ネット中傷被害者支援条例、群馬県で全国初。どんな内容?

ネット上の誹謗中傷に苦しむ被害者の精神的なケアに取り組むことを明記している
誹謗中傷の被害に苦しむ人たちへの相談体制の整備などが盛り込まれた
誹謗中傷の被害に苦しむ人たちへの相談体制の整備などが盛り込まれた
作成:HuffPost Japan

ネット上の誹謗中傷に苦しむ被害が後を絶たない中、被害者支援について定めた全国初の条例が群馬県議会で可決、成立した。SNS上の嫌がらせやプライバシー侵害などで、精神的に追い詰められる人たちを支える目的がある。どんな内容なのか?

基本的施策として

・被害者の心理的負担の軽減を含めた相談体制の整備

・県民の年齢、立場などに応じたインターネットリテラシーの向上に資する施策

を定めている。

弁護士、臨床心理士につなぐ

具体的に、どのように被害者を支援するのか?

基本的施策の一つ「相談体制の整備」で、県は県弁護士会と連携し、被害者からの相談内容に応じて弁護士を紹介する。

誹謗中傷などを書き込んだ発信者の情報開示の手順、書き込みの証拠保存、書き込み削除の手続きなどの助言を受けることができる。県によると、弁護士への相談は、1人1回(40分程度)が無料になる。

さらに、中傷されたことで精神的なダメージを訴える人に対しては、本人の希望があれば県が臨床心理士とつなぐ。精神的な被害回復をサポートし、1人3回まで無料になるという。

条例の成立に先立ち、県は10月からネット中傷に関する無料相談窓口を開設している。窓口で直接相談できるほか、電話やメールでの相談も可能だ。中傷被害を訴える人だけでなく、「自分が加害行為をしているかもしれない」といった相談にも対応するという。

罰則なく

条例は「被害者は、特にインターネット上の誹謗中傷またはプライバシー侵害により心理的、身体的にも大きな負担を強いられている」と明記。「県民の誰もが被害者にも加害者にもなり得るという認識のもと、私たちは、被害者に寄り添い、被害者の視点に立った支援を行うことが不可欠だと考えている」と強調している。

群馬県の山本一太知事は、6月の記者会見で「学校のいじめもネット上にあるなど被害を受けている人は多い。(条例などにより)根も葉もない誹謗中傷やデマを減らしていく」と述べていた

群馬県の山本一太知事
群馬県の山本一太知事
時事通信社

一方で、条例には加害者に対する罰則規定はない。

県戦略企画課の担当者は、ハフポスト日本版の取材に「罰則規定に関して議会でも議論されたが、侮辱罪や名誉毀損罪などの刑法上の規定に加えて条例で盛り込むことはハードルが高かった。今まさに精神的に追い詰められている人に向けて、相談先をいち早く示すことを優先した」と説明している。

SNSの中傷をめぐっては、フジテレビ系のリアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが、ネット上で誹謗中傷を受けた後に亡くなるなど深刻な被害が問題になっている。

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