足立区議の謝罪、自民党幹事長は「ひとつのケジメはつけた」と説明。当事者はどう受け止めたか

松岡宗嗣さんは、「与党内での性の多様性と差別発言への考え方の甘さを感じざるをえない」と指摘します。
閉会後、囲み取材に応じる区議会自民党の金田正幹事長(左)、工藤哲也副幹事長(右)
閉会後、囲み取材に応じる区議会自民党の金田正幹事長(左)、工藤哲也副幹事長(右)
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

「同性愛が広がったら足立区が滅びる」との趣旨の発言をして批判を浴びた東京都足立区の白石正輝区議が、10月20日の本会議で発言を撤回し、謝罪した。

議会では白石氏に対する問責決議が提出されたが、与党議員らの反対多数で否決された。閉会後に区議会自民党の幹事長が囲み取材に応じ、本人の謝罪や厚生委員長辞任の申し出をもって、「ひとつのケジメはつけた」と説明した。

この問題について発信を続けてきたライターで当事者の松岡宗嗣さんは、「与党内での性の多様性と差別発言への考え方の甘さを感じざるをえない」と指摘する。「今後は少なくとも足立区の政策において、LGBTに関する施策をしっかりと責任を持って前に進めるべき」だと話した。

「認識の甘さ」白石氏の謝罪

白石議員は本会議の冒頭で、「議員として差別的発言と受け止められる表現があり、不快な思いをされた方々、傷つけた全ての方々にこの場をお借りしてお詫び申し上げます。誠に申し訳ありません」と謝罪。

LGBTと少子化問題を結びつけた点などについて、「差別的な発言と受け止められる表現であった」とし、発言の撤回を申し出た。

「LGBTと少子化問題を結びつけた私の価値観を主張した部分が二点。また、結婚においては普通の結婚という自分の価値観を押し付けるような不適切な表現があった点。足立区が滅びるといった点につきましては差別的な発言と受け止められる表現であったとあらためて認識しております。これらの部分については、発言の撤回をさせていただきたいと思います。

この度は私の認識の甘さによりたくさんの方々の心を傷つけ、苦しめてしまったことに対して深くお詫び申し上げますとともに、今回の発言の重さを反省し、今後はLGBTでお悩みになられている方々への性の多様性を受け入れられるよう努力して参りたいと思います」(白石氏)

この日の本会議では、白石氏の責任を問う問責決議が提出されたが、自民・公明など与党議員の反対多数で否決された。

自民党の受け止めは? 「ひとつのケジメはつけた」

白石氏は、体調不良により途中退席。議会の前後でメディア取材などに応じることはなかった。

問題の発言が報じられた当初は、謝罪や撤回などはしない姿勢を示していたが、その後一転して謝罪を決めた理由などは公に述べていない。

区議会の議員登庁表示盤。白石議員は体調不良のため、議会を途中退席した。
区議会の議員登庁表示盤。白石議員は体調不良のため、議会を途中退席した。
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

閉会後、白石氏が所属する自民党足立区議会の金田正幹事長が報道陣の取材に応対。党内で10月9日に総会を開き、所属議員らが白石氏に発言を撤回し、謝罪するよう伝えたという。

白石氏からは、10月16日に厚生委員会委員長を辞任したいという申し出があったという。

金田幹事長は、発言の撤回と謝罪、委員長辞任の申し出をもって「ひとつのケジメはつけた」と述べた。

「与党内での性の多様性と差別発言への考えの甘さを感じざるをえない」

自身もゲイを公表する一般社団法人fairの代表、松岡宗嗣さんは、この問題について発信を続けてきた。

今回の謝罪や、区議会自民党の対応をどう受け止めたのか。

松岡さんは、「最低限、誤りを認めて謝罪をした部分は評価できる」としながらも、「謝罪としては不十分」だと感じたという。

「『差別的な発言と受け止められる表現があった』という言い方は、発言の『受け取り方』によっては問題であるというニュアンスがあり、あの発言自体が差別的だったことを認めていないように見えます。表層的な謝罪のように感じました」

自民党の対応については、「与党内での性の多様性と差別発言への考え方の甘さを感じざるをえず、看過できない」と話す。

「白石議員が委員長を務める厚生委員会は、福祉や衛生に関わることを審議するため、委員長を辞任するのは当然のことではないかと思います。一方で、自民党は今回の発言を問題だとしながらも、白石議員の問責決議案には反対しており、やはりLGBTに関する差別をなくすことには消極的なのではないかと受け取ってしまいます」

「性的マイノリティへの差別が社会の中で根強く残る中で、本来は政治がそうした認識を変えることを主導してやっていくべきなのに、与党の議員が率先して差別的な言動を広げてしまった。そのことを党としてどう受け止めているかということが問われていると思います」

区議会自民党は、白石区議に対する問責決議案が出たことについて「党として重く受け止める」としつつも、議員辞職をする必要はないとの認識を示した。

松岡さんはこの点についても、こう強調した。

「今後も議員を続けるのであれば、足立区の政策においてLGBTに関する施策をしっかり進めるということ、責任を取って前に進めるということを、議員としても党としても率先してやるべきだと思います」

注目記事