「嘘100回以上。会社の社長だったら辞職」。辻元清美議員の指摘に安倍晋三前首相は...

虚偽答弁を繰り返したことについて「議員辞職に値すると思いませんか」と質問。安倍氏は自らに「道義的責任がある」としたが、議員辞職は否定した。
辻元清美議員、安倍晋三前首相
辻元清美議員、安倍晋三前首相
時事通信社

「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題で不起訴処分となった安倍晋三前首相への質疑が12月25日、衆議院の議院運営委員会で行われた。立憲民主党の辻元清美議員は、虚偽答弁を繰り返したことについて「議員辞職に値すると思いませんか」と質問。安倍氏は自らに「道義的責任がある」としたが、議員辞職は否定した。

安倍氏は過去の答弁で、「桜を見る会」前日の夕食会での費用の一部について、安倍氏側が補填した事実は「全くない」などと述べていた。しかし、11月に一転して不足分の補填を認め、12月24日の会見では「これらの答弁の中には事実に反するものがございました」と謝罪した。衆院調査局の調べによると、「事実と異なる」答弁は少なくとも118回に及んだという

辻元議員は質疑で、「民間の企業を考えてみてください。社長が公の場で虚偽、嘘の説明を100回以上やって、社員に騙されましたと言い訳をして通用しますか?」と指摘。「ご自分の過ちは民間常識、コンプライアンスの基準に照らしたら、議員辞職に値すると思いませんか?」と問いただした。

安倍氏は、「会計処理等が私自身が知らない中で行われていたこととはいえ、当然私に道義的責任があると考えております」と説明。過去の答弁について、「私の認識の限りにおいて答弁をしてきたのではございますが、しかし結果としてその答弁が間違っていたということでございますので、その責任はひとえに私自身にある」と自らの政治的責任を認めた。

その上で、進退については「反省の上に立って国民の信頼を回復するためにあらゆる努力を重ねていきたいと考えている」と述べるにとどめ、議員辞職は否定。「より身を一層引き締めながら研鑽を重ねていく。初心に立ち返り努力をしていきたいと考えております」とした。

Twitterでは、 安倍氏が不起訴処分になったことに対する抗議ハッシュタグ「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」が広がっている。

質疑は以下の通り(一部)。

―総理は先ほど「私の政治責任は極めて重い」と仰いました。私が予算委員会で質問した時も、「私がここで総理大臣として答弁するということについては全ての発言に責任が伴う」と仰いました。国民の中には議員辞職に値するのではないかという声があることを承知していますか

承知をしております。

―例えばですね、民間の企業を考えてみてください。社長が公の場で虚偽、嘘の説明を100回以上やって、社員に騙されましたと言い訳をして通用しますか?社員には責任をとらせて、自分は何も身を切らずに「初心に帰って全力を尽くします」。こんなことが許されると思いますか?民間の企業なら、コンプライアンス失格、社長は辞職だと思いますよ。これ以上のことをあなたはこの立法府でやったという自覚がありますか?ご自分の過ちは民間常識、コンプライアンスの基準に照らしたら、議員辞職に値すると思いませんか?いかがですか

大変今厳しいご指摘を辻元議員からいただきました。確かに会計処理等が私自身が知らない中で行われていたこととはいえ、当然私に道義的責任があると考えておりますし、また責任者に確認をした中において、私の認識の限りにおいて答弁をしてきたのではございますが、しかし結果としてその答弁が間違っていたということでございますので、その責任はひとえに私自身にあるわけでございます。その上において今回の出来事の反省の上にたって国民の信頼を回復するためにあらゆる努力を重ねていきたいと考えているところでございます。より身を一層引き締めながら研鑽を重ねていく。初心に立ち返り努力をしていきたいと考えております。

―民間の会社だったら通用しないし、そんな会社信用を失って潰れてしまいます。私は日本を潰したくないです。今新型コロナウイルスの感染症が広がり、ここで総理大臣が答弁する言葉が嘘だったら、感染症対策でもしも嘘が、官僚に騙されました、秘書に騙されました。命に関わる答弁に繋がるかもしれない。国会で虚偽の答弁をするということはそういうことなんですよ。道徳心とか愛国心、人一倍仰っていたじゃないですか。子供の教育にも悪いです。けじめをつけて議員辞職なさる。いかがですか

この厳しいご指摘をいただきまして、反省の上に立ってそうしたご批判を拳拳服膺しながら信頼を回復するための努力を重ねていきたい。そして、私に課せられた責任をしっかり果たしていきたい。また、一議員として国家国民の期待に応えていくことができるように全力を尽くして参る決意でございます。

―総理は昨日、国民から見て一点の曇りもないように透明性を確保していく。私自身が責任をもって徹底していく(と言った)。焦点の一つだった明細書明細書について、総理は相変わらず公表を求められるような発行をホテルはしないと言っている。これ秘書が確認したんでしょ?その秘書はあなたに嘘の説明をしていたわけですよね?この二つのホテルは明細書について要求があればNHKのインタビューにかつてから再発行すると。そしてANAインターコンチ(ANAインターコンチネンタルホテル)は7年間再発行できるというようなことを答えていますよ。透明性を確保するのであれば、あなた自身がホテルにこの明細書を請求して、本委員会に提出してください。

ANAホテルに確認をとった秘書はですね、私が確認した秘書とは別の秘書で責任者としては違う。今回責任をとって辞めた秘書とは別のものではございますが、その上で申し上げますと、最初に申し上げた営業上の機密ということについてですね、明細書を出さないという立場が変わっていないと私は承知しております。いずれにせよ、こうした明細書についてもおそらく検察側もしっかりと把握した上において今回の判断を下しているものと考えるところでございます。私共といたしましても、すでに先ほど申し上げましたようにお支払いをした全体総額については黒岩議員とのやりとりにおいてすでにお話をさせていただいているわけでございます。明細書の中がどうあれ、それは今回の検察側の判断は変わらないわけでございまして、私たちがことさらその明細書を隠さなければいけないという立場では当然ないわけでございます。すでに事務所において補填を行なっているということは明確にさせていただいている。訂正をさせていただいているわけでございます。

これまでの経緯は?

「桜を見る会」は、国の予算を使って首相が主催する花見行事で例年4月に開催されてきた(菅義偉首相は、2021年以降は中止すると表明している)。

今回問題になっている「桜を見る会」の前夜祭は、2013年から「安倍晋三後援会」が主催し、東京都内のホテルで開いていた。

NHKによると、ホテルに支払った費用総額の一部を、安倍氏側が補塡していたとみられるが、補填額の大半は、政治資金収支報告書に記載されていなかった。

安倍氏周辺は補填を否定していたが、毎日新聞によると、11月24日、一転して不足分の補填を認めた。だが、領収書は見つかっておらず、廃棄された可能性が報じられている

時事通信によると、東京地検特捜部は、安倍氏の公設第1秘書が後援会の収支報告書に懇親会の収支を記載しなかったとして、政治資金規正法違反の疑いで捜査を進めていた。

その一環として、安倍氏側に、安倍前首相本人の任意での事情聴取を要請。安倍氏は12月22日までに任意聴取に応じていた。12月24日に安倍前首相の不起訴が決まった。

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