男性育休、周知など「義務」化に企業の反発も。法改正へ議論がスタート

男性育休は「妊娠・出産、子育てについて、男女が共に担うべき共通の課題にしていく」として、2025年までに30%の政府目標が掲げられています。
Father and Baby girl (6 months)
Father and Baby girl (6 months)
Yagi Studio via Getty Images

男性の育休取得率を2025年までに30%にーー。

政府が5月に閣議決定した少子化社会対策大綱の目標をめぐり、男性社員の育休取得について企業に対して周知するよう義務付ける方向で検討が始まった。

「子育ては男女が共に担うべき共通の課題」

2019年度の男性の育休取得率が7.48%。7年連続の上昇となったが、ペースは遅く、8割を超える女性の取得率と比べ低迷が続いている

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、育児のために休暇や休業の取得を希望していた男性正社員のうち、育休制度を利用したのは19.9%。希望していたのに利用できなかったのは37.5%となっている。

育児介護休業法では、男性社員に対する周知は努力義務にとどまっているため、企業による「制度に関する情報提供」や「取得を進める働きかけ」などが、女性に比べて男性が低いことも分かっている。

2020年度の目標だった13%の達成は困難と見られていたが、少子化社会対策大綱では「妊娠・出産、子育てについて、男女が共に担うべき共通の課題にしていく」としてさらに高い目標を掲げている

「義務化」への反発や疑問、労使から…

9月29日に行われた厚労省の分科会では、男性の育休取得促進という方向性に反対する意見は出なかったが、「義務化」への反発が上がった。

日本商工会議所の杉崎友則氏は中小企業の7割が義務化に反対だとする調査結果を報告。「深刻な人手不足が続く中、コロナ禍で企業に影響が出ている。残業時間の上限規制や有給休暇の義務化など度重なる労働規制の強化、負担増もあり、強制力を持った施策には反対する」と述べた。

日本経団連の鈴木重也氏も「労働者や職場の実態を踏まえて議論するべき」と、一律の義務化には反対を表明した。

「義務化」に疑問を呈する声は労働者側からも上がった。

「取得の申し出があったら使用者は認めなくてはいけない。制度上はすでに義務化されている。既存の枠組みを使うことも重要ではないか」

(情報産業労働組合連合会・斎藤久子氏)

「取得申請あれば事業者は拒否できないはずなのに、日数短縮を求められた、在宅ワークを求められたとの声が上がっている。そういう状況を改善するのが先ではないか。仮に取得しづらい環境が多く存在するなら、それは事業主の責任もあるし、個別の労使関係のコミュニケーションで解決するのがあるべき形だ」

(山中しのぶ氏・全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会)

自民PT「企業への周知義務化」「母子手帳への記入欄追加」などを提言

こうした意見にたいし、厚労省の佐藤俊・職業生活両立課長は「女性も男性も育児介護の両立ができるよう、男性の育児家事参加が大事だと思っています。少子化にも付随した効果がある」と回答。

「(2025年までに30%という目標が)実績と比べて相当乖離があって高いのは事実だが、なんとか目標に向けて頑張っていきたいのでご理解いただきたい」と訴えた。

自民党の「育休のあり方検討プロジェクトチーム」が3月にまとめた中間提言では、男性の育休について周知が就業規則への掲載レベルにとどまっている企業も多いとしてして、上司が個別に取得の意向確認を行うなど周知の義務化や、管理職の意識改革など職場環境整備の義務化などを求めている

また、母子健康手帳の必須記載欄にある育休の取得予定について父親・母親の区分がされていないとして、父親の育児休業について独立記入する欄を設けるよう提案している。

これを受け、少子化大綱には、男性が育休取得しやすい職場環境整備や制度の周知徹底、母子手帳や両親学級を通じて男性の育休取得や育児参加について情報提供するなどの具体策が盛り込まれた。

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