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2020年08月15日 15時22分 JST

「終戦の日」の自民党声明、“脅威への抑止力”が初登場。消えたワードは?(過去10年分を比較)

「平和と自由を愛する国民政党」「平和国家」がなくなり、文字数は2019年と並んで最短に。過去10年でどう変わった?

時事通信社
千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花に向かう安倍晋三首相(2020年8月15日)と戦後75年の自民党声明

毎年、終戦の日の8月15日に自民党が公表する声明。戦争の歴史と戦後の歩みへの受け止め、恒久平和に対する考えや立場を知ることができる。党が公式サイトで公表している過去10年分(2010〜2012年は総裁談話、2013年以降は党の声明)を読み比べると、戦後75年となる2020年の声明文で初めて盛り込まれたワードや、削除された言葉、重視する内容の変化が浮かんだ。

 

■「脅威」が初登場

2020年の声明全文は以下の通り。

<本日、75回目の終戦記念日を迎えました。先の大戦で犠牲となられたわが国並びに全ての国の英霊に対し、衷心より哀悼の誠を捧げますとともに、二度とわが国は戦争への道を歩まないと強く決意いたします。

 

戦後75年が経ち、先の大戦を経験した世代が少なくなる中で、あの惨禍を風化させてはなりません。唯一の戦争被爆国として、常に歴史と謙虚に向き合い、被爆の実相を次の世代に語り継ぐことが何よりも大切であります。

 

今日、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさと不確実性を増しています。憲法の範囲内で、国際法を順守しつつ、専守防衛の考え方の下、あらゆる脅威への抑止力・対処力を向上させていくことが求められています

 

自由民主党は、環境の変化を冷静に見極め、国民の生命と安全を断固として守り抜くとともに、世界の平和と繁栄に積極的に貢献し、恒久平和の実現に全力を尽くしてまいります。>

2018年の声明では「一国だけでは地域の平和と安定を守りきれない時代の中においては、日米同盟を基軸とする抑止力の向上を図り、積極的平和主義に基づいた平和外交努力を着実に積み重ねていくことが何よりも大切であります」として、「抑止力」のワードが含まれたが、2020年のような「脅威」「脅威への抑止力・対処力を向上」といった表現は、過去10年間の声明・談話にはない。

 

■消えた「平和国家」と「平和と自由を愛する国民政党」

2020年の声明では、例年含まれていたワードの一部が無くなっていることも特徴の一つだ。2014年以降、日本を示す「平和国家」が毎年含まれていたが、2020年には記述がない。さらに、2013年〜2019年の声明に毎年記載があった、自民党自らを指す「平和と自由を愛する国民政党」も、2020年は見られなかった。

※以下、抜粋

<自由民主党は、令和の時代においても平和と自由を愛する国民政党として、国民の皆様と共に、世界の平和と繁栄にたゆまぬ努力を続け、戦争の無い、希望に満ちあふれた「平和国家日本」を次の時代に引き継ぐことを、ここに強く誓うものであります。>(2019年の自民党声明

 

<わが党は、平和と自由を愛する国民政党として、先人が築いた「平和国家日本」を次の世代に引き継ぎ、世界の平和と繁栄に積極的に貢献してまいります。>(2018年の自民党声明

 

<わが党は、平和と自由を愛する国民政党として、先人が築いた「平和国家日本」を次の世代に引き継いでいくとともに、歴史と謙虚に向き合い、世界の平和と繁栄に積極的に貢献してまいります。>(2017年の自民党声明

 

■かつては「韓国国民に与えた苦難」と「沖縄の負担」にも言及

文字数を比べると、2020年は戦後74年の昨年と同数の374字で、過去10年間で最も短かった。最も長かったのは2010年の総裁談話(谷垣禎一氏当時)で、1253字だった。2010年をピークに年々減少傾向にある。

最長だった2010年の総裁談話では、以下のように加害国としての歴史にも言及していた。

<100年前の8月22日、「韓国併合ニ関スル条約」が調印されました。この国際法的な評価につき、我が国の立場はいささかも変わるものではありません。しかし、その後歴史がどのような経過を辿り、どれほど多くの犠牲を生ぜしめたか、就中、大韓帝国国民であった方々に与えた多大の苦難に正面から向き合う勇気と真摯さを持たねばなりません。

2013年の声明では、戦後も沖縄が基地の負担を強いられていることに触れていた。当時の首相は現首相の安倍晋三氏。沖縄に言及しているのは過去10年で2013年のみだった。

 <サンフランシスコ講和条約の発効によって主権を取り戻し、日本を日本人自身のものとしたと同時に、奄美、小笠原、沖縄の施政権が、日本から切り離され、日本復帰まで長い歳月が費やされたこと、今も日本の安全保障上の負担の多くを沖縄県が負っている現実を決して忘れてはなりません。