コロナ時代の都知事選、リアルかオンラインか…最後の訴えにみる候補者たちの選択

7月5日は、東京都知事選の投開票日。2013年のネット選挙解禁から7年、「withコロナ」の時代に、選挙は大きな転換点を迎えている。
(左上から時計回りに)宇都宮健児氏、小池百合子氏、山本太郎氏、小野泰輔氏、立花孝志氏=7月4日、各候補者の公式YouTubeより
(左上から時計回りに)宇都宮健児氏、小池百合子氏、山本太郎氏、小野泰輔氏、立花孝志氏=7月4日、各候補者の公式YouTubeより
HuffPost Japan

7月5日は、東京都知事選の投開票日。

新型コロナウイルスの感染が再び拡大していく中で、さまざまな制約が課された選挙戦だった。2013年のネット選挙解禁から7年。「withコロナ」の時代に、選挙は大きな転換点を迎えている。

SNSやZoomなどのオンラインを駆使した選挙戦は、最終日の7月4日も深夜まで続いた。候補者たちの動きを追った。(届け出順)

山本太郎氏 “リアル” なコミュニケーションへのこだわり

「リアルな人と人とのコミュニケーション」にこだわったのは、「れいわ新選組」の山本太郎氏。連日街頭に立って自らの主張を訴えた。

選挙活動が終了する5日午前0時まで、都内を足で回るという。

当初、街頭演説の場所は人が集まらないように非公開としていたが、それでも大勢の人が山本さんのリアルな言葉に耳を傾けた。

れいわ新選組の事務局長は「政治はリアル」と、街頭での選挙活動へのこだわりを語る。

「候補者が自分の主義主張を自分の言葉で訴え、有権者に判断してもらう。みなさんに何が響いているか、どんな反応があるかを見ながら話す、人と人とのリアルなコミュニケーション。それが選挙の基本で、大事にしています」

選挙戦最終日の7月4日、最後の街頭演説の場所に選んだのはJR新宿駅前。現場には大勢の人が集まり、生配信したYouTubeは約2万人が視聴した。

「コロナ禍の中で選挙を行うことに問題がある。都からも国からもメディアも何も言わなかった。投票に行く人が少なくなれば、組織票だけが美味しい思いをする」と選挙戦への不満もにじませつつ、コロナを機に生活が困窮する状況を見て都政への挑戦を思い立ったと訴えた。

小池百合子氏「オンライン選挙に徹した」

「オンライン選挙のモデルを作ることにチャレンジしていきたい」

出馬表明の際、こう語っていた小池百合子氏(無所属・現職)は、言葉通りオンラインでの選挙活動を徹底。第一声からマイク納めに到るまで、一度も街頭での演説を行わなかった。

街頭で有権者に訴えるかわりに活用したのは、YouTube。都内62の市区町村に向けた演説動画や、「#小池ゆりこに物申す」のハッシュタグで募った質問や批判に対して説明する動画などを公開している。

新型コロナウイルス感染拡大への警戒を呼びかける「東京アラート」は、都知事選告示の翌日6月19日に解除されたが、都内の感染者は増加傾向が続いている。

選挙戦最終日の4日も、都内では新たに131人の感染者が報告された。小池氏は現職として「不要不急の他県への移動の自粛」などを呼びかけた。

午後7時過ぎからは3本のYouTube動画に出演。「最後のメッセージ」と題した動画では、「疾病対策予防センター『東京版CDC』を立ち上げ、世界で一番感染症に強い首都を作る」などと訴えた。

小池氏の選挙戦について、別の候補の関係者は「現職であることを生かしてコロナ禍を最大限に利用した。テレビでの討論会も避けられ、議論は深まらなかったが、戦い方としては上手なのだろう」と語った。

宇都宮健児氏 締めくくりは8時間ぶっ通しのZoomイベント

立憲民主・共産・社民の野党3党が支援する宇都宮健児氏は、リアルとオンラインのバランスを取りながら選挙活動を行った。

選挙対策本部の広報担当者は、1日に4〜5カ所で街頭演説は行ったものの、場所は原則非公開で、「地元の支援者にも人を集めないようお願いした」と明かす。かわりに、街頭演説はいずれもライブ配信を行った。

Zoomを利用したトークライブもたびたび開催した。

4日も3カ所で街頭に立ち、午後4時から選挙活動が終了直前まで約8時間にわたってZoomで行ったオンラインイベントに出演した。「築地」や「コロナ対策」などのテーマごとに有権者たちとオンラインで対談し、政策を訴えた。

途中、最後の街頭演説も配信し、「経済成長が第一という考え方が誤りだと分かったのがコロナ禍。今回の選挙では、社会のあり方が問われている」と訴えた。

新型コロナに伴う休業補償の強化を訴え、小池氏に都のコロナ対策について問う公開質問状も送り、回答や回答への意見とともに公式サイトに掲載。

担当者は「色々と制約はあったが、後半に入って共感の輪が広がった感触がある」と手応えを語った。

小野泰輔氏「熊本や福島からのリモートボランティアに支えられた」

選挙期間中、計178カ所の街頭演説をこなした小野泰輔氏(日本維新の会推薦)。4日は都内15カ所で街頭に立ち、最後の訴えを行った。

広報担当者によると、当初は「演説に慣れておらず、知名度不足にも悩んだ」というが、後半は敢えて街頭演説の回数を増やした。

noteやYouTubeでの発信にも力を入れた。7月3日には、ホリエモン新党の立花孝志氏や堀江貴文氏らとともにZoomでの“飲み語り”も配信。「オンラインでの選挙活動がメインになり、寝る時間もない」と苦笑した。

4日も、選挙活動が終わる5日午前0時の直前までYouTube番組に出演し、院内感染が発生した永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛氏と対談した。

オンラインでの発信を支えたのは、ボランティアのデジタルチームだ。副知事を務めた熊本県からは約50人がリモートでボランティアに参加していたという。

担当者は「福島や神奈川からも参加していただいた。20代の若者が中心で、本当に支えていただいた。本人は、コロナで制約もあるけれどチャンスとして捉えよう、と話しています」と話す。

立花孝志氏は北海道から最後の訴え

一方、「NHKから国民を守る党」党首で「ホリエモン新党」代表の立花孝志氏は風変わりな選挙活動を展開した。

5月に新たな政治団体「ホリエモン新党」を結成して都知事選への立候補を表明したが、「当選するつもりはない」と宣言。

NHKの政見放送では、過去のNHKの不祥事を取り上げて「NHKをぶっ壊す!」と叫び、選挙活動は7月2日の中野駅での街頭演説で他の候補者よりも早くマイク納め。

3日からは北海道に滞在し、他の候補者たちが最後の訴えに終われた4日と投開票日の5日は、ニセコで開かれているアドベンチャーレースに参加しているという。

3日に北海道からYouTubeで配信した動画では、「1番になるのは小池さんと決まっている選挙」とあっさり。

4日のレース前に投稿した動画でも、今後想定される国政への布石のためにの立候補だと説明している。新型コロナについて「私が都知事になったら、コロナがどれだけ感染が広がっても経済は止めません。60歳以上の方はステイホームしていただく」と改めて訴えた。

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