黒人ヒーロー、チャドウィック・ボーズマンさんが残した功績「私たちは大役を務められない、と言われてきた」

映画「ブラックパンサー」は、白人優位と言われるハリウッドで画期的な成功を収めました。
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映画「ブラックパンサー」で主演を務めた俳優のチャドウィック・ボーズマンさんが、大腸がんで亡くなった。マーベル初の黒人ヒーローを描いた同作は、キャストの大半を黒人俳優が占め、白人優位と言われるハリウッドで画期的な成功を収めた。

ボーズマンさん自身も、スピーチで黒人俳優の地位向上を訴え、また黒人への警察官の暴力に抗議する「Black Lives Matter」への支援も表明している。その功績を振り返る。

「ブラックパンサー」が残した功績

2018年に公開された映画「ブラックパンサー」は、全米歴代3位の興収を記録する大ヒットとなった。

生まれ故郷であるアフリカの国家「ワカンダ」に戻った若き国王、ティ・チャラの冒険を描いた同作は、マーベル初の黒人ヒーローとして注目された。

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もしアフリカが植民地化されなかったら... 架空の世界を描いていた

この作品が注目を集めた一つの要因は、同作が「植民地化されなかったアフリカ」を描いている、という点だ。

ストーリーの舞台となる架空の国「ワカンダ」は、豊富な資源を持ち、最先端科学技術を誇る文明大国だが、略奪を避けるために表向きは貧しい国を装っている。

他国によって資源が奪われず、アフリカに住む人々が奴隷として強制連行されることがなかったらーー。そんな架空の世界を描いているのだ。

「白人だらけ」のハリウッドに変化を

「#OscarsSoWhite(白人だらけのオスカー)」とアカデミー賞が揶揄されるように、ハリウッドは長らく白人中心の業界と批判されている。黒人俳優の配役は限られ、黒人のスタッフも少ない。

そのハリウッドにおいて、アフリカ系アメリカ人のルーツでもあるアフリカ文化を描き、キャストの多数が黒人を占めた「ブラックパンサー」が高く評価されたことは、アメリカのブラック・コミュニティーに希望をもたらした。

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スパイク・リー監督の新作映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』にも出演し、2020年6月にNetflixで配信を迎えたばかりだった。

ボーズマンさんは、SAGアワード(全米映画俳優組合賞)で「ブラックパンサー」がキャスト賞を受賞した際、こんな言葉を残している

「若くて、才能があり、そして黒人である私たちは、注目される場所などない、と言われる気持ちをよくわかっています。映画で大役を務められない、舞台で主役になれない、と言われる気持ちをよくわかっています。先頭に立つのではなく、末端でいることの気持ちがよくわかかります。上じゃなくて下にいることがどんな気分なのか、わかります。

それこそが、私たちが毎日働いてきた環境です。(中略)でも私たちは、世界に届けるべき特別なものを持っています。役を通して、私たちが見たかった世界を例示することができるのです」

ボーズマンさんの冥福を心から祈りたい。

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