霞ヶ関の過酷な労働実態。若手官僚から悲痛な声 「マスクを外させられた」「国会議員対応のために出社」…

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していった3月から、緊急事態宣言が解除される5月まで、官僚たちの働き方はどう変化したのだろうか。アンケートには悲痛な声が寄せられている。

「レクに行ったらマスクを外させられた」「政策を考える時間を最も阻害したのが、議員対応だった」ーー。

働き方改革コンサルティングを手がけるワーク・ライフバランス(WLB)社は6〜7月、コロナ禍における国家公務員の働き方について実態調査を行なった。オンラインアンケートに寄せられた480の回答からは、官僚たちの過酷な労働実態が透けて見える。

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していった3月から、緊急事態宣言が解除される5月まで、官僚たちの働き方はどう変化したのだろうか。

4割が過労死レベル

調査によると、回答者の約4割にあたる176人が、3月~5月で最も忙しかった月の実際の残業時間が “過労死レベル” といわれる「月100時間」を超えた。「300時間以上」という回答も5人(厚労省4人、法務省1人)いた。

省庁別の回答者数にばらつきがあるため、一概に比較はできないものの、コロナ対策の最前線で働く厚労省の職員の労働実態は相当に過酷だったことがうかがえる。

3月〜5月の最も忙しい月の残業時間(上)と省庁別の残業時間(下)
3月〜5月の最も忙しい月の残業時間(上)と省庁別の残業時間(下)
ワーク・ライフバランス社「2020年官僚の働き方アンケート」より

議員への説明、8割が「対面のまま」

官僚たちを苦しめたのが、国会議員の対応のようだ。

「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問に対し、業務で国会・議員対応がある回答者382人のうち71.7%が「全くそう思わない」と回答した。

「そう思わない」(19.6%)と合わせると、緊急事態宣言下でも9割以上が「配慮を感じる変化はなかった」としている。

また、「議員への説明が電話やオンラインに移行したか」との質問に対しては、83%が「そう思わない」と否定した。

議員とのやりとりは、まだFAXが主流?
議員とのやりとりは、まだFAXが主流?
ワーク・ライフバランス社「2020年官僚の働き方アンケート」より

「マスクを外させられた」「3密でのレク」

自由記述欄には、官僚たちの悲痛な声があふれている。

・部下も鬱になったし私ももう来たくない。なぜ厚労省で死者が出ないのか不思議なくらいです。(厚生労働省30代)

・レクに行ったらマスクを外させられた。(厚労省、防衛省など複数)

・緊急事態宣言中なのに平気で毎日のように職員を呼びつける議員がいた。(防衛省20代)

・電レク後にわざわざ資料持って説明に来させる議員もいた。(文科省20代)

・全くオンラインは進まず、3密の状態でのレクが常であった(15人以上が部屋に膝を詰めてレクを実施)。(財務省20代)

・緊急事態宣言中は基本テレワークだったが、国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった(内閣府40代)

「議員とのやり取りがFAXからメールに移行したか」との質問も、86.1%が「そう思わない」と回答。

メールで送っても議員側からFAXで送り直すよう求められたり、職場でペーパーレス化が進んでも議員のために紙を用意したりするなど、無駄が多い実態も浮かんだ。

大臣とのレク、「オンライン化」と「ペーパレス化」は省庁によって大きな差が出た
大臣とのレク、「オンライン化」と「ペーパレス化」は省庁によって大きな差が出た
ワーク・ライフバランス社「2020年官僚の働き方アンケート」より

職場のデジタル化、トップは環境省、2位は経産省

一方、大臣対応では職場によって大きな差が見られた。

「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」という質問に対しては、環境省と経済産業省が3位以下を大きく引き離してトップ2。

特に1位の環境省は、それぞれの質問に対して「強くそう思う」という回答が、84.8%(オンライン化)と72.7%(ペーパレス化)で各選択肢の中で最多。テレワークのしやすさでもトップとなった。

・大臣への説明の様子を、幹部もweb会議で同時に見られるようになったため、報告の手間がなくなり、ニュアンスの違いからくるミスコミュニケーションもなくなり、効率化につながった。(環境省20代)

・大臣など政務が変わっても、今の大臣や政務との打ち合わせのようにオンラインが常態となることを維持したい。(環境省40代)

・紙の枚数は相変わらず減らない。課長級以上はやはり紙を持ってこいという雰囲気。レジ袋何枚分だろうと思いながら毎夜大量の無駄紙をシュレッダーにかけている。(国土交通省20代)

・幹部がオンラインレクに反対の方がおり、その場合必ず登庁しなくてはならなかった。(財務省20代)

調査を行なったWLB社は、「システム整備などのハード面での整備の遅れ以上に、国会議員の『相手の働き方への配慮』が不足している点や、各省庁の『仕事の進め方の慣習』が大きな障害となって、デジタル化が進んでいない」と結果を分析。

「テレワークが機能しないままでは、政府中枢でクラスターが発生した場合の予行演習が出来ておらず、政府機能の停止、行政の崩壊が起きてしまうことが予想されます」と指摘している。

<省庁別の回答者の内訳は以下の通り>

厚生労働省70名(回答者中14.6%)

文部科学省59名(同12.3%)

内閣府45名(同9.4%)

経済産業省43名(同9.0%)

その他43名(同9.0%)

国土交通省42名(同8.8%)

環境省41名(同8.5%)

農林水産省33名(同6.9%)

総務省29名(同6.0%)

外務省25名(同5.2%)

防衛省24名(同5%)

法務省11名(2.3%)

財務省11名(2.3%)

復興庁3名(0.6%)

国家公安委員会(警察庁)1名(同0.2%)

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