「再選率70%」の闘いに臨むトランプ大統領。再選に失敗した歴代大統領の敗因は?【アメリカ大統領選】

アメリカ大統領選を始めとする多くの選挙で、再選(2期目)をかけた闘いは、現職が有利とされている。

アメリカ大統領選挙が11月3日(現地時間)に迫っている。

現職の共和党ドナルド・トランプ大統領の再選か、ジョー・バイデン氏による民主党の政権奪還か。

アメリカ大統領選を始めとする多くの選挙で、再選(2期目)をかけた闘いは、現職が有利とされている。

歴代のアメリカ大統領が、再選を目指して敗れた例はごく一部で、トランプ大統領は実は「再選率70%」の闘いに臨む形となる。

左上から時計回りにブッシュ(父)、オバマ、ブッシュ、クリントン、ニクソン、カーター、フォード、レーガン各元大統領
左上から時計回りにブッシュ(父)、オバマ、ブッシュ、クリントン、ニクソン、カーター、フォード、レーガン各元大統領
Reuters / Getty Image

“再選率”70%

3選禁止の今の大統領制度が導入された1951年以降、再選をかけて大統領選に臨んだ10人のうち、敗れたのは3人だけ。

“再選率”は、70%(10人中7人)となる。

直近のオバマ、ブッシュ、クリントンの3人はいずれも再選している。

一方で、敗れた3人はフォード、カーター、ブッシュ(父)だ。

フォードは国内インフレや不景気、カーターはイランアメリカ大使館人質事件、ブッシュ(父)は公約に反した増税などが、それぞれ敗れた背景として伝えられている。

世論調査では劣勢が伝えられているトランプ大統領だが、大統領選の歴史から考えると、「再選率70%」という有利な闘いに臨む形となる。

歴代大統領で見ると...

では、231年間引き継がれてきた歴代の大統領で比較するとどうか。

再選を目指して大統領選に臨んだのは29人で(※1)、そのうち勝利したのは19人。

歴代大統領の“再選率”は65.5%(29人中19人)となる。

※1=出馬しなかった、公認候補に選ばれなかった、任期中に死亡した大統領を除いています。再選出馬した選挙で敗れ、その次の選挙で返り咲いた22代・24代大統領のグローバー・クリーブランドは、勝利した大統領にカウントしていません。

再選し損ねた10人の大統領は?

歴代大統領のうち、再選をかけた選挙で敗れた大統領は10人。

再選できなかった理由や時代背景を、海外報道やホワイトハウスのプロフィールなどから紐解いてみる。新しい順に紹介する。

▽ジョージ・H.W.ブッシュ(第41代、共和党、1989-1993)

ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領
ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領
ASSOCIATED PRESS

もっとも直近なのがブッシュ(父)。レーガンに続いて、3期連続で共和党政権となった。

在任中は、ベルリンの壁崩壊を経験。BBCによると、湾岸戦争により人気が上昇したが、長期化する経済後退を背景に「増税をしない」という公約を反故にし、共和党内からも厳しい反発を招いたという。第3党の候補者と票が割れ、カリスマ的人気を誇っていた民主党のビル・クリントンに破れた。

ホワイトハウスのプロフィールは「軍事・外交上の勝利による前例のない人気にも関わらず、経済不安や都市部暴力の増加、高額な赤字支出からくる国内の不満を抑えることができず、選挙に破れた」と伝えている。

▽ジミー・カーター(第39代、民主党、1977-1981)

ジミー・カーター元大統領
ジミー・カーター元大統領
Universal History Archive via Getty Images

ホワイトハウスのプロフィールページは、カーターの敗北の2つの要因として、イランアメリカ大使館人質事件と国内インフレをあげている。

解決までに約1年3カ月を要したイランアメリカ大使館人質事件は、カーターの任期終盤と重なり、メディアで取り上げられ続けた。

この事件とアメリカ国内で続いたインフレが、カーターの敗北に繋がったと紹介している。

また、ソビエトのアフガン侵攻によって、ソビエトと結んだ核保有数を制限する第二次戦略兵器制限交渉(SALT II)が失敗に終わったことにも触れている。

▽ジェラルド・フォード(第38代、共和党、1974-1977)

ジェラルド・フォード元大統領
ジェラルド・フォード元大統領
Universal History Archive via Getty Images

そのカーターに破れたフォードは、再選どころか“1選”もできていない。ウォーターゲート事件で辞任したニクソンの後任として就任し、約3年大統領を務めた。2期目を目指して出馬したが、支持を得られなかった。

ホワイトハウスのプロフィールは「インフレや不景気からの回復、慢性的エネルギー不足など、乗り越えらない課題に直面していた」と伝えている

▽ハーバート・フーバー(第31代、共和党、1929-1933)

ハーバート・フーバー元大統領
ハーバート・フーバー元大統領
Handout . / Reuters

フーバーは議会と対立を深め、「冷酷で非情な大統領」という烙印を押された。フーバー自身は、対立勢力が政治的利益のため自身の政策を妨害したと捉えていたという。

「世界恐慌の戦犯とされ、選挙で大敗した」とホワイトハウスのプロフィールは伝えている

他の6人は、以下の通り。

▽ウィリアム・ハワード・タフト(第27代、共和党、1909-1913)

▽ベンジャミン・ハリソン(第23代、共和党、1889-1893)

▽グローバー・クリーブランド(民主党、第22代、1885-1889 / 第24代、1893-1897年)

※再選をかけた選挙では敗れたが、その次の選挙で返り咲いた。

▽マーティン・バン・ビューレン(第8代、民主党、1837-1841)

▽ジョン・クインシー・アダムズ(第6代、民主共和党など、1825–1829)

▽ジョン・アダムズ(第2代、連邦党、1797–1801)

この記事では、歴代大統領の再選状況を分類する上で、ブリタニカ(オンライン)海外報道を参照しています。

現地との生中継。アメリカ人の「心の中」「生の声」は…?

大統領選投票日直後の11月5日(木)夜9時(日本時間)からの「ハフライブ」では、トランプ氏を支持する人々の“心の中”について考えてみることによって、日本にとっても他人事ではない「分断社会のこれから」について話し合います。

番組では朝日新聞機動特派員の金成隆一記者と中継をつなぎます。金成記者は、「ラストベルト(さびついた工業地帯)」とされるオハイオ州トランブル郡ウォーレンにアパートを借り、住み込みながら取材をおこないました。一帯の貧困率35%、薬物依存の犠牲者も少なくないという地域。「もう一つのアメリカ」の生の声を紹介しつつ、今回の大統領選挙を分析してもらいます。

ハフライブ「"暴君"トランプ氏がそれでも支持される理由」
ハフライブ「"暴君"トランプ氏がそれでも支持される理由」
ハフポスト日本版

番組は11月5日(木)夜9時から、ハフポスト日本版のTwitter・Youtubeで生配信します。

番組はこちらから=>

(時間になったら自動的に番組がはじまります。視聴は無料です)

「#ハフライブ」で、皆さんのご意見や番組出演者への疑問・質問をお待ちしています。

出演者:

モーリー・ロバートソンさん(タレント・ミュージシャン、国際ジャーナリスト)

金成隆一さん(朝日新聞機動特派員)

長野智子(ハフポスト日本版編集主幹)

番組パーソナリティー:

辻愛沙子さん(クリエイティブディレクター)

竹下隆一郎(ハフポスト日本版編集長)

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