ゲイ暴露被害で転落死、一橋大アウティング事件は二審も大学側の責任認めぬ判決

「大学側の義務違反は認められない」とした2019年2月の東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。

ゲイであることを同級生に暴露(アウティング)された一橋大の法科大学院生(当時25歳)が2015年8月に校舎から転落死したのは、大学側の対応が不十分だったのが原因として、両親が大学側に賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11月25日、東京高裁であった。

村上正敏裁判長は大学側の「安全や教育環境への配慮義務違反は認められない」とした2019年2月の東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。両親は約8576万円の損害賠償を求めていた。

判決などによると、亡くなった学生は、自分がゲイ(男性の同性愛者)であることを家族にも明かしていなかった。2015年4月、恋愛感情を抱いた同級生に告白。告白によって知った同級生がその年の6月、法科大学院の同級生たちのLINEグループに「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と送信。学生がゲイであることを同意を得ずに暴露(アウティング)した。

大きなショックを受けた男性はその後、授業などで暴露した同級生と顔を合わせるとパニック発作が起こるようになる。2015年7月から心療内科を受診、不安神経症やうつ、パニックなどの診断を受けて薬を処方されていた。

一方で男性は大学の教授や大学のハラスメント相談室にも被害を申告。「同級生を見ると吐き気がしたりパニックになったりする」と訴えた。原告側は、被害を知っていた大学側はクラス替えなどの措置をすべき義務があったなどと主張していた。

また、男性が建物から転落死したのは、大学のハラスメント相談室で相談員の面談を受けた直後だった。男性は授業に向かったが、原告側は「授業に出席させないなど自死を防ぐ手立てをしなかった」として義務違反を訴えていた。

また、控訴審では加えて、クラス替えやグループ分けの変更など、アウティングした側の学生との接触を防ぐ措置を大学側にはする義務があると訴えていた。

アウティングは「許されない行為」

高裁判決では、一審より踏み込んで今回のアウティング自体については人格権やプライバシー権を著しく侵害する「許されない行為」であると判断した。

一方でアウティングや転落死が大学側の「安全配慮義務違反により発生したとはいえない」として、損害賠償請求は認めなかった。

両親は当初、アウティングをした同級生も提訴したが、一審で2018年に和解している。

注目記事