京都の魂を蔑ろにする「送り火」のニセ点灯。そもそも「五山送り火」なぜ大事なのか

五山送り火は、祇園まつりなどと並び、京都の四大行事の一つであり、お盆に先祖に想いを馳せる京都の人の大事な儀式の一つでもある。
京都の五山の送り火(資料写真)
京都の五山の送り火(資料写真)
JIJI PRESS via Getty Images

京都のお盆に先祖の霊を送る「五山送り火」。予定より一足前の8月8日夜、何者かが如意ケ嶽(京都市左京区)で「大」の形に点灯させた。報道によると、遠目では、人工的な光に見えたという。祇園まつりなどと並び、京都の四大行事の一つであり、お盆に先祖に想いを馳せる京都の人の大事な儀式の一つでもある。

五山送り火は、名前の通り京都市内を取り巻く5つの山に、それぞれ「大」や「法」などの文字や、舟や鳥居などの形を、松明で夏の夜の山に浮かばせる。草木を刈った山の斜面に櫓を組んで火を放つ。本来は遠目に見てもオレンジ色の光だ。今回は青白い光だったと多くの目撃談が語っている。

送り火でお焚き上げされる護摩木
送り火でお焚き上げされる護摩木
Sankei via Getty Images

送り火とは、日本各地で行われるお盆の行事の一つ。お盆に帰ってきた死者の魂を現世からふたたびあの世へと送り出す行事だ。

保存会が通年かけて準備する。その年の2月に松を選定するのを手始めにその日に臨む。2020年8月16日が予定されていた。

銀閣寺の周辺の住民たちが「大文字保存会」をつくり、市民のほか、学生ボランティアやボーイスカウトなどとともに大文字送り火を運営している。

保存会によると、自然の山の斜面に若干土を盛り、松の木や、お焚き上げする祈願札である護摩木や松葉を井桁状に組んだ火床75箇所に火を灯す。「大」の中心は金尾と言われ、大きな割木が組まれている。

大きさは、「大」の字は第1画の横棒は80メートル、第2画の左払い160メートル、第3画は120メートルだ。火を置く火床の数と場所は決まっている。

山は送り火当日は、原則的に登山は出来ないが、通常は30分〜1時間ほどのピクニックコースは誰でも登れる。関係者によると、火を置く火床はわかるため、今回点灯も似たように出来たのではないかと見ている。

京都新聞によると、京都市文化財保護課が9日朝になって点灯の画像をツイッターで確認したという。同課は「今夏の送り火は新型コロナウイルスに伴い自粛対応することもあり、地元の思いを考えるといたずらの域を越えている。盆に迎えた先祖の霊を送る伝統行事の本義を考えてほしい」と話している、と伝えている。

SNSなどでは「そんなに怒らんでもええ」という声や、「今年は新型コロナ対策で『大』の字にならないことが決まっていたため、例年のように読める大の字を点灯してしまったのか」という声などがある。
ある京都出身者は、「京都ではお盆にはお迎え団子を備えて祖先の霊を迎えるなど、京都人としてのたしなみがあり、そのような教育を受けてきています。今回の件では、怒りまではないですが、結構なことしはったな、という気持ちですね」と話している。

五山送り火」の詳細 *京都市情報館サイトによる
「大文字」(京都市左京区浄土寺・如意ヶ嶽(大文字山)。8時点火)
「松ケ崎妙法」(京都市左京区松ヶ崎・西山及び東山。8時5分点火)
「船形万灯籠」(京都市北区西賀茂・船山。8時10分点火)
「左大文字」(京都市北区大北山・大文字山。8時15分点火)
「鳥居形松明」(京都市右京区嵯峨鳥居本・曼荼羅山。8時20分点火)

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