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2020年12月24日 07時52分 JST | 更新 2020年12月24日 07時52分 JST

不妊治療のやめ方が、その後の人生に影響する…。たくさんの人たちの話に耳を傾けて思うこと

「マダネプロジェクト」を主宰するくどうみやこさんに、これまでマダネプロジェクトに集った女性たちの不安や葛藤に耳をかたむけてきて感じること、考えることについてインタビューした。

RUNSTUDIO via Getty Images
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43歳の誕生日を迎えた朝、相変わらず未婚である私は子どもを持つことを諦めた。

「子どものいない人生を送るんだ、私は」

そう呟いて、その言葉の重さに自分で驚いた。

 

それからしばらくして、私は「マダネ プロジェクト」の存在を知った。

様々な事情から、未婚もしくは結婚していても子どものいない女性。そんな「子どものいない人生」を送ることになった人たちが集まって、それぞれの思いを語り合ったり、耳を傾けたりする会などを開催しているのだという。

 

その主宰者が、くどうみやこさんだ。

自身も子どもがいない人生を送っている。

 

子どもを持たない覚悟を決めた私は、どうしてもくどうさんに話をきいてみたくなった。

前編では、くどうさん自身の「子どものいない人生」について、今回の後編ではくどうさんがこれまで「マダネ プロジェクト」に集う女性たちの不安や葛藤に耳をかたむけてきて感じること、考えることを聞いた。

「マダネ プロジェクト」の主宰者・くどうみやこさん

――病気で子どもを産めないとわかったことが「マダネプロジェクト」の立ち上げのきっかけとなったんですか?

そうですね。もう子どもがいない人生が決まったのだから前向きに歩んでいきたいと思ったとき、同じ立場の人たちがどんな気持ちでいるのか知りたくなったんです。当時は、子どもがいない人のための本や、特集が組まれている雑誌などもあまりありませんでした。私は自分が子どものいない人生を送ることになるなんて思っていなかったので、子どもを持たないまま年を重ねていくイメージが持てなかったし、まわりにロールモデルもいませんでした。ないんだったら、自分で作ればいいと思ってはじめたのが「マダネ プロジェクト」です。

子どものいないことは、とても繊細な話題だからこそ、まわりにも気軽に聞けないでしょう?

 

――プロジェクトをはじめて、同じ立場の人たちの話を聞いてみてどうでしたか?

私は、プロジェクトを始めた頃には、だいぶ前向きな気持ちになれていたけれど、参加者皆さんの思いを1人ずつ聞いた時に、想像を超えた苦しみを抱えている人がいるんだと気付かされました。

例えば、夜にしか外出できない、という人。昼間の街中はベビーカーを押す人が多いから歩くことができないって。それから、夫婦ふたりで犬を飼っていることを周囲に話せないという人もいました。「子どもの代わりに犬をかわいがっている」と思われてしまうのが嫌だからというのが、その理由。みなさん、涙をこぼしながらお話になるんですよ。

様々な事情で子どもを持てなかった人たちの苦しみと本音を聞き、同じいない人同士でも、知らない思いがあるんだなと知り、このプロジェクトの意味みたいなものが見つかったように思っています。

 

――「マダネプロジェクト」には、夫婦だけではなくて、私のような未婚で子どもがいない人も参加できるのですか?

もちろん、参加できますよ。

参加条件は、「子どもがいない女性」ということだけですから、結婚していても、していなくても関係ありません。みんなそれぞれ、自分の人生について見つめ直したり、本音を交わしあったり、しています。

会の告知などはFacebookでしていて、すぐに埋まってしまうんですが、ぜひきてみてください。

 

――私は以前、不妊治療のやめ時について取材をしたことがありまして、それ以来、「子どものいない人生」の行方に大きな影響を与えるのが、不妊治療なのではないかと感じているのですが

そうですね。不妊治療をした経験があるか、ないか、あるとしたら、どのくらいされたかによって、「子どものいない人生を送る」ことへの気持ちの切り替えにかかる時間や、思いの深さが違うというのは実感しますね。

子どもが欲しい気持ちが大きいからこそ、お金や時間、さまざまなものを使って治療という大きな一歩を踏み出すわけですから、なかなか切り替えが難しいのだろうなと思います。

 

――不妊治療はやめ時が本当に難しいといいますよね。以前の取材では、10年を超えて治療をなさっている方もいらっしゃいました。

欲しい気持ちか強ければ強いほど、治療にかける時間は長くなる方がおおいですね。長ければ長くなるほど、それだけお金と時間を費やしているということになるので、「次でやめよう」と思うのだけれど、結果が出なかったら「じゃあ、あともう1回だけ」となってしまうという方がどれだけたくさんいることか。そうやって、少しずつ延びていくんですよね。だって、「治療をやめる」ことは「子どものいない人生が確定する」ということだから。

私の場合は、自分の意思ではなく、病気で確定してしまったわけだけれど、不妊治療の場合は「ここでやめる」という夫婦の2人の意思が必要になる。妻と夫で温度差があったり、やめようと決心するきっかけやタイミングが異なったりすることもあるので、本当に難しいですよね。

ただ、皆さんの話を聞いていて思うのは、「自分が納得するまで治療できた方が、その後の気持ちの切り替え」が、もちろん簡単ではないけれど、スムーズな印象があります。「できることはやった」と、自分の中で気持ちが消化できるところまで頑張った方は、現実を受け入れる心持ちになるのが早いというか…。

人によっては、経済的な理由で途中で治療を断念せざるを得なかったり、体外受精まででやめたけれど、顕微受精まですれば子どもができていたかもしれないという思いをずっと抱え続けていたり…、どこまでいけば納得できるのかというのはとても難しい問題ではあるのだけれど、ある程度納得いくところまで、できることをなさった方は、「これ以上は無理だったんだよ」とその後の人生を受け止めている気がしますね。

だから、治療を始める前に、自分が納得できるポイントを先にきめておくことも大事なのではないかなと、みなさんとよくお話ししています。そうでないと暗いトンネルから抜け出せなくなってしまうから。

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――不妊治療をなさった方だけが、苦しい思いをしているわけではないでしょうしね。

本当にそうですね。みなさん、事情、理由はそれぞれです。体の問題で産めなかった人、選択的に産まなかった人でも、本当にそれでよかったのか考え続けている人もいます。

世間からは「少子化なのに…」と言われ、それなのに産まなかった、産めたかもしれないのに産まなかったのはどうなんだろう、と考えてしまって「選択的に産まなかったです」と告白できない人もいます。「え、なんで? どうして産まなかったの?」と聞かれて、その度に説明するのが苦痛だとか。子供どもは欲しかったけれど、なかなか結婚の縁に恵まれず、1人で産む勇気は持てなかったという人もいます。

子どもがほしくない、好きじゃないと思う自分がおかしいのかなと悩む人も案外多いんですよ。みんなが子どもを見て「かわいい」と言っている中、自分はそう思えず孤独感を感じていたり、榊原さんのようにいつのまにか年齢的なリミットが近づいてきてモヤモヤと考えてしまったり。

本当に、みんなそれぞれの思いを抱えているんです。

 

――このテーマを追いかけはじめてつくづく思いますが「結婚する・しない」「子どもを産む・産まない」って、女性の人生にとって大きなテーマですね。

皆さん、表面に見える気持ちはごく一部で、その奥にはいろんな想いが埋もれている。顔を出して、人々の前でその想いを言えない方の方が多いので、話を聞いて、代弁していくことが私の使命だと思っています。結婚していない、子どもがいない、いろんな想いを抱えて、一生懸命生きている人がいるんだよって。

 

――私も自分の「未婚・子なしコンプレックス」を書いて、それをテーマにいろいろな人に話を聞くようになってから、人それぞれ事情を抱えていて、見込んでいる理由も、産まない理由も、産めない理由もつではないのに「未婚の人」「子どもがいない人」と一括りにされがちだなと感じます。

また子どもがいる人たちはママコミュニティができたり、「働きながらの子育ては大変」と声がまとまりやすいけれど、結婚していない人、子どもがいない人はそういうコミュニティと繋がることはあまりないですし、事情がそれぞれな分、声や想いが可視化されにくいなと感じます。

「(子どもがいない人は)自由でいいよね」「気楽でいいよね」と心ない言葉をかけられることもありますしね。子育ての大変さは理解されているけど、いない人の苦悩にはあまりスポットがあたらず、偏見を持たれることが多い。ただ、反論しても仕方ないというのもみんなわかっているから。「スルー力」と会に集うみなさんとよく話しています。

たしかに、子どもがいる人はネットワークがつながりやすいけど、いない人は横のつながりができにくい。テーマが繊細だから、いきなり話すのはどうかなというのもあるし、傷ついている人こそ本音を言えない。だから、苦しい人は「マダネ プロジェクト」みたいな会に一歩踏み出して参加してみると、「子どもがいるからといって家族の完成形でもないし、幸せは人それぞれ違う」「同じ子どもがいない人でもいろんな価値観がある」という現実に触れることができて、自分が少し変われるかもしれないですよ。

 (取材・文:榊原すずみ/ハフポスト日本版)