厚労省、生活保護は「ためらわず相談を」とサイトで広報⇒支援者から歓迎の声

背景には、最後のセーフティネットである生活保護の受けづらさがある。困窮者や世間の持つマイナスイメージと、自治体の「水際作戦」だ。
「生活保護を申請したい方へ」と題した厚労省公式サイトのページ
「生活保護を申請したい方へ」と題した厚労省公式サイトのページ
厚労省公式サイトより

厚労省が12月22日、「生活保護を申請したい方へ」と題したページを公式サイトで新たに公開した。「ためらわずにご相談ください」として各自治体の福祉事務所を紹介、「よくある誤解」なども紹介。国からの積極的な広報に生活困窮者を支援する団体関係者から評価する声が上がっている。

背景には何があるのか。厚労省や支援者に話を聞いた。

「コロナ禍の年末年始、早めの相談を」

このページでは、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と大きく書かれている。

さらに、「よくある誤解」として、「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」「住むところがない人でも申請できます」「持ち家がある人でも申請できます」「必要な書類が揃っていなくても申請は出来ます」という事例をあげている。

厚労省保護課はハフポスト日本版の取材に「「コロナ禍での年末年始が近づく中、早めに相談していただくほうがいいのではないかと考え、こうしたページを公開しました」と経緯を説明する。年末年始は開かない自治体の相談窓口も多いため、この時期の呼びかけに繋がったようだ。

「申請しづらいという話は利用者の方から聞いていますので、生活保護についての誤解を分かりやすく説明するよう努めた」という。

生活困窮者の支援をしている一般社団法人つくろい東京ファンドの代表理事・稲葉剛さんがこの厚労省公式サイトのページについて12月23日にツイートすると、大きな話題を呼んだ。同日午後5時までに1.2万回以上リツイートされている。

背景にマイナスイメージや自治体の「水際作戦」

稲葉さんはハフポスト日本版の取材に「生活保護の申請は権利だというのは言ってみれば当たり前のことなのですが、厚労省の方で積極的にこうしたページが作られたことはとても評価できますし大歓迎です」と話す。

これまでの状況を、稲葉さんはこう説明する。

「生活に困っているのに生活保護を利用できず餓死されたり、食べるものがなくて万引きしてしまうという事件はこれまでも起こっています。その背景には、最後のセーフティネットである生活保護の受けづらさがありました」

12月にも、大阪市にあるマンションの一室で、餓死したとみられる高齢の母親と娘の遺体が見つかった。毎日新聞によると、水道やガスは止められ、財布には現金が13円しかなかった。生活保護は受けていなかったとみられている。

稲葉さんは生活保護の「受けづらさ」には2種類ある、と言う。

ひとつ目は、今も自治体によっては行われている「水際作戦」。相談にきた人に対し、自治体側が「家族に相談してからでないと受けられない」「住民票のある自治体に行ってください」などと不当に求めることだ。

「こういったことは今でも自治体によっては行われています。私たちも厚労省に改善するよう求め、厚労省も通知は出していましたが、なかなか改善されてきませんでした」と稲葉さんは話す。

さらに、今回厚労省が「よくある誤解」として掲載したものは、「こうした水際作戦でよく行われているものです」とも指摘。「ただ、今回『よくある誤解』を紹介したことで、生活保護の相談で不当なことを求められた時、『厚労省のサイトに違うと書いてある』と言い返すことができるでしょう」

「受けづらさ」のもう一つは、社会や生活困窮者自身の生活保護に対する誤解やマイナスイメージだ。

コロナ禍で困窮し、所持金が数十円、数百円になってしまっていても、「生活保護以外の手を使いたい」と言う人を、稲葉さんは何人も見てきた。

「支援で苦労することがよくありました。こうしたイメージを変えるためにも、厚労省が広報を行うことは重要です。今後もより積極的な広報を求めていきます」

「自助や共助は限界」

コロナ禍では、感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が、厚労省の調査で7万7千人を超えた。

年末年始は閉店する店や事業所が多く、日雇いの仕事が激減。生活に困窮する人は増える。さらにコロナ禍で、路上に押し出されてしまう人は増えるのではないかと稲葉さんは予想。他の支援団体にも相談が増加しており、警戒を強めている

「何より、自助や共助は限界に来ている。公助にももっと積極的な関わり方をしてほしい」。稲葉さんはそう求めている。

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