BREAK THE SILENCE
2021年03月02日 09時46分 JST | 更新 2021年03月02日 19時24分 JST

性暴力に“泣き寝入り”せざるをえない現状、SHELLYさんが怒り「レイプされた方が悪い、みたいなことになってしまう」

「なんで被害者たちを守る法律がすぐできないのか、本当に理解できないです」。現在の刑法性犯罪の問題点について話し合うイベントが開かれました。

オンライントークライブの様子
(左上から時計回りで)荻上チキさん、司会の佐々木真奈美さん、SHELLYさん、Springの山本潤さん、寺町東子さん

日本の性犯罪に関する刑法は、被害の実態と合っていない。いま、刑法改正を求める声が高まっている。

性暴力の被害者や支援者らでつくる一般社団法人「Spring」は、2月23日にトークライブを開催。タレントのSHELLYさんや評論家の荻上チキさんが登壇し、現行の刑法性犯罪の問題点について話し合った。

 

被害者が“泣き寝入り”せざるをえない現状、「ただただ怒っています」

タレントとして活動をしながら、性教育の大切さなどの発信を続けるSHELLYさん。

冒頭の挨拶では、「勉強したとか色々調べて活動しているとかではない」と前置きをした上で、「ただただ怒っています。なので、今日はその怒りを皆さんとシェアしたいと思っています」と力を込めた。

  ◇

イベントでは、現状の法律が「壁」となり、加害者を罪に問えなかった事例が紹介された。

(※以下より、性暴力の表現が含まれます。読む際は、フラッシュバックなどに注意をしてください) 

そのうちの一つが、未成年女性が男性から酒を飲まされ、性被害にあったというケースだ。

女性は何杯も強いお酒を飲まされ、気がついた時には男性の自宅にいたという。無理やり性交をさせられ、男性は動画を撮影。被害者は「撮らないでください」などと泣き叫んだものの、顔を隠すことが精一杯で抵抗できる状況ではなかった。「殺すぞ」などとも脅されたという。

その男性は「不起訴処分」となり、刑事裁判にかけられなかった。

なぜ不起訴になったのか。

弁護士の寺町東子さんによると、このケースでは、性犯罪が成立する要件である「暴行・脅迫」や「抗拒不能」のいずれも該当しなかったと判断され、不起訴になったと考えられるという。

現行法では、強制性交等罪は「暴行・脅迫」があったこと、準強制性交等罪は「心神喪失」または「抗拒不能」に乗じて性交をしたことなどを条件としている。そして、その暴行などの程度は、「被害者の反抗を著しく困難にする程度」だと認定されなければならない。

反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫はなく、「やめてください」と被害者が言ったことなどで、「抗拒不能」の状態ではなかった、と検察官が判断した。そのため、不起訴になったと考えられるという。

 

「なぜ被害者を守る法律がすぐできないのか、理解できない」

性犯罪被害者は、ショックで記憶が途切れ途切れになったり、被害にあった瞬間に体がフリーズ状態になることがある。

SHELLYさんは、こうした被害者の心理を考慮していないとして、「レイプされた方が悪い、みたいなことになってしまう現状の法律が全く納得いかない」と憤りを語る。

「今回のコロナ禍で、(政府は)ルールを守らない飲食店に罰金を下すような法律を作ろうとした(※)。そっちはすぐ動くのに、なんで被害者たちを守る法律がすぐできないのか、本当に理解できないです」

 (※編集部注:2月に新型コロナ対策の特措法が改正され、飲食店などが時短営業命令などに従わない場合、30万円以下の過料を科せられるようになった。)

 

どんな法改正が必要なのか

この「暴行・脅迫」や「抗拒不能」の要件は、加害者を罪に問う上で高いハードルとなっている。

寺町さんは、検察官や警察官、裁判官によって法解釈が異なり、「ばらつき」が多くなっていると指摘。

「現場の警察官や検察官でばらつきが出ていて(被害を)受け付けてもらえない、門前払いされているケースがたくさんある。そこを明確にしていくということが今回の改正の一つのポイントだと思います」と述べた。

Springは、現在法務省で行われている刑法改正の検討会で、「暴行脅迫」要件を撤廃するよう訴えている。

その上で、「威迫」や「不意打ち」、「監禁」など複数の要件を入れることに加えて、同意のない性交を罪に問えるように「意思に反する性的行為」を処罰の対象とするよう求めている。

 

性的同意年齢は13歳

イベントでは、現行法が「壁」となって有罪とならなかった2007年の事件についても話し合った。

20代男性が、14歳の中学生に対し、知り合ってから2日目に同意を得ず性交し強姦罪(現行法では強制性交等罪)に問われた事件。中学生が性交に同意していなかったことは裁判でも認められたが、「被害者の反抗を著しく困難にする程度」の暴行があったとは認定されず、男性は無罪を言い渡された。

「#WithYouで変えよう刑法性犯罪​ Spring Youtube トークライブ」より

 日本は、「13歳」を性的同意年齢としている。

これ以上の年齢の被害者には成人と同じく「暴行・脅迫」要件が適用され、被害者が強く抵抗したことが立証できなければ加害者を罪に問うことができない。

この同意年齢とは、性行為をするか否かを自ら判断できるとみなされる年齢の下限のこと。海外と比べると低い上に、文科省が定める日本の小中学校の学習指導要領では、性交について「教えない」ことになっている。

Miyuki Yamamoto / HuffPost Japan
世界各国の性交同意年齢(性的同意年齢)

SHELLYさんはそういった問題を挙げ、同意年齢が低すぎると指摘。

「あなたが13歳だった時を思い出してください。そんなに大きな判断できましたか?」と投げかけた。

「私は(同意年齢の引き上げは)16歳じゃなくて17歳でいいんじゃないかと思うくらいなんですけど、大人たちが『お酒の場に行っていた』とか、理由をつけて『その子もわかっていたんじゃないの』と持っていこうとすることがすごく多い。

でも、14歳は14歳。16歳は16歳までの生きてきた知識しかない。親からもらった、または自分のすぐ近くにいる友達、先生からもらった知識しか持っていない子に、20代、30代の大人が持っている知識を比べるのはそもそもおかしい」

 

どうしたら社会の意識を変えられるか?

イベントの登壇者が強調していたのは、法改正だけではなく、性暴力に関する「社会の意識」も変わっていく必要がある、ということだ。

性犯罪の問題をめぐっては、被害を訴えるのに高いハードルが課せられている上に、被害者が「落ち度があったのではないか」などと二次被害(セカンドレイプ)を受けてしまうことすらある。

荻上チキさんは、「実際の被害に遭われた方の感覚と、法制度や刑事司法の中で認定される基準の間にギャップがある」と指摘。さらに、被害者心理と「社会通念」の間にもギャップがあると話す。 

「社会的な啓発はとても重要。多くの法律は社会通念に影響を受ける。法律の文章が変わっていなかったとしても、『これは性暴力だ』という認定基準が世の中の常識や意見とともに変わってくれば、さまざまな違法認定がされやすくなるというところもある。

でも、今はさまざまな不合理な判例が出続けている。これは社会通念がまだ大きく揺らいでいないというか、固定化されてしまっているということ。司法に届いていないという二重の問題がある。

色々なところで啓発の改善と、社会通念そのものの見直しが必要になってくるんだろうと思います」(荻上さん) 

Spring代表理事の山本潤さんは、「今の社会通念と、これから生きる子供たち、若い世代にどういう社会を私たちは作ってあげられるのか。この世代に積み残された昔の古い価値観を残してはいけないと思う」と強調した。

「そのためにこそ、今変えていく必要があると思っていますし、これからもたくさんの人の話を聞きながら、どんな規定や価値観のアップデートが必要なのかという認識を共有していきたいと思います」

 

私たちはどんなアクションをとれる?

現在、性犯罪に関する刑法について見直す法務省の検討会は山場を迎えている。

この検討会では現在、次のステップとなる法制審議会での論点を整理中だ。検討会でさらなる改正が必要だと判断された論点が、来年度以降の法制審議会に取り上げられることになる。

寺町弁護士は、「前回の改正は110年ぶりだった。このチャンスをみすみす逃さないように、みんなで今声を集めていきたい」と呼びかけた。

それまでに、私たちはどんなアクションをとれるのか。

Springは、3月7日正午からTwitterデモを実施する。次回の検討会(第13回会議)は、3月8日の国際女性デーに開かれる予定で、法改正を求める声を可視化するために「#同意のない性交を性犯罪に」というハッシュタグを投稿するよう呼びかけた。

Springを含む12団体からなる「刑法改正市民プロジェクト」は、同意のない性行為を処罰する「不同意性交等罪」の創設を求める署名を呼びかけた。3月1日時点で、約6万8000筆の賛同が寄せられており、集まった署名は法務省に提出される。