族館の奇策について、担当者に聞いた

「飼育員のファンもいる」「ピンチじゃなくてチャンス」と話す担当者。Twitterでの発信が強みになり、投げ銭が多く集まった。
カワウソ、アシカ、トドに飼育員が混ざるというラインナップ
カワウソ、アシカ、トドに飼育員が混ざるというラインナップ
桂浜水族館へのオンライン餌やりを募るサイトより

高知市にある桂浜水族館が、6月6日に行われたイベント「親子でオンライン体験フェス」出展に合わせて企画した「オンライン餌やり」が話題を呼んでいる。なんと、餌やりできる動物にはカワウソ、アシカ、トドに混じって飼育員も入っているのだ。

なぜ飼育員が入っているのか…?飼育員の餌とは…??企画に関わった飼育員の丸野貴也さんに聞いた。

4月の売り上げが96%減

「親子でオンライン体験フェス」は、新型コロナウイルス感染症の流行により外出が難しくなった親子向けに、オンラインで様々なワークショップを提供するイベント。リトミックや料理、石鹸づくりなど様々なジャンルのものが開催されており、桂浜水族館は5月に続き2度目の参加となる。

新型コロナウイルスの感染拡大により、全国の観光地は大きな影響を受けている。桂浜水族館でも3月から来館者が少なくなり、4月13日から5月10日までは休館。4月の売り上げは前年比で96%減少し、再開後も厳しい状況が続いているという。こうした中、少しでも運営の助けになればと、オンライン餌やりの実施を決めた。

フェス自体は無料で参加可能。オンライン餌やりは、「投げ銭」として動物ごとに値段を決めて前日からインターネット上で参加者を募り、クレジットカードなどで決済してもらう。オンライン会議システムを利用して行うフェスの中で、投げ銭した人とコミュニケーションをとりながら、飼育員が動物たちに餌をやるという仕組みだ。

Twitterを通じてできた「飼育員のファン」も

桂浜水族館ではこれまでTwitterで積極的に情報を発信。トドの寝姿をエビフライに例えるなどユーモアたっぷりの投稿も多い。

さらに、もう一つの特徴が動物だけでなく飼育員をメインに取り上げた投稿が多いことだ。動物と飼育員の触れ合う姿を楽しむ人は多いようで、丸野さんは「飼育員にもファンがいて、ファンクラブができている人までいるんです。なので、オンライン餌やりをするなら飼育員も加えてみたらどうかと思いつきました」と話す。

カワウソに次いで飼育員が人気第2位に

「全然投げ銭が来なかったらどうしようと不安だった」というが、オンライン餌やりの受け付けを始めると、「飼育員」も並ぶラインナップが話題に。

フェスでのオンライン水族館には、約300組の親子連れが「来場」。カワウソに関するクイズや質問コーナーなどを行った後、投げ銭した参加者の名前を呼んで感謝を伝えながら「オンライン餌やり」を開催した。

飼育員はトド、アシカを抑え、カワウソに次ぐ2番目の人気に。飼育員はフライドポテトを食べ、視聴者に感謝を伝えた。フェス終了までに集まった投げ銭は、約16万円に上った。

フライドポテトを食べる飼育員と、餌を食べるカワウソ
フライドポテトを食べる飼育員と、餌を食べるカワウソ
「親子でオンライン体験フェス」のYouTube動画より

投げ銭は6月11日まで受け付けているが、今後イベントの予定はないため、オンラインで餌やりを見られる訳ではない。水族館への寄付という形になり、運営費として使うという。

丸野さんは「思った以上に多くの方に投げ銭をいただいて、本当に嬉しかったです。SNSで桂浜水族館を知ったけれど遠くてなかなか行けない、という方にも楽しんでもらえたのではないでしょうか」と話す。

厳しい状況は続くが、「スタッフはむしろ、ピンチじゃなくてチャンスだ、という感じ。知恵を絞っていきたい」。今後も公式YouTubeチャンネルや通販に力を入れるなど、チャレンジを続けるという。

「親子でオンライン体験フェス」の動画(桂浜水族館は1:20:30あたりから)

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