リーバイス、古着の買い取り販売を開始。「循環型ファッション」としての古着を前面に掲げる

「新品を買うよりも、およそ80%の二酸化炭素と700グラムの廃棄物を減らすことができます」
サステナブル・ブランド

古着市場は世界的に拡大しており、その規模は2024年に640億米ドル(6兆7000億円)に達すると予測されている。古着に抱く印象は、一昔前とは異なり、衣服を買う際の、当たり前の選択肢となり、持続可能な消費の方法としても捉えられるようになってきている。そうした潮流を背景に、リーバイスや大手古着ショッピングサイト「スレッドアップ」が、循環型のファッションや持続可能な消費としての古着販売に力を入れ始めている。(翻訳=梅原洋陽)

世界の古着市場は約2兆9000億円から6兆7000億円に
世界の古着市場は約2兆9000億円から6兆7000億円に
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デニムブランド「リーバイ・ストラウス」はこのほど、ジーンズやジャケットの買い取り販売を行う「リーバイス・セカンドハンド(Levi’s® SecondHand)」を立ち上げた。循環型のファッションや持続可能な消費としての古着を前面に掲げ、販売するだけでなく、持っている服を長持ちさせる方法や古着をリメイクする方法なども伝える。

世界的デニムブランドとして初めてとなる買い取り制度「リーバイス・セカンドハンド」は、リーバイ・ストラウスのファッションを持続可能に、そして循環型なものにする大きな取り組みの一つだ。顧客は「Levi’s SECONDHAND」にアクセスすると中古のジーンズやジャケットを購入することができ、リーバイスの店舗に着古したジーンズやジャケットを持ち込むと、次回の購入時に使えるギフトカードが手に入る。再販できるデニムであれば15―25ドル (約1500−2600円) 分、ヴィンテージデニムであれば30―35ドル(約3100−3600円)分、どんなに着古されていたとしても5ドル(約500円)分はもらえる。

各店舗に持ち込まれた古着はすべて、割引価格でオンラインショップで買える。これにより、リーバイス商品をより幅広い消費者に届けられることになる。リーバイスは、セカンドハンドのデニムを世の中に浸透させ、他のデニムブランドにも同様の取り組みを促したいと考えだ。

「衣服を再利用したり、修繕したりすれば、新たなジーンズを作るためのエネルギーを最小限に抑え、水や染料を使わずに済ませられます。セカンドハンドを通して、リーバイスのジーンズを買うことで、新品を買うよりも、およそ80%の二酸化炭素と700グラムの廃棄物を減らすことができます」(マーケティング部門主任 ジェニファー・セイ氏)

同社は、セカンドハンドキャンペーンのモデルとして、地球環境問題への取り組みで著名な活動家を採用した。

(左から)ジー・バスティーダ:18歳のメキシコ・チリの気候活動家。「アメリカのグレタ・トゥーンベリ」と呼ばれている。ドミニク・ドレークフォールド:環境教育家、コミュニティ・アドボケーター、「Sustainable Brooklyn」の共同創設者、『Melanin & Sustainable Style (MelaninASS)』の創設者であり編集長。シューテスカット・マルティネス:ヒップホップアーティスト、「Earth Guardians」の若きディレクター。ホイットニー・R・マクギアー:弁護士、ビジネスコンサルタント。「Sustainable Brooklyn」の共同創設者。
(左から)ジー・バスティーダ:18歳のメキシコ・チリの気候活動家。「アメリカのグレタ・トゥーンベリ」と呼ばれている。ドミニク・ドレークフォールド:環境教育家、コミュニティ・アドボケーター、「Sustainable Brooklyn」の共同創設者、『Melanin & Sustainable Style (MelaninASS)』の創設者であり編集長。シューテスカット・マルティネス:ヒップホップアーティスト、「Earth Guardians」の若きディレクター。ホイットニー・R・マクギアー:弁護士、ビジネスコンサルタント。「Sustainable Brooklyn」の共同創設者。
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リーバイ・ストラウスによると、新たな角度から、消費者の目を古着に向けさせることが不可欠という。ファッション業界は、依然として毎年とてつもない量の衣服を生産し続けているからだ。リサイクル率もいまだに低く、世界の繊維廃棄物のうち、リサイクルされて新たな衣服になるのはわずか1%だ。

リーバイ・ストラウスの商品は、伝統的に長持ちするように作られ、長年、洗濯回数を減らすことで商品を長持ちさせられることを顧客に伝えてきた。同社は愛用したリーバイスのジーンズやジャケットに第2の人生を与えるだけでなく、7月に発表したコレクション“Wellthread Recycled Denim collection”でも、真に循環型のファッションにも挑戦している。同社は、再販の技術を備える物流管理の会社トローブ(ヤードル)と提携し、クリーニング、在庫処理、フルフィルメントなどのバックエンドの対応を行なっている。

古着オンラインショップ「スレッドアップ」、持続可能性を掲げる

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米国の大手古着オンラインショップ「スレッドアップ(ThredUp)」は今月8日、古着を躊躇なく着る新たな世代が台頭していることを受け、リブランディングを行ったと発表した。古着を通して、持続可能な社会の実現に向けて取り組み、使い捨てのファッションではなく、より良いファッションの未来を実現することを目指すという。また同社は21日、新規株式公開(IPO)の準備を進めていることも発表した。

ThredUp社長のアンソニー・マリオ氏は「ThredUpを設立した当初の目標は、古着に懐疑的な人たちに理解してもらうことでした。中古の衣服への先入観を刷新し、信頼を築き上げることを目指した」と振り返る。

「今では、説得する必要があまりなくなってきました。懐疑的だった人もファンや支持者になってくれています。古着を着ることは、今や恥ずかしいことではなく誇れることになっています。そして、私たちは今、正真正銘の、卑下することのない古着ブランドをつくる新たな機会を手にしたのです」

hredUPは2009年、「古着」を現代的にし、偏見を取り除き、当たり前の選択肢にするという目標を持って設立された。当時はまだ古着が軽視されていた時代だった。同社は、手間とリスクを取り除いた、現代的な古着の転売を通し、中古品に対して懐疑的な世代をファンへと変えた。売り手は服を袋に詰めてThredUpまで直接送り、買い手はカジュアルブランドから高級ブランドまで3万5000点以上の大幅に割引きされたブランド品の中から、品質チェック済みの商品を見て回ることができる。ThredUpによると、創業から10年後の今、古着に対する偏見はほとんどなくなり、数百万人もの消費者たちがこれまでになく古着を支持するようになっているという。

中古市場は推定280億ドル(約2兆9000億円)規模(2019年時点)に達し、急速に成長している。同社によると、消費者の7割が「中古品を買うことに対して抵抗感がない」という。およそ3分の2の消費者は「古着を着ることに対して偏見はない」と答え、そのほとんどが誇りを持って古着を購入している。

とりわけ、「根本的により良い未来」をつくる企業に注目する傾向があるZ世代(2019年で世界的に最大の消費者層)において顕著な現象だ。Z世代は、中古品を持続可能な価値観を世界に広めるための手段の一つとして捉えている。

ThredUpは、意識的な買い物のスタイル、財布や地球にとって賢い選択をしたときに感じられる誇りを新たなブランドの特色として押し出す。ブランドの新しいキャッチコピーは「Thrift Loudly」(堂々と、古着を着よう)。意識的な消費が加速している中、同社のブランド戦略の根幹にあるのは「私たちが着る服には変化をもたらす力がある」という信念だ。古着に新たな命を与え、衣服を埋立地に送らずに使い続けるというThredUpの使命は、循環型経済を浸透させる方法としても頷けるものだ。

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