竹のトイレットペーパーでサスティナブル。41歳母の私が起業する訳

私には4歳と7歳の息子がいる。この子たちが大きくなる時に地球で暮らせるのだろうか?

私が米国ポートランドに家族で移住したのは2019年のことだ。それから約1年も経たずしてCOVID-19が起こり日本は遠くなった。2020年はさらにBlack Lives Matterのプロテストが起こり、米国初の女性副大統領が誕生することになった。COVID-19のため極力STAY HOMEを心がけ、人と会う機会も少なく、身体的行動はかなり減った2020年。ただ心と思考は激しく揺さぶられた年でもあった。

そして2021年になり私はサステナブル、環境をテーマに仲間と会社をつくった。そして今日、トイレットペーパーの定期便サービスを開始した。

私が、なぜこの領域で事業をやろうと思ったか。そして、なぜいきなりトイレットペーパーなのか?そんなことを書いておきたい。

コロナと山火事を経験して気づいた、次にやりたいこと

2020年初夏、それまでの仕事を離れ、人生の夏休みに入った。その頃気になっていたキーワードが「消費と生産の境界線」だった。

COVID-19の発生で、国境など物理的分断は生まれたが、どこにいても地球という大地で連なり、見えない誰かと繋がっていることを知った。続いて「Black Lives Matter」のプロテストをきっかけに企業は思想や姿勢をより強く表明するようになり、意思のある消費をする生活者が増えていくのを感じたのもその頃だ。かたやポートランドはリユースが盛んで、豊かな自然が都市のそばにあり、生産の現場(農地など)が近いため、より生産に近い生活を好むようになった自分がいた。

テラケイコ

そして2020年の秋、ポートランドの近郊で山火事が起こった。昨年のオーストラリアの山火事、アマゾンの山火事、ここ近年世界中で山が燃え、今年は西海岸のカリフォルニアは夏の間ずっと燃えていた。でも恥ずかしながら、その言葉どおり「対岸の火事」であったと思う。

ポートランドは、山火事により10日間ほど世界でいちばん空気の悪い都市になった。そして、家の中に市民みんなを閉じ込めた。家の中でも煙たくて、息苦しく頭痛がした。だがこれはたった10日間の話だ。

世界中の山火事、コロナによって海や湖が綺麗になったこと、そしてこの実体験は、もう地球の環境問題には、時間がないことを気づかせてくれるに十分だった。私には4歳と7歳の息子がいる。この子たちが大きくなる時に地球で暮らせるのだろうか?

そう思った時、環境と持続可能な社会づくりに向き合って、そのための暮らしと消費のあり方を提示したい、と思ったのだった。

“還す”を未来のあたりまえに

新しく仲間とつくった会社、おかえり株式会社のビジョンは「“還す”を未来のあたりまえに」

“還す”を未来のあたりまえに。

人と人との距離が、国と国との距離が、遠ざかってしまった2020年。
移動はできなくても、会えなくても、
社会はひとつながりであることと、見えない誰かとつながっていること、
そして足もとにある暮らしの大切さに気づきました。

暮らしの中での消費することは、社会と地球を消費することに、
暮らしをつくることは、社会をつくることにつながっています。
今この瞬間は、未来の日常へとつながっています。

一人ひとりが暮らしの中で循環をつくり出すことで
未来の子どもたちからの借り物を、還していく。
私たちは、プロダクトを通じて新しい日常と循環をつくっていきます。

20代の頃の私はなんでも簡単に手に入って、繋がらなくとも生きていける東京が大好きだった。便利さと効率を好んでたくさん消費した。そうして私も加担したのが今の社会と地球の状況だ。どこかの遠い誰か(距離、時間いろいろあるが)に押し付けるのではなく、自分たちが借りたものは自分たちの手で還す責任がある。それもできるだけ早く。

数カ月前に国も炭素削減目標を発表した。そして大企業も炭素削減に取り組んでいる。が、ひとりひとり生活者が意識をして変わっていかなければきっと間に合わない。

暮らしの環境が手伝ったこともあって、私の家からはこの1年半でプラスチックが大量に消えた。肉を食べる機会も減った。あんなにペットボトルを消費していた私ですら変われたのだから、みんなの暮らしも変わるはずだ!大丈夫!というおかしな自負もある。ひとり一人の暮らしから、そして地域ぐらいのレベルから。

トイレットペーパーから始める理由

いま家でどんなトイレットペーパーを使ってる?と聞かれた時、答えられる人はどれぐらいいるだろうか。歯磨きは?洗剤は?と聞かれたら、意外とお気に入りのブランドがあったり、もちろん素材も想像つくだろう。

一方で、コロナでみんながいちばん最初に「なくなったら困る!!!」と買いに走ったのもトイレットペーパーだったりする。

もっとも身近で、なくては困る。なのにいちばんぼんやりと消費されている日用品。だから、最初のプロダクトにトイレットペーパーを選ぶことにした。毎日手にとるたびに、環境のことをちょっと思い出す。そうしたら、他の日用品も気になるようになるかもしれない。そんなにきっかけになれば、と考えて生まれたのが、バンブーロールだ

カナダのNRDCという機関の調べによると、世界におけるトイレットペーパーのひとりあたり消費量の多い国の第4位に日本は入る。温水洗浄便座がこれだけ普及しているというのに(一般世帯の8割らしい)。聞いた話によると、インドのある地域ではお客様以外にトイレットペーパーは使わず洗っているらしい。

今トイレットペーパーを使用している国は先進国が中心で、地球の総人口の3割程度だとも言われる。最近は途上国でも使われるようになって、確実に全体使用量は増えている。

もちろん、ミスリードをしたくないから書いておくが、日本の家庭用紙メーカーはとても素晴らしくて、持続可能な商品をつくっている会社が多くある。日本すごいぞ!と誇らしく思ったぐらいに。

ただ消費者である私たちは、やわかいこと、白いことを優先しがちで、企業努力に反してそういうった基準でペーパーを選んでいないのが現状だとも思う。ダブルかシングルか。あとは手触りぐらいが選択の基準だろう。再生紙によるトイレットペーパーはなかなか選ばれていない。そして、トイレットペーパーはリサイクルできない。

そんな時「竹」と出会った。我が家の庭にもある。オーナーが手配した庭師が毎月竹だけを手入れしにくるのだ。なぜならよく伸びて近所迷惑だからだろう。ギネス記録もあるくらいに早く成長する植物だ。

テラケイコ

さらに竹はCO2をよく吸うらしい。1年とかでもう大人かっていうぐらいの生育をするのだから、それだけよく吸う。そして切っても勝手に生えてくる。放置竹林が日本全国で話題になり、竹害とすら言われるほどに、勝手に生えて、勝手に伸びる(水も少量、農薬もいらない)。いっぱい切って、いっぱい使って、また生えてくることがどうやら大気中のCO2の固定にも良いようだとわかった。

そこで私たちが届けることにしたのは竹100%のトイレットペーパーだ。それを希望の頻度に応じて、定期的におうちまで届ける定期便(サブスクリプション)サービスだ。日本ではおそらく初めてだと思う。でもアメリカを初め、海外では、実は竹のトイレットペーパーはマーケットにたくさん出ていて評価を得ていて、サブスクリプションのサービスもある。

私はポートランドで偶然に(今住む家の前の居住者が注文していて届いたのだった)竹のトイレットペーパーを使い始めた。実際に使った生活者である私と家族が、竹って言っても全然硬くないし十分だ、と思った。そして日本にもあったらいいのに!と思ったこともこのサービスを始めるきっかけとなった。自分がいいと思えないものは届けられないから。

そして、今日、先行予約という形で発売を開始した。

テラケイコ

トイレットペーパーから、暮らしと消費に変化を。

この数カ月、私の仕事部屋はトイレットペーパーだらけだ。子どもたちにはお母さん、トイレットペーパーやさんするの?と言われている。取り寄せたサンプルとアメリカでできるだけたくさんの竹の商品を見た。商品の質と、生産現場の体制(環境への配慮)にもこだわった。

私もまだまだだ。肉を食べる日もあれば、家の中にプラスチックの商品もある。ゴミも努力してもなかなか減らない。それに、今回の提案は小さなトイレのひとつの日用品だ。時間がないことを考えると、、、そんな事からやっていてもいいの?という自分の中の声もあった。でも毎日みんなには忙しい日常が流れている。コロナがまだ落ち着かない。いきなり何かを辞めたり、失う提案は難しいと考えた。だったら日常の延長線上にある小さな変化が大きな変革を起こし得るところで、まずは声を発してみることにした。

トイレットペーパーの次の提案へと歩みを進める準備もし始めている。できるだけ早いスピードで、皆さんと一緒に暮らしを変えて行きたい。

1ロール(だいたい1週間)100円で、サステナブルや環境のことをトイレの中から考えるきっかけだと思ってくれたら、サイトを覗いてみて欲しい。

トイレットペーパーから、暮らしと消費に変化が起こりますように。

(2021年01月18日 松原佳代さんのnote掲載記事「41歳母の私がサステナブル スタートアップを起業し、トイレットペーパーから始める理由」より転載。)

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