アカデミー賞史上初、女性2人が監督賞ノミネート。「男性優位」の部門で、歴史をつくる

女性監督を冷遇してきたアカデミー賞に訪れた、ようやくの変化。これまで監督賞にノミネートされた女性は5人だけ、受賞したのはたった1人だった。
クロエ・ジャオ監督(左)、エメラルド・フェネル監督(右)
クロエ・ジャオ監督(左)、エメラルド・フェネル監督(右)
Getty Images

日本時間3月15日の夜にノミネートが発表された第93回アカデミー賞

監督賞で、アカデミー賞史上初めて複数の女性が同時にノミネートされた。

ノミネートされたのは、『ノマドランド』(3月26日日本公開)のクロエ・ジャオ監督と、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2021年夏日本公開予定)のエメラルド・フェネル監督。この2作品は、作品賞にもノミネートされている。

女性が監督賞を受賞したのは、2009年の『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督のみ。これまでノミネートされた女性は、『セブン・ビューティーズ』のリナ・ウェルトミューラー、『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオン、『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラ、『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ。ジャオ監督とフェネル監督をあわせても、93年の歴史の中で、たった7人しかノミネートされてこなかった。

アジア系女性初の快挙も

また、中国で生まれ、現在はアメリカで活動するクロエ・ジャオ監督は、非白人の女性、そしてアジア系の女性としても、初の監督賞ノミネートとなった。

『ノマドランド』はオスカーのノミネート発表で存在感を見せており計6部門でノミネート。ジャオ監督は、監督賞に加え、作品賞、脚本賞、編集賞でも名を連ねている。

『ノマドランド』
『ノマドランド』
(C) 2020 20th Century Studios. All rights reserved.

また、フェネル監督は、監督賞、作品賞、脚本賞でノミネートされ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』は計5部門で受賞候補になった。

アカデミー賞は長年、女性が監督を務めた評価の高い作品が豊富にあるにもかかわらず、女性監督の作品をないがしろにしてきた。主催団体である映画芸術科学アカデミーには多くの批判が寄せられてきた。

2020年、俳優でクリエイターのイッサ・レイは、監督賞にノミネートされたのが全員男性であったことを受け、「おめでとうございます、男性のみなさん」と、あえて候補者たちの性別を強調してコメントし、話題になった。

黒人女性、ノミネート逃す

レジーナ・キング
レジーナ・キング
John Shearer via Getty Images

ジャオ監督とフェネル監督の2人同時ノミネートで、アカデミー賞は例年にない変化を見せたが、一方で注目すべきことは、有力視されていた黒人女性の監督レジーナ・キング(『あの夜、マイアミで』)がノミネートを逃したことだ。

キング監督がノミネートされれば、アカデミー賞の歴史で初めて黒人女性が監督賞の候補になるはずだった。

黒人の映画製作者による力強い映画が豊富に作られ、またその多くがノミネートを獲得している。アカデミー賞が今回、より多くの黒人監督を受賞候補としなかったことは、ダイバーシティ&インクルージョンという面で映画芸術科学アカデミーが批判を受けていることを踏まえると、見逃してはならない点だ。

ジャオ監督とフェネル監督のほかに、監督賞にノミネートされたのは、『Another Round』のトマス・ヴィンターベアと、『Mank/マンク』のデヴィッド・フィンチャー、そして韓国系アメリカ人の『ミナリ』のリー・アイザック・チョンの計5人。アカデミー賞の授賞式は日本時間4月26日に開催される

この記事はハフポストUS版を翻訳・編集しています。

【訂正 2021/3/17 12:40】
クロエ・ジャオ監督についての表記を訂正しました。

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