「ずっと好きでいられる服か自問してみる」 大量生産・消費サイクルから"卒業"する服選びのコツ

「買い方」「服との別れ方」「ブランドとの向き合い方」。エシカルにファッションを楽しむための3つのポイントを専門家の青沼愛さんに聞いた。
青沼愛さん
青沼愛さん
青沼愛さん提供

ファッション業界に対し、厳しい視線が向けられている。シーズンごとの流行にあわせ、大量につくられ、消費され、廃棄される衣服。世界の排水の20%と二酸化炭素排出量の10%をファッション業界が生み出しているとも言われる。

複雑なサプライチェーンの中で、劣悪な労働環境で働く人もいる。1997年には、ナイキの東南アジアの工場での劣悪な労働環境が社会問題化。2013年にはバングラデシュで、先進国向けの縫製工場が入っていたビルが倒壊し、1100人を超す死者が出る大惨事が起きた。

「一人一人のファッションの楽しみ方が変われば、こうした状況も変わります」

そう指摘するのが、鎌倉サステナビリティ研究所代表理事の青沼愛さんだ。青沼さんは、生産工場に足を運び、労働環境に問題ないかを監査したり、改善のアドバイスをしたりしている。人や社会・環境に配慮した消費行動は近年、エシカル(倫理的な)消費と呼ばれる。青沼さんに、エシカルにファッションを楽しむための3つのポイントを教えてもらった。

①選ぶコツ 「Rethink」「ストーリー重視」

「まず自分がずっと好きでいられる、長く一緒にいたいと思える服を買うことです」

例えば「今年はゆったりサイズが流行」と聞き、すぐにとびつく人もいるだろう。でも、それは自分の好みに合っているだろうか? もしかしたら「なんとなく流行っているから」と買っていないか。それは「広告によって、買わされている」とも言える。毎シーズン、ファッション業界によってつくられた流行を追い、服を買い、捨てる。そんな構造の中に、自らの服選びも組み込まれていないだろうか。

「流行自体は悪いこととは思いません。ファッションは楽しむものでもあります。でも、流行を無条件に採り入れるのではなく、自分が本当にいいと思うのか、ほしいのか、購入前に立ち止まって考えてほしい。自分が好きな服であれば、流行に振り回されず、楽しく長く着ることができます」

「エシカルな消費を考えるとき、リシンク(Rethink)によって、買う量をリデュース(Reduce)することが、まずは大切です」

次に青沼さんが提案するのは、「ストーリーが見えるものを買う」ということだ。

「開示情報が多いブランドを買う、と言い換えてもよいでしょう。まず、ネットなどで検索して下さい。素材や製造工程は環境や働く人に配慮されているのか。服がつくられる過程やサステナビリティへのストーリーが見えるブランドを選ぶとよいと思います」

「それがサステナビリティに取り組む企業への応援になります。自分自身の気持ちの面でも、ファッション業界が抱える問題に自分が加担してしまったのではないかという『不安』を和らげることにつながります」

「原料づくりから始まる服作りは環境負荷が高く、サプライチェーンも複雑ですので、サステナビリティについて完璧に配慮されたブランドはありません。だからこそ、どういったストーリーを大切にしたいのか、自分で調べ、選ぶことが大切になってきます」

バングラデシュの裁縫工場で働く女性たち(2011年)
バングラデシュの裁縫工場で働く女性たち(2011年)
青沼愛さん提供

②着なくなった服には、第二の人生を

次に、青沼さんが提案するのは、着なくなった服との別れ方だ。

「まず考えるべきことは、リユース(Reuse)です。自分の好きな服だったら、思い入れもあるので、やっぱり捨てるのはもったいないので、誰かに着てほしいですよね」

「知人にあげる、コミュニティで交換する、欲しい人に売る、寄付する。いろんな方法があります。ただ、寄付には注意が必要です。海外に送られて、そこで無料で配布されたり、安価に販売されたりすることで、現地の縫製産業に悪影響を与える場合もあります。ですから、寄付先が見えるところに託すのが大切です。例えば、ユニクロは、不要になった服を回収して、国連と協働し、難民に届けています」

「穴の空いた靴下やボロボロの服であっても捨てるのは、待って下さい。回収して、服の原料や燃料としてリサイクル(Recycle)できます。服の回収プロジェクト「BRING」のミツバチの回収ボックスを、無印良品やsnow peakなどの店舗で見たことがある人もいるのではないでしょうか」

「BRING」のミツバチの回収ボックス
「BRING」のミツバチの回収ボックス
日本環境設計提供

③「期待」をブランドに伝え、コミュニケーションを

モデルのトラウデン直美さんが、政府主催のカーボンニュートラルフォーラムで「店員に『環境に配慮した商品ですか』と尋ねることで、店側の意識も変わっていく」と提案したところ、ネット上で、「店員の負担を増やすな」などと批判された。

確かに、お店やコールセンターなどで消費者対応をする人たちの労働環境には課題がある。一方、青沼さんは私たち一人一人がブランドに要望を伝えることは「大切なこと」と考える。

「顧客の要望を伝えることは、企業を責めることではありません。双方のコミュニケーションによって、よりよい商品・サービスが生まれますから」

「もちろん店員さんの忙しさの状況や伝え方を考慮する必要はあります。ですが、『環境に配慮した服や、サステナブルな素材を使っている服を探しています』と伝えることは、企業にもプラスになると思います。サステナビリティが購買の判断基準になっていることを知ることができますので」

企業は、顧客の声を求めている。そして要望の伝え方は一つではない。

「お客様ボックスに手紙を投稿するのでもよいです。必ず読んでいます。ネットで『ブランド名 サステナビリティ」と検索することからも始められます。企業は自分の会社がどの言葉とともに検索されているのか、気にしています」

「あと、少し話はずれますが、就活の面接において、会社のサステナビリティへの取り組みについて尋ねることも有効です。採用担当者はサステナビリティの関心度の高まりを感じるし、そうした意識を持つ人材がこれからの企業に必要です」

「いずれにせよ、顧客として『サステナブルな商品を期待している』と伝えることが、ファッション業界を変える力になると考えます」

ハフポスト日本版がお届けするネット配信番組「ハフライブ」。 2021年11月の配信では、“考える消費”をキーワードに「SDGs時代、買い物が世界を変える!」を配信しました。「消費のパワー」に改めて注目し、一人一人が買い物を通してできることは?を話し合いました。

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