「堕胎罪を廃止せよ」韓国で女性100人が中絶の合法化を促す共同宣言を発表

憲法裁判所ではすでに「堕胎罪」が憲法に不合致と判断されているが、政府は法改正に消極的だ。
「堕胎罪」全面廃止を求める女性100人共同宣言
「堕胎罪」全面廃止を求める女性100人共同宣言
韓国女性民友会

9月28日の「国際セーフ・アボーション・デー」(安全で合法的な妊娠中絶のための国際行動の日)を機に、韓国で女性100人が「堕胎罪」の全面廃止を求める共同宣言文を発表した。

韓国では日本同様、「堕胎罪」を刑法で定める一方で、母子保健法(日本の母体保護法にあたる)によって、一定の条件を満たせばこの罪は適用外となり、医師の判断で人工妊娠中絶を行えることになっている。そのため、実際には「堕胎罪」で処罰されることはほとんどないが、女性の権利の侵害だとして問題視されてきた。

宣言文に名前を連ねたのは、2005年に「戸主制」(※)の廃止を主導した活動家、ジェンダー平等社会を志向する文化芸術人、法学者、医師、政治家など多様な分野の女性100人。

韓国では2019年4月、憲法裁判所が「堕胎罪」が憲法に不合致であるとの決定を下したが、政府は、代替となる立法にはいまだ消極的。宣言文では、戸主制と同じく「堕胎罪」もまた、女性を抑圧し差別する象徴的な制度であることを明らかに認識しなければならないと訴えている。

「堕胎罪」関連法の改定期限は残りわずか3カ月に迫っている。

2019年4月11日、韓国の憲法裁判所は刑法「堕胎罪」に憲法不合致決定を下し、2020年の12月31日を政府による代案の立法期間と定めた。しかし、政府は現在も「堕胎罪」を刑法にそのまま残しており、妊娠初期の場合に限って中止を認めるとの案を議論している。

「堕胎罪」全面廃止を求める女性100人側は、「政府のこのような態度は、数多くの女性たちの勇気ある行動で導き出した憲法不合致決定の意味を縮小・歪曲するもの。それどころか、実質的に死文化した堕胎罪を復活させる恐れがあるなど、女性の人権に対する深刻な退行だ」と主張している。

また、「国家は66年の間、刑罰権を行使させ、女性の体と性を統制・管理し、必要に応じて人口調節を行ってたが、この手段で『堕胎罪』を活用してきた」とし、「この法のせいで女性たちは大きな抑圧と差別を受け、生命まで失ったのにもかかわらず、政府は立法代案過程で女性たちの声をまったく聞かず、女性に対する偏見を動員し事実を歪曲する一部勢力の声だけに耳を傾け、密室で立法案を作っている」と批判した。

※韓国の戸主制度

戸主を「一家の系統を継承した者」として規定。子供が父親の姓を名乗る定めもあり、韓国の男性中心の家制度を支えてきた。1958年に制定された韓国民法で規定されていたが、2005年に「伝統的な家族像が崩壊する」とする保守派の反発を押し切って改正案が可決され、2008年に廃止された。

以下が、100人共同宣言文の全文だ。

「いかなる女性も『堕胎罪』で処罰されないように」

妊娠中絶を「全面非犯罪化」し、性と生殖の権利を保障する必要があります。

変化は恐ろしいことかもしれませんが、新しい世界へと進んでいく過程です。 私たちは2005年に戸主制を廃止しました。 戸主制の廃止について激しい反対と懸念の声がありましたが、杞憂に過ぎませんでした。 むしろ多くの女性が戸主制による差別と抑圧から脱することができました。

多くの女性が勇気ある行動をとることにより、2019年4月11日、刑法「堕胎罪」に関する憲法不合致決定に至りました。 国際セーフ・アボーション・デーである今日、我々も同じく「堕胎罪」の全面廃止を訴えます。

私たちは女性の決定を信頼する土台の上でのみ、変化が可能だということを強調します。

国は、女性を性と生殖の権利の主体として認め、ジェンダーの平等教育と避妊教育をすべての市民に実施しなければなりません。 また、望まない妊娠の予防、(流産誘導剤のなど)妊娠中絶の手段の拡大、安全な医療支援システムの構築など、政策パラダイムの転換を要求します。

いかなる女性も妊娠中絶を理由に処罰されないよう、刑法第27条「堕胎の罪」は必ず削除されなければなりません。

戸主制を廃止した!! 堕胎罪も廃止しろ!!

2020.9.28

この記事はハフポスト韓国版を翻訳・編集しました。

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