男性の育休取得率は7.48% 「恥ずかしすぎる水準だ」

「過去最高」とはいえ、過去に掲げては先送りを続けてきた目標は、まだ1つも達成していない。“義務化” の必要性を訴える声も上がっている。
厚生労働省の雇用均等基本調査より作成
厚生労働省の雇用均等基本調査より作成
HuffPost Japan

2019年度の男性の育休取得率が7.48%で過去最高となった。厚生労働省が7月31日に雇用均等基本調査の速報値を発表した。

政府は「2020年までに13%」を目標に掲げていたが、達成はほぼ絶望的。5月に策定した少子化対策大綱では「25年までに30%」と目標を先送りにしたが、このままでは実現は遠そうだ。

政府目標「20年までに13%」→「25年までに30%」

厚労省の調査によると、1996年度の統計開始以来、女性の育休取得率は大幅に増加している。96年には49.1%だったが、2019年度は速報値で83%となっている。

一方、男性の育休取得率はほんの少しずつ増加傾向にはあるものの、微々たる変化にとどまっている。

政府は2002年に少子化対策として「2012年までに男性の育休取得率10%を達成する」ことを目指していた。だが、目標に遠く及ばないまま、「17年までに10%」「20年までに13%」「25年までに30%」ーーと目標を先送りしてきた。

2010年からは「イクメンプロジェクト」に取り組み、広く男性の育児参加を呼びかけている。

こちらも「イクメン」のワードは広く浸透したが、当時1.38%だった取得率は10年かけて6.1ポイントの上昇にとどまり、低迷が続いている。掲げては先送りを続けてきた目標は、まだ1つも達成していない。

「イクメンプロジェクト」の座長を務める認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は「あまりにも低すぎて、座長として恥ずかしすぎる水準だ。これまで10年間『啓発』を行ってきたが、これ以上『啓発』をしても意味がない」と強調。

「企業に対し男性育休を義務づける法律をつくるべきだ」と提案する。

「男性が育休取得できるよう法律で義務付けを」

公益財団法人「日本生産性本部」が2017年度の新入社員に行ったアンケートでは、「子供が生まれたら育休を取得したい」と回答したのは、女性で98.2%、男性で79.5%に上る。

ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長も、男性が育児取得できる環境整備を企業に義務付ける法律の必要性を訴える1人だ。

「産後の妻の死因の1位は自殺です。孤独な育児で産後うつになる辛い現状に対して、男性育休取得率が7.48%というのは、決して世の中の男性が育児を軽んじているからではありません。8割の男性が育休を取得したいと回答しているにも関わらず、企業の風土が障壁となっています」

「企業も取引先や親会社の目を気にして、取得させない状況にあります。このままお互いをけん制しあって、少子化により社会が沈んでいかないためには、育児介護休業法を改正して、男性の育児休業を取得できる環境の整備を企業に義務付ける必要があります。企業に有価証券報告書等で、男女ともに育休取得率の公開を義務付けることも効果的でしょう」

「2020年をターニングポイントの年に」

ただ、変化の兆しもある。

2020年1月には、小泉進次郎環境相が長男誕生を機に、現役閣僚として初となる育休を取得

ワーク・ライフバランス社が呼びかける「男性育休100%宣言」(男性社員が育休を100%取得できる職場づくりの宣言)を掲げる企業も増えるなど、育休を取得しづらい「空気」は変わりつつある。

自民党内でも、2019年6月に有志による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」が発足。その後、「育休のあり方検討プロジェクトチーム(PT)」として、産後4週間までを「父親産後休業期間」と定め、この間の育休については取得手続きの簡易化や給付金の上乗せするよう提案した。

提案を受け、2020年5月の少子化社会対策大綱にも給付金制度や育休の分割取得制度の拡充について検討することが盛り込まれた

また、西村康稔経済再生担当大臣が主宰する有識者懇談会「選択する未来2.0」の中間報告(2020年7月)では、「男性本人に対し、育児休業の取得の義務化や強力なインセンティブを与え、男性が全員取得する環境を目指すことも提案したい」と、育休義務化にまで踏み込んでいる。

小室さんは「コロナによる自粛生活で、家族の重要さを以前以上に感じるようになったという変化の後押し、また企業の働き方改革に流れもあり、今年は流れが変わる大きなターニングポイントの年となるでしょう」と期待を寄せている。

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