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2021年01月14日 19時11分 JST | 更新 2021年01月15日 11時13分 JST

プラモデル楽しむ気持ち「おじさんが守る」。子どもたちに向けたホビーカフェの声明が心に響く

「おじさん」は、「実は今高校1年生の息子が小学4年生だった時、同じようなことを言われた経験があるんです」と明かした

こどもプラモコンテストの公式サイトより
「参加作品に対する第三者からの中傷について」

「みなさんの、プラモデルを作ったり好きな色にするのが楽しいその気持ちと、作ったプラモデルをみんなにじまんする場所は、おじさんが必ず守ります」

子ども向けにプラモデルのコンテストを開催する三重県のホビーカフェが公開した声明が、多くの人の心に響いている。

コンテストの参加作品に対してTwitter上で中傷コメントが寄せられたことを受けて公開されたものだという。文章を書いた担当者に、電話で経緯や思いを聞いた。

 

子どもの作品にいわれなき中傷

声明を出したのは、小学生以下が作った作品を写真で審査する「こどもプラモコンテスト21」。三重県伊勢市の「ホビーカフェ ガイア」が主催している。

何が起こったのか。

1月1日から作品の受付を始め、Twitterで応募作品を紹介していたところ、12日に「(使用したツールについて)小学生が使うとは間違っている」「親が作って、こどもの名を借りて投稿している」とコメントが寄せられた。

いずれも根拠がなく、作品や応募者を傷つけるものだった。

そこで担当する男性はそれぞれのコメントに中傷をやめるよう返信、一つのコメントは投稿者によって削除されたという。

その上で1月14日、「参加作品に対する第三者からの中傷について」としてサイトに声明を公開した。

声明では「プラモデルを作っているお子さまたちへ」として、「インターネットの中には、本当のことを見ないで好き勝手に人の悪口をいうおとなが、ほんのちょっとだけいます」と説明。インターネットや大人のことを怖く感じるだろうことについて、「そんな世の中にしてしまったのは、わたしたちおとな全員です。ごめんなさい」と謝っている。

そして、子どもに寄り添うようにこうつづる。

悪口を言うおとなはほんのちょっと。

プラモデルが好きなおとなの中には、悪口を言わない良い人のほうがいっぱいいます。

でも、ほんのちょっとでも、自分が楽しく作ったプラモデルの悪口を言われるのはイヤですよね。

そして、こう決意表明する。

悪口を言うおとなを今すぐいなくするのは、おじさんの力が足りなくてむずかしいです。

そのかわり。

悪口を見つけたら、おじさんがそのおとなに、ちゃんと説明します。

ちゃんと話をして、わかってもらえるようにがんばります。

みなさんの、プラモデルを作ったり好きな色にするのが楽しいその気持ちと、作ったプラモデルをみんなにじまんする場所は、おじさんが必ず守ります。

悪口を言うおとなのことはおじさんにまかせてください。

そしてみなさんは、プラモデルを楽しく作って遊んで、それをみんなにじまんしてください。

この声明文をあるTwitterアカウントが紹介すると話題になり、「私もこういう大人でありたい」「泣きそうになった」などと多くの人の心を動かした。

 

「楽しく作っている気持ちを守りたい」

なぜこうした声明文を出したのか。

声明文を書いた「おじさん」本人である男性は「実は今高校1年生の息子が小学4年生だった時、同じようなことを言われた経験があるんです」と振り返る。

息子がある模型コンテストに出品した際、主催者から「作品を見て、親がやったんじゃないかっていう人がいたんだよ。違うよって言っておいたからね」と打ち明けられたという。

長男は少しショックを受けた様子だった。すぐ元気になり再びプラモデルを楽しんでいたものの、「決して愉快な気持ちにならないですよね。自分の作ったものなのに」と胸の内を思う。

現在、カフェを開いて5年目。初めて主催したコンテストで同じようなコメントが寄せられ、その時の記憶が蘇ったのだという。

「コメントを見た子どもたちや親御さんがどう思うのか想像できます。本人だけじゃなく、目にした人たちも『こんなことを言われるならやらない方がいいね』『インターネットにはあげない方がいいね』と思ってしまうかもしれない。これほど残念なことはありません」

「ごくごく一部の人しか言っていないとしてもこうした発言は目立つし、特にお子さんたちは傷付くでしょう。自分が作りたいと思ったものを楽しく作っている気持ちを守りたい。声明にも書きましたが、その気持ちが強かったです」

長男がその後もプラモデルを好きでいられたのは、「違うよって言っておいたからね」という主催者の力強い言葉があったからかもしれない。そうした思いもあり、自分も発信しようと決めた。

 

SNSでの中傷、2020年には大きな問題に

声明では子どもたちや保護者に加え、一般の第三者に対しても呼びかけている。

中傷コメントをやめるよう指摘する意見が複数ネット上で上がっていることについて「気持ちは大変うれしい」としつつも「説明や反論につきましては、どうか当コンテスト専用Twitterアカウントにお任せいただきたく存じます」とした。

この呼びかけについては「中傷した人に対する私刑のようになってしまうのはよくないと考えました。初めは優しい言葉で宥めていても、事態が発展すると、批判や中傷になってしまうかもしれない。そうならないためには、私が矢面に立った方がいいと思ったのです」。

2020年には、SNSにおける中傷が大きな問題になった。

フジテレビ系のリアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが、ネット上で誹謗中傷を受けた後に亡くなった問題は、社会に大きな衝撃を与えた。

こうした問題が呼びかけの背景にあったのか尋ねると、「実は我が家は全員、木村花さんが所属していたプロレス団体のファンなんです。特に、小学2年生の娘は花さんが好きでした」と打ち明ける。声明を書いたときに特別意識したわけではないが、「とてもショックだったので、SNSでの中傷の怖さというのは印象に残っていました」。

Twitterで大きな話題になったことに関しては「思った以上の人がきちんと読んでくださっていて嬉しいし、感謝です。捨てたもんじゃないなと思いました」と驚く。一時サイトがつながりにくくなるほどの反響だったという。

「プラモデルの良さは、自分がこうしたい、と思ったものを実物で形にできること。プラモデルというパーツを、自分の色に染められること。今は道具もよくなっていて、小学生でも大人と同レベルのことをやってる子もいます」

公式サイトやTwitterでは、集まった作品を公開。力作が揃っている。

コンテストでは1月31日まで作品を募っている。