シャツ無しブレザー1枚。フィンランド首相、ファッション誌の写真が「不適切」などと論争に

「女性が何を着るべきか、他人が指示するのはやめよう」。#imwithsanna(サンナとともに)のハッシュタグで、サンナ・マリン首相を支持する動きも巻き起こっている。
トレンディに掲載されたサンナ・マリン首相の写真
トレンディに掲載されたサンナ・マリン首相の写真
トレンディ公式インスタグラム

素肌に、ブレザー1枚。

10月に発売されたフィンランドのファッション誌「トレンディ」に掲載された、同国首相のサンナ・マリン氏の写真をめぐり、論争が巻き起こっている。胸元が大きく開いた服装から「首相の立場として不適切だ」との批判が上がる一方で、「ファッションを選ぶのは本人の自由」「女性の政治家にだけ服装を『不適切』と言うのは性差別だ」などと、首相を支持する意見も相次いでいる。

どんな写真?

マリン氏の記事が掲載されたトレンディでは、マリン氏が表紙を飾っていた。トレンディは、論争の発端になったマリン氏の写真を公式インスタグラムで公開。シャツなどのインナーを着用せず、光沢のある黒いブレザーを羽織り、首元にはネックレスを着用している。

この写真が公開されると、マリン氏に対してネット上で「首相として不適切」「品がない」といった批判の声が噴出した。

「#サンナとともに」が拡散

トレンディの発行元の担当ディレクターは、CNNの取材に「9日に雑誌が発売された直後、SNSで激しい批判を受けた」「一般化するなら、『(写真が)不適切だ』と言う男性と、『素晴らしい』と言う女性に分かれる」などと述べている。この担当ディレクターによると、同社は以前から、著名な女性たちがインナーを着用せずにブレザーを羽織るスタイルの写真を雑誌に掲載してきたが、今回のような批判を受けたことはなかったという。

CNNによると、政府が新型コロナウイルスの対処をしている時期に、国のリーダーがファッション誌の表紙を飾ったことに対しても「首相の時間の無駄」などと否定的な意見が上がっていたという。

一方で、トレンディの特集が、マリン氏が仕事と家庭生活のバランスを取ることの難しさなどについて語る内容だったこともあり、SNSではマリン氏を支持する声が拡散。マリン氏の写真と同じように、素肌にブレザーを羽織った写真を投稿し、「#imwithsanna」(サンナとともに)のハッシュタグをつけて支持を表明する人が男女問わず相次いでいる。

「女性の政治家はその人自身の行為によってより多く判断されるべきであり、彼らの衣服の選択によって判断されるべきではない」

「女性が何を着るべきかを他人が指示するのはやめよう」

「もしこれが男性だったら、誰も『品がない』とは言わないはず。これはとても明白な性差別だ」

SNSでは、女性や女性の政治家の服装に対して自身の価値観を押し付けたり、否定したりすることに対して抗議する声も上がる。

ロシアのプーチン大統領が、上半身裸で魚釣りをする様子などがメディアで報じられた時に、服装や品位が問題とされなかったことを指摘するSNSユーザーもいた。

上半身裸で魚釣りをするロシアのプーチン大統領(2017年8月)
上半身裸で魚釣りをするロシアのプーチン大統領(2017年8月)
ALEXEY NIKOLSKY via Getty Images

女性の外見「常に論争に」

マリン氏は2019年、フィンランドの史上最年少の首相として34歳で就任した。フィンランド国営放送によると、トレンディのインタビューの中で、マリン氏は若い首相に対する国民の期待にどう向き合うかについて語っていた。

フィンランドのタンペレ大学でジェンダーやメディアについて研究するアヌ・コイヴネン教授は、フィンランド国営放送の取材に対し、「彼女はシャツ無しでブレザーを着ていて、これは首相の役割が何であるかを考えたものです」と考察。「マリン氏の行動は完全な認識の下で行われている。トレンディの記事と写真は、マリン氏が『女性の外見』は常に論争になる問題だという点を認識していることを示しています。だからこそ、彼女は首相として、常に同じ服装をするよう努めているのです」と述べている。

#imwithsannaのタグで、マリン氏への支持を表明するネットの投稿がこちら。

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