男の子にも生理について教えるべき? SHELLYが実践している性教育のステップ

「男性には生理がないから知らなくていい、なんてことはありえない。母親や姉妹など身近な女性の体の仕組みについて正しい知識を持つのはとても大切なこと」。「ずっと性の話をしたかった」というSHELLYさんインタビュー、第二回です。
SHELLYさん
SHELLYさん
KAORI NISHIDA/西田香織

「赤ちゃんはどうやってできるの?」

子どもにそう聞かれたら、なんと答えますか?

正しい知識を教えたい。でも、どう伝えればいいかわからない。

そんな風に戸惑っている子育て世代は多いはず。

若い世代に向けて性教育をテーマにしたYouTubeチャンネル「SHELLYのお風呂場」をスタートさせたタレントのSHELLYさんは、「セックスの話だけが性教育じゃない」ときっぱり言い切ります。

「私の体は私のもの、あなたの体はあなたのもの。まずはそこが性教育の出発点。娘たちには2歳半から伝え始めました」と語るSHELLYさんに、日々の生活でどんな風に性教育を実践しているか、話を聞きました。

まずは「プライベートゾーン」を知ることから

SHELLYさん
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KAORI NISHIDA/西田香織

私には4歳と2歳の娘がいます。最初に性のことを意識的に教えたのは、長女が2歳半のとき。「プライベートゾーン」を教えるところからでした。

一緒にお風呂に入っているときに、「水着で隠れるところは、特別な場所なんだよ。あなただけの大切な場所だから、誰かが触ろうとしてきたら『いやだ!』ってきちんと言おうね」って。

性教育の現場ではよく言われていることですが、お風呂場って性について話すのにぴったりな場所なんですよ。お互い裸でリラックスしているし、距離も近いからオープンに話せる。YouTubeチャンネルの名前(「SHELLYのお風呂場」)もそこから名付けました。

実は最初にプライベートゾーンの話をするとき、内心すごくドキドキしてたんですよ。親として、性のことについて子どもに話す初めての機会だったから。

でも子育ての先輩である姉や、仕事でお会いした専門家の方々の話を聞いていたので、早い段階から性教育を始めようということはずっと決めていました。プライベートゾーンの大切さを伝えることで、「自分の体は自分のもの」という意識を幼いうちから持ってほしい。

私の「NO」もあなたの「NO」も大切に

SHELLYさん
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KAORI NISHIDA/西田香織

次のステップで実践したのは、「他の人にもプライベートゾーンがある」と教えることです。

たとえば、娘がふざけて私の胸を触ってきたら「そこはマミー(SHELLYさん)のプライベートゾーンだからやめてね」と優しく、でもきちんと伝えます。スキンシップはもちろん大切なことだけれども、プライベートゾーンに限らず他人に触られるのが嫌な体のパーツってありますよね。それも我慢しないで伝えていい。

赤ちゃんのときは別として、親子だからといって相手の体のどこを触ってもいいわけじゃないんです。親という一番身近な練習台を通じて、他人の体を大事にすること、相手の意志を尊重することを少しずつ学んでもらえたら、と思っています。

自分のプライベートゾーンを守るために「NO」を伝える。

相手の「NO」を受け入れることで他人の意志を尊重する。

性別に関係なく、この2つは絶対に身につけてほしいスキルです。

これができないまま成長すると、相手を喜ばせるために自分を削ってしまったり、逆に他人の意思を尊重できない大人になってしまうかもしれないでしょう?

姉妹ゲンカも「やめて」は1回まで

日常のやり取りの中でも、「『やめて』は2回言わせない」ルールを心がけています。

たとえば、姉妹ゲンカ。私は子ども同士のケンカには基本的に口を出さないようにしているのですが、どちらかから2回めの「やめて!」が聞こえてきたら、まずはいったん止めて、「事情が何であれ、2回めの『やめて』を相手に言わせるのは絶対にダメ」と教えています。

性とは直接関係ないことでも、あなたの「NO」には力があるんだと伝えたい。子どもをひとりの人間としてリスペクトする姿勢を表すことで、「私はリスペクトされるべき存在なんだ」と理解してもらいたいんです。

SHELLYさん
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KAORI NISHIDA/西田香織

男の子に「生理」をどう教える?

うちは娘がふたりですが、性教育について発信する場が増えるに従って、「男の子には性のことをどう教えればいいでしょう?」と聞かれることが増えました。

でもね、逆に私は聞きたい。

なぜ性別で分けようとするの?

仮にわが子が男の子だったとしても、私は娘たちに教えたのと同じように、プライベートゾーンを伝えるところから始めていたはず。プライベートゾーンが大切な場所なのは、女の子でも男の子でもまったく同じ。親側がその認識をまずアップデートしていかなきゃ。

生理のこともそう。

男性には生理がないからといって、生理について知らなくていいなんてことはありえない。だって社会の半分は女性なんですよ? 母親や姉妹、友達、パートナーといった身近な女性たちの体の仕組みについて正しい知識を持つのはすごく大切なこと。だって男だけの世界で生きていくわけじゃないでしょう?

もっと言うと、生まれ持った身体の性が「男の子」だからといって、性自認も「男の子」だとは限らない。ある程度の年齢になってから自分の性別を決めたい、と思うケースだって十分にありえます。

娘たちには生理のことをすでに教えています。これもやっぱりお風呂で、「女の人は大人になると、月に1回、こんな風に血が出てくるんだよ」って。

生理痛がひどいのなら、「お母さん、生理のときはお腹が痛くなったり、イライラしたりしちゃうんだよ」「今、ちょっとしんどいから優しくしてね」とごまかさず、正直に伝えればいいんです。

SHELLYさん
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KAORI NISHIDA/西田香織

性教育は1回じゃ終わらない

プライベートゾーンや生理のことは、1回説明すればOKという話ではありません。子どもの年齢に応じて言葉を変えたり、ちょっとスパイスを加えたりしながら、少しずつ繰り返し伝えていくことが大事。

性教育で本当に大変なのは、最初の1回目だと私は感じています。初回はやっぱり親の心理的なハードルが高い。でも逆にその1回目を乗り越えてしまえば、あとは通り道ができてしまうからラクなんです。日常のなかでちょっとずつ、自然に伝えていけるようになりますよ。

「どう伝えようか迷っているうちに、子どもが思春期になってしまった」と悩んでいる親御さんの話も聞きます。親としてきちんと向き合おうとする、その姿勢がまず素晴らしいと私は思うし、15歳からだって17歳からだって大丈夫。遅くありません。むしろ、その年代の意見を聞けるいいチャンス。

そのためには、「性のことをタブー視しない」姿勢をまず親側が見せることが大事なんじゃないかな。そういったスタンスを見せておくことで、いつか何かがあったときに子どもが「相談してみよう」と思ってくれる可能性も上がるはずですから。

もし性暴力の被害にあったら…

SHELLYさん
SHELLYさん
KAORI NISHIDA/西田香織

子どもへの性暴力は時代や国を問わず、ずっと昔からありました。昔は安全だったけど今は危険になった、というわけじゃない。ネットの普及などによって、例えば小児性犯罪者の存在などが、可視化・共有化されるようになっただけです。

教員による児童や生徒への性暴力事件は度々報道されていますし、フランスのフィギュアスケート選手が10代の頃に元コーチから受けた性的暴行を告発したニュースなどもありましたよね。そのほかのスポーツの現場でも、同様の事件は後を絶ちません。

残念ですが、子どもが日常で接する大人のなかには、子どもに性加害をする大人がいるという現実を理解した上で、自分を守る術を伝えていくのが私たちの役割だと思います。

じゃあ、もしわが子が身近な誰かから「体を触られた」「嫌なことをされた」と言ってきたら? 親として、してはいけないことが1つだけあります。

それは、子どもの言葉を否定することです。

「勘違いじゃない?」「あなたの気のせいでしょ」「あの先生がそんなことするわけない」。そんな言葉で反射的に否定することだけは、絶対にやめてください。

なぜ親側からそんな発言が出てしまうのか? 親自身が恐ろしい現実を受け入れたくない、認めたくないからではないでしょうか。

でもそれは、子どもを生贄に差し出すのと同じことだと私は思います。

子どもの心には、性暴力で受けた傷の上に、さらに「親に信じてもらえなかった」という別の傷ができてしまいます。

万が一、子どもの言葉が嘘だったとしても、まずは話を聞いてあげてください。嘘だった場合も必ず、嘘をつかなければならなかった別の深刻な事情があるはずですから。

性の正しい知識を伝えること、家庭内で性に関することをタブー視しないことが大切なのです。それが子どもの人生を守ることにも繋がります。

SHELLY(シェリー)

1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。4歳と2歳の娘の母。

(取材・文:阿部花恵 編集:毛谷村 真木

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