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2020年12月02日 11時46分 JST | 更新 2020年12月07日 10時22分 JST

家事をやった気になって「いばる夫」問題。妻の感情とのギャップはどうして生まれる?

コロナ禍の今、在宅で家族と過ごす時間が増え、「いばる夫」にモヤモヤを抱く人は多いのではないだろうか?

「しない家事」へのニーズとは?

「この頃、夫がうるさいのよ。『あれ、元の場所にしまっていなかったね』とか。在宅勤務になって私がやっていることを見ているうちに、家のことが少し分かるようになったからでしょうね」と言うのは、共働き歴30年の友人。彼女の夫は家事をしない人だ。コロナ禍の今、在宅で家族と過ごす時間が増え、彼女のようなモヤモヤを抱く人は多いのではないだろうか?

Miyuki Yamamoto / HuffPost Japan
家事分担、体感にはこんなに差が…(グラフはパナソニック株式会社 コンシューマーマーケティング ジャパン本部の調査を基にハフポスト作成。「緊急事態宣言中」の意識調査)

在宅生活における、夫婦の意識の違いを浮き彫りにしたアンケートがある。パナソニックが2017年から実施している「30代・40代夫婦のライフスタイル調査」がそれ。今年は6月26日~7月3日に実施され、関東1都6県と関西2府4県に住む30~49歳の男女1,392人が回答した。

この中で男女の大きな違いを生んだのが、「しない家事」へのニーズだ。しない家事とは、家事代行サービスや家電を使って家事を減らすことである。

「家事代行を使えば時間・心の余裕が生まれると思う」という設問に対し、「はい」と答えた女性は2019年の調査から6・9%増えて66・0%になったが、男性は9・7%も減って51・9%になっている。「家事を家電に任せれば時間・心の余裕が生まれると思う」という項目についても、女性は2・8%増の82・5%だが、男性は7・1%も減って64・3%となっている。なぜこのような差が生まれるのだろうか。

家事で疲れていると回答した女性は、2019年に比べて増えたが、男性は減っている。そして、家事分担をするべきと考える男女が減っている。その結果に対し、同アンケートは「『以前よりも家事の負担が増えているけれど、パートナーに期待するよりも自分でやってしまったほうが早い』と諦めの境地に達してしまった、すなわち“諦め妻”が増えているのかもしれません」と分析している。

こうしたことから同アンケートは、「しない家事」のニーズについて、男性は「在宅期間中に普段より多くの家事を担ったことが自信につながり、妻にどれだけ負担増加が生まれているかを想像せず『夫婦だけでも十分に回していける』と結論づけてしまった可能性が考えられます」と分析している。

パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティング ジャパン本部の調査より
それぞれの視点からみた家事分担の比率はこんなに違っていた

 

ここで表れた男女の意識の乖離は、先月ご紹介した「名前のない家事」問題と直結している。          

 

「誤った自信」を持った夫たち

家で過ごす時間が増えると、当然ながら、家事の量は増える。3食家族そろって食べる、人がいるので家の中が汚れる、散らかるといったことが原因だ。

また、ふだんから家事をメインでやっている人は、改めてやるべき家事を発見してしまうかもしれない。例えば、ふだんは掃除機をかけるだけなのに、窓が汚れていることに気づく。洗面所に垢汚れが溜まっていることに気づく。片づけ方を工夫したくなるといった具合だ。そうしたよりていねいに家を整える家事は、やったところで家の中が劇的に変わるわけではない。そして必ずしも長時間を要する家事だけでなく、よりこまめに動くといったレベルに過ぎないものもあるため、当人外の家族はその人がふだんより働いていることに気づきにくい。まさに名前のない家事が増えるのだ。

たしかに、ふだん家にいる時間が少なかったパートナーは、コロナ禍で家にいる時間が増え、ふだんより家事を多く担当したかもしれない。より家のことに参加した手応えが、夫婦で家事を回せる自信につながった可能性はある。あるいは冒頭に挙げたカップルのように、自分は手を出さないものの、家事がどのように行われているのか気づき、分かったつもりになった人もいるかもしれない。しかし、そうした「誤った」自信は、ふだんの夫婦関係から生まれてきた可能性がある。

Maskot via Getty Images
イメージ写真

諦めて家事をする妻たち

長年一緒に暮らすうちに、些細な言動が積み重なって関係性に大きな影響を及ぼすことは多い。家事について、妻はふだんから「あなたは家のことを何もわかっていない」「どうしてもうちょっと家事をやってくれないの」といった言葉を夫に投げかけているかもしれない。パートナーの家事能力が低かったり、家事への理解がないと、メインでやっている人はつい愚痴りたくなるし、相手にぶつけたくなる。その言葉はしかし、相手に精神的負担を与えているかもしれない。                         

コロナ禍で家事の量が増えた、と感じたのは女性だけではない。先のパナソニックのアンケートによれば、「在宅勤務をしていると、家事の総量が増えますか?」という問いに対し、女性は50・1%もの人が「そう思う」と答えているが、男性も36・6%の人が「そう思う」と答えている。女性より少ないとはいえ、家事が増えたと感じている男性もいるのだ。それは、彼らが実際にふだんより家事をしたからで、「もうちょっとやってくれたらいいのに」という妻の愚痴に対し、彼らは応えた実感があるのではないだろうか。

家事の総量が見えている妻には、そうした夫の参加を全体のほんの一部と感じているかもしれないが、自分がやっている家事しか見えていない夫は、ふだんの2倍3倍働いた気になっているケースも考えられる。その場合、夫はやった自分を認めて欲しい、あるいは今こそ期待に応えたと思っているのではないだろうか。

もしかすると、こうした妻たちは、家事に関してはパートナーを自分と同等の相手と見なさず、まだまだ発展途上の成長期にある、と見方を変える必要がある可能性はある。もしここで、「全然わかってない」などと否定してしまえば、相手の意欲は下がり、かえって自分の負担を増やしてしまう危険がある。

実際、パナソニックのアンケートでは、あきらめて自分の家事を増やそうと考える妻が多くなっている。確かに分かってくれない相手に、交渉を続けるのは本当に疲れる。しかし、それは自分の首を絞めるだけではないだろうか。

ここはむしろ、パートナーがふだんより家のことに関心を寄せたこと、ふだんより多くの家事をやったことを認めてはどうだろう。能力ゼロに近いところから出発した夫の、家事に関する成長は、子育てと共通したものがあるとみなし、遠い将来の理想形を見据えて、次へ導く道を探るのが得策と言えるのではないだろうか。

(編集:榊原すずみ