ボーイスカウトで指導者から性的虐待、アメリカで告発が9万件超える。「通過儀礼だった」

被害者側の代理人弁護士は、「ボーイスカウト内での性的虐待は暗黙の規範があった」と述べている
ボーイスカウトの子どもたちのイメージ写真
ボーイスカウトの子どもたちのイメージ写真
Panama7 via Getty Images

キャンプや街頭募金といった屋外でのさまざまなグループ活動を通じて、子どもたちが主体性や協調性などを学ぶ「ボーイスカウト」。アメリカで、ボーイスカウトに所属する子どもたちが指導者から性的虐待を受けたと告発する動きが広がっている。

「通過儀礼だった」

アメリカの雑誌「TIME」によると、約9万3000人のボーイスカウトの経験者たちが、「ボーイスカウトアメリカ連盟」に対して性的虐待の被害を告発し、損害賠償を請求する申し立てを行った。ニューヨーク・タイムズによると、被害を告発した人は8歳〜93歳。大多数は男性で、一部に女性もいた。

連盟側は、性的虐待の訴訟をめぐって財政負担が膨らみ、2月に破産申請を行っている。裁判所は、被害者が賠償請求を行うことができる期限を11月16日に設定していた。

アメリカでは、カトリック教会での聖職者による信徒への性的虐待が社会問題となった。TIMEはボーイスカウト内での被害の大きさについて「カトリック教会に向けられた性的虐待の告発の数々が思い起こされる」と報じている。

TIMEの取材に、原告側の代理人弁護士の一人であるアンドリュー・バンアースデール氏は「悲しいことに、ボーイスカウト内での性的虐待は暗黙の規範があった」「性虐待のサバイバーの証言によると、子どもたちは切望する功績バッジをもらうために特定の義務を果たさなければならず、(性的虐待は)他のタスクと同様に隊の中での通過儀礼だった」と主張している。

ボーイスカウトアメリカのユニフォームとメリット・バッジ
ボーイスカウトアメリカのユニフォームとメリット・バッジ
AmyKerk via Getty Images

「痛み、元に戻せない」

ロサンゼルス在住のジル・ゲイルさん(58)は、1970年代に2回性的な虐待を受けたと訴えている。ゲイルさんはCNNの取材に、「多くの(被害の)証言が人々の注目を集め、他の子どもたちが自分たち被害者のように暴行されるのを防ぐことができてうれしい」と語っている

CNNなどによると、連盟は声明で「私たちは、ボーイスカウトでの過去の虐待によって影響を受けた命の多さに打ちのめされ、声を上げた人々の勇気に感銘を受けている」「私たちは彼らの痛みを元に戻すことができないことに打ちひしがれている」などと述べている。

連盟の全国会長を務めるジム・ターリー氏は、公開書簡の中で被害者に謝罪。「あなたに起こったことを元には戻せないが、私たちはあなたをサポートし、他の人に性的虐待が起こらないように全力を尽くすことを約束します」と記している。

アメリカのボーイスカウトは1910年に設立され、これまでに約1億3000万人がプログラムを経験。現在約220万人の会員がいる。

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