「萌えキャラ」イラストで何を訴えたかったのか。そして、なぜ私がモヤモヤを抱くのか。

誰のための広告なの?ミニスカートの#萌えキャラ広告で抱いた疑問。

つい最近、環境省の「COOL CHOICE」キャンペーンで2人の女子高生「君野イマ・ミライ」を使ったPR動画がTwitter等のSNS上で話題になった。

そのイラストを見たときに、私は「怒り」を感じなかったが、ただただモヤモヤが残った。

私は「モヤモヤ」という状態が嫌いで、疑問を抱いたり「わからない」と思ったら基本的にはすぐに調べないと嫌な性格だ。社会において、そのモヤモヤを通して怒りを覚えることもよくあることなのだが、この萌えキャラの広告を見たときにはどんな感情よりも「なんか嫌な気分になる」という感情が残った。

【誰のための広告ですか?】

広告や今回のようなキャンペーンのキャラクターというのには、必ず“パブリックな視点”が必要で、全ての広告が全ての人に受け入れられるようには作られていない。そのターゲットが絞られていれば絞られているほど、効率よくメッセージが伝わり宣伝ができる。

つまり、一番届けたい「誰か」に向けて作られているわけで、今回の環境省のPRは誰に向けたものなのか。私はこの画像を見たときに、二つのグループがいると感じた。

一つは、この女子高校生2人のキャラクターに「萌え」を感じている人、そして二つ目は女子高生だ。

しかし、このキャラに対して「萌え」という感情を抱く、というのはどういうことなのか。

「萌え」という言葉を聞くと私は、動物などに対して「カワイイ!」と思う感情、もしくは若い女性や従順な女性に対し性的な意味を含む興奮に対して使われるものだという印象がある。だからこそ、今回の女子高校生の「萌えキャラ」という概念に、私はものすごく疑問に思った。

環境省「COOL CHOICE」キャンペーンのキャラクター、君野イマと君野ミライ
環境省「COOL CHOICE」キャンペーンのキャラクター、君野イマと君野ミライ
環境省「COOL CHOICE」公式HPよりスクリーンショット

日本では、女子中学生や女子高校生が性的な「フェティッシュ」として扱われることがある。

数年前までは電車の釣革や、コンビニの18禁セクションで普通に中学生や高校生の制服に似たコスプレの格好をしたグラビアやポルノ雑誌の宣伝などが普通にあった。今は少しずつ状況は変わっているものの、若い女性、未成年の女性に対するsexualization 「性的に見ること」について疑問を感じている。

東アジア特徴的な「可愛い」「素直」「従順」な若い女性(時には未成年や13歳の以下の子供まで)が社会によって性的に見られていたり、そういう女性が性的なコンセプトとなったりしていることに対して疑問しか思わない。

今回の話題となった動画の「キャラクター」は、女子高校生だ。女子高校生、というのは基本的に18歳以下が多く、未成年だ。

そういったキャラクターを、体のラインや見せ方、スカートの丈やメッセージ性から考えてみると、この広告の対象は若い女性に性的な行為を含めたイメージを持つ、ヘテロセクシュアルな、男性に向けたメッセージがこめられたもののように感じられてしまう。

Young Asian woman in casual clothes holding empty speech bubble in colorful yellow studio background
Young Asian woman in casual clothes holding empty speech bubble in colorful yellow studio background
Kritchanut via Getty Images

【わざわざ、萌えキャラを使う必要はありましたか?】

かなりターゲットが絞られたこのキャラクターで、改めて考えさせられるのが「萌え」という概念だ。

日本独特な「萌え」というコンセプトは、他の言語では説明しづらいからこそそれぞれのニュアンスがあると思うが、この言葉をポジティブに使っていきたい、とは思わない。

やはり、私はこの言葉を聞くと、先ほど説明したように男性の若い女性などに対する男性の性的な興奮を思い浮かべてしまうし、自分自身中学生、高校生と日本で生活したからこそどうしても嫌な気持ちになる。

私が嫌な気持ちになっても、ターゲットに届けばいいのかもしれないが、環境省が、国の行政機関である環境省が女子高生のキャラクターを通じて、メッセージを出すのはどうなのか。

そう考えると、ターゲットは結局「自分」や「若い女性や働く女性」では全くなく、重要な「意思決定権のある男性」であるのだな、と思う。

イメージ写真
イメージ写真
Feodora Chiosea via Getty Images

【ぐうたらで不摂生?】

このキャラクターを見た時に、私は「もしかしたらターゲットは女性中学生や高校生なのかな?」とも思った。あえて同世代をモデルにすることで、モチベーションとなるような広告を目指したのか?

ただ、高校生の自分、中学生の自分を思い返しても、この広告には違和感を覚えただろうし、私はこの広告を、中学生や高校生に見せたくない、とも思ってしまう。

それは、環境に対する意識が低いことは「ぐうたら」ことではないから。

日本では出る杭は打たれる。教育においても、欧米のソクラテス式(ギリシャの哲学者からくる、議論の方式)とは異なり、「考える」「議論する」ことよりも「暗記」をしたり、「礼儀正しくいる」所に強調されていたりする。そういった強調の違いから、「個々」が消されつつある社会になり、他と違うことをする人を排除してしまっているとも思う。

日本で声を上げたら、社会問題に関心を持ったら、すぐに「意識高い系」とレッテルを貼られたり、その社会の輪から排除されそうになる。意識高いという言葉は、ネガティブなニュアンスで使われることの方が多く、その上教育の場などでは議論すること、声を上げることが難しく自ら問題意識を持つ事さえ難しくもなる。

こういった社会になっているのは、今の高校生や中学生が悪いのだろうか?

何故女子高校生を使い、まるで彼女らに「責任」を負わせる必要があるのか?

そして、この社会で、いきなり「ぐうたら」と見下すのは、どうなのか。

出る杭は打たれる社会で、声を上げる人を「打つ」にも関わらず、一方で行動しない人を「ぐうたらな子」というふうに位置付けるのは、行政として間違っていると思いますし、その前に行政や国として、日本の環境汚染や環境問題に、もう少しきちんと向き合って欲しいと思います。

これからの時代、もっとジェンダーフリーなキャラクターを使ったり、もっと多様性を大事にした広告などが行えたらより若い世代に好評的なアイディアを生み出すのではないか、と思いました。

【編集部より】

今回のキャラクター起用に関し、環境省の担当者はハフポスト日本版の取材に対し、

「COOL CHOICEの認知度が低い若年層(10代後半~20代)に地球温暖化対策を伝えていくため、有識者からの発案を踏まえ環境省として新たなアプローチとして、平成28年度にキャラクターのコンセプトやデザインの募集を行い、また、キャラクターデザインについては一般投票も実施しました。

このプロセスの中で、女子高生キャラクターを活用するアイデアが採用され、『COOL CHOICE イメージキャラクター 君野イマ・君野ミライ』が誕生しました」

と今回のキャラクターを選んだ趣旨を説明。

Twitterなどで議論を呼んだことに関しては

「今回、多くのコメントやリツイートをいただいたことは驚いています。また、様々なご意見があると認識しています。今回、様々なご意見をいただいたことを踏まえ、投稿内容及びタイミングに配慮し、お伝えしたい内容が伝えられるよう取り組みたい。

これまでも様々な自治体や企業による地球温暖化対策のPR等に活用いただいており、現時点で変更等は予定しておりません。これからも若年層を始めとして多くの方々に、地球温暖化問題に関心を持っていただき、また、一人一人ができることに取り組んでいただくきっかけとなるよう、従来の普及啓発の手法にとらわれず、新しい手法・アプローチを含めその時々の状況に応じて、より効果的な手法を検討したい。今後も、多様な主体と連携をしながら、COOL CHOICEを推進していきたいと思います。

COOL CHOICE webサイトには、君野イマ・君野ミライの他にも、地球温暖化に関する様々な情報が掲載されていますので、ぜひアクセスしていただければと思います」

と答えた。

(編集:榊原すずみ

注目記事