本田圭佑、サッカーに集中すべきという声に「むしろ逆」と反論。教育・ビジネスを展開する理由を明かす

今度は“学校づくり”に乗り出す。
本田圭佑選手
本田圭佑選手
Wagner Meier via Getty Images

ブラジル1部のサッカーチーム「ボタフォゴFR」に所属する本田圭佑選手が中高生を対象とした“学校づくり”に乗り出す。

7月27日、自身がCEOを務めるNowDo株式会社のオンライン記者会見の中で、本田選手は学校づくりにかける思いを熱く語った。

カンボジア代表監督、サッカースクールや保育園の運営、そして経営者ーー。

本田選手は、現役のサッカー選手業と並行して、数々の分野のビジネスに関わっている。

「『サッカーだけに集中して』という人は多い」。

数々のわらじを履く本田選手に対しては、批判が寄せられることも少なくない。だが、本田選手は、こうした声に対して、オンライン記者会見の中でアスリートとしてやるべきことは「むしろ逆」ときっぱりと反論した。

それはなぜか。

本田選手自身、サッカーを通じていくつかの夢を叶え、アスリートとしてファンに希望や夢を届ける役割を担ってきた。

その中で「人(スポーツ選手)として、影響力をどう使うのか、本当の意味で試されている」と感じているという。

「プレーや人柄、努力した背景、人ができないことを乗り越えてきた過程がどのアスリートにもある。自分の言葉で(語り)、競技をしていない時間帯を社会に目を向けて活動していくことは、やらなければいけない“義務”ぐらいに思っています」

スポーツ選手が競技で結果を出し続けながら、新しい分野にチャレンジするのは容易ではない。

本田選手は「新しいことを始めようとする人の足を引っ張る風潮がある」とした上で、「競技でパフォーマンスが出せないと活動を自粛してしまうアスリートが多いのは、非常に残念」とこぼす。

その上で「競技のパフォーマンスとは別に、選手の社会活動を認める社会になれば、積極的に人のために何かをやりたいと思う人が増えるのではないかと思う」と期待した。

「失敗の数が自慢」

本田選手が今回始めるのは、中高生のためのオンラインスクール。7月末から社会で活躍する人たちを講師に招き、18歳以下なら月額1ドルでLive配信やアーカイブ映像が見放題という。

参加者が交流できるコミュニティ機能もあり、「仲間を見つけて、自分で考える力をつけてほしい」と期待する。

オンラインスクールでは「答えを用意しない」という。いまの学校教育を補完する形で、自分で考えて行動したり、変化を対応したりするトレーニングの場となることを目指している。

本田選手自身は、挑戦と失敗を繰り返すことで、考える力を育んできたという。

「先生やコーチが言うことに疑問を持つような子どもだった。自分の人生をどう生きていくかを考えさせられるような家庭教育を与えられてきた」と振り返る。

「当然ながら、子供は自分の頭で行動すると、とてつもなくエラーが起きます。なので、幼少の時からトライアンドエラーをたくさんしてきた。いつも『失敗の数だけが自慢』と豪語させてもらっています」

「子供を社会で育てる」

本田選手はまた、日本の学校教育について「空気が読めて、どんなつらいタスクにも耐えられる、必要な知識や常識を身につけ、期待された回答ができる人材を大学までに育てるものだった。ファンタジーな回答は必要ではなかった」と指摘する。

新卒一括採用や新入社員を一から教育するという慣習を踏まえ、社会の側もこうした人材を求めてきた側面もある。

だが、時代は変わってゆく。

新しい時代に一人ひとりが活躍していくため、本田選手は「リアルに戦う術を中高生年代から身につけていく必要がある」として、「子供を社会で育てるコンセプトを実現しなくてはいけない」と強調する。

「初めて社会に出た子供たちが、どんなニッチな分野でも幸せに力強く生きていける社会ができるのではないかという希望も込めて、このサービスを作っています。多様性もこの学校のテーマになると思います」

きっかけは南アW杯での孤児院の訪問

本田選手が教育にかける情熱の源はどこにあるのか。

初出場した2010年の南アフリカワールドカップでの体験が、いま教育に関わる大きなきっかけになっていると本田選手は語る。

強豪に囲まれた中での予選リーグ突破に沸いた裏で、代表チームは、現地の孤児院を訪れていたという。

26日のオンラインスクール発表時のYouTubeで流れたVTRで、その時の体験をこう振り返っている。

「将来どういう風に育っていくのか聞いたら、『犯罪者になったり、HIVに感染したりする人が多い傾向がある』と言う話を聞いて、衝撃を受けました」

「自分はサッカー選手でしかないと分かりつつ、何かできることはないか」

その思いから、貧しくて夢を追うことができない子供たちのためにサッカースクールを立ち上げたが、それだけでは「貧しい人は貧しいまま」と気づいたという。

ベンチャー起業への投資を始めたのち、「起業した方がもっと早く世の中を変えられるかもしれない」といまの会社を立ち上げたという。

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